Jailbreak

新しい世界の切り取り方

追悼Pat Torpey Mr.Bigの縁の下の力持ち

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きっかけは、何となく開いたInstagramだった。元MR.BIGのRichie KotzenのInstagramだった。

 

ぱっと見であんまり綺麗じゃない画像をアップロードして、Pat Torpeyのことを書いているじゃないか。何しとんねん、Richieと思って、それに付けられた文章を読んでみた。

so saddened to learn of the passing of my friend and former band mate Pat Torpey. We spent years touring the world, making music, family holiday gatherings, and even remodeled a house together. Pat’s sense of humor, wit, and smile lit up any room the moment he walked in. I am grateful and thankful to have had you as an incredibly important friend and influence in my life. You will be missed beyond words. With love and tears... Rest In Peace my friend.

ざっくり訳すと”友達で、以前一緒にバンドメンバーだったパット・トーピーの悲しい知らせだ。俺たちは何年も世界ツアーをし、音楽を作り、休みの日には家族一緒に過ごす仲だったし、家が変わっても一緒だった。パットのユーモアのセンスや、頭の良さで彼がいるところには笑顔が絶えなかった。俺は自分の人生に影響を与え、とても大事な人に出会えて嬉しく思っているし、感謝の念でいっぱいだ。こんな気持ちは言葉にならないよ。愛と涙と共に、ゆっくり休んでくれマイフレンド"くらいのことは言っていて、どう考えてもパットに良くないことが起こっていると確信した。

そこで、検索したら、ニュースが出ているではないですか。

MR.BIGのドラマーであるパット・トーピーが逝去。享年64歳 | NME Japan

普段、あんまりブコメすることがない自分が忘れないようにブコメを残した。

MR.BIGのドラマーであるパット・トーピーが逝去。享年64歳 | NME Japan

マジか…昨日中古で2003年限定100台のパット・トーピーモデルのスネアを手に入れたばかりなのに…それだけ調子が悪かったってことなんだな。/昨年のライブ見に行けて良かったわ。

2018/02/09 14:40

そう、前日に約2年探し続けたPat Torpeyのスネアを中古で手に入れたところだった。スネアについてはまた別途書く予定だが、そんなタイミングでの訃報は余計にショックだった。

 

Pat Torpeyの存在はMr.Bigで初めて知った。しかも、4thアルバム『Hey Man』発売後で活動休止状態の時に出会ったベスト盤。それでもMr.Bigのギター・ベース・ドラムの演奏力の高さとヴォーカルのカッコよさに小学生の自分はぶっ飛んだ。この辺の話はまた別記事で書いている。

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でも、ギターやベースのカッコよさが前に出ていて、あんまりドラムの凄さが伝わりにくい感じもあった。

そもそも、ドラムのスゴさってどうやって分かるんだろう? 今考えても手数が沢山出るとかグルーヴが気持ちいいとか、そういうポイントはある。しかし、ド派手なドラムって楽曲の邪魔をすることが往々にしてあって、逆に楽曲に馴染んでリズムを刻むことに徹した方が価値があったりすることもある。Mr.Bigで考えると、ギターとベースが遊びまくるので、ドラムくらい普通なくらいがバランスがとれる。そう考えれば、Pat Torpeyの立ち位置はテクニックを見せつけて、バリバリのテクニカルなドラマー的な立ち位置よりは、縁の下の力持ち的な位置が正しくて、その位置にいたと思う。

縁の下の力持ちの立ち位置は変わらず、テクニックを発揮しだしたのは3rdアルバムの『Bump Ahead』くらいからだと思う。前作の2ndアルバム『Lean Into It』は売れたし、ドラムとしての立ち位置が安定していて、テクニカルだけどカッコよくて聴きやすくおさまっていた。それが、3rdでは始まりの「Colorado Bulldog」からキメまくり、「Mr.Gone」でのスティックさばき、「Temperamental」でのカウベルを絡めたパターン等リズムパターンんで攻めることも増えた。そして、4thアルバム『Hey Man』で全身パラディドル「Take Cover」が日の目を浴びる。

ミドルテンポながら、16分音符を刻み続ける地味にキツイことをあえてやる姿勢には頭が下がる。

Paul Gilbertの脱退後、冒頭のRichie Kotzenが加入したが、きっとEricとBillyが目指したMr.Bigが体現されてちょっと渋いブルージーな感じになった。特に6thアルバム『Actual Size』発売後に解散が決まった後の最後のツアーFarewell Tourで見たPatは、テクニカルで細かい技を繰り出す手数の多いドラマーになっていた。あの時見たドラムソロで歌った「Yesterday」は忘れられない。(どうやら昔からやっていたみたいだけど)

 

Pat Torpeyの能力はドラムだけにとどまらず、歌唱力も半端じゃない。Mr.Big加入前のL.A.メタル全盛期の頃、スタジオに呼ばれたと思ったら、コーラスとして参加を依頼されたなんて逸話もある。その時は、本物のヴォーカリストの上手さはいらず、適度な上手さが欲しくてのオーダーだったらしい。その能力はMr.BIgでも遺憾なく発揮されており、Mr.Bigのコーラスが素晴らしい曲が沢山ある。特に「Green-Tinted Sixties Mind」は最高すぎてこれだけで記事を書いている。

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Pat Torpeyはドラマーとしてもシンガーとしても優秀であり、何よりその人柄の良さが伺える。見た目通り優しい人であったことが想像されて、ミュージシャン達から追悼のコメントが集まっている。

これを見てもPat Torpeyがどれだけ人間として素晴らしく、その上で最高の音楽を作り上げてきたかが分かる。

 

自分に素晴らしいドラマーの姿を示し、素晴らしい音楽の経験をさせてくれるきっかけをくれたことを感謝する。そして、昨年のライブでその雄姿を目にできて本当に幸せだった。

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ご冥福をお祈りします。

 

こちらからは以上です。

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