Jailbreak

新しい世界の切り取り方

Mr.Childrenが自分にかけた音楽に関する5つの呪縛

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最初に影響を受けた音楽は音楽に対する「そういうもんだ」観を与える。それが音楽の価値観の基準になって比べる基準になり、他の音楽と比べてさらに価値観が変化していく。比べる基準ができると、色んな差に気付くものだ。

そんな中で自分がMr.Childrenによって与えてもらった価値観が、「あれ?これって普通じゃないかも?」と思って思い直したことを書いていこうと思う。

 

ヴォーカルの歌い方は曲によって変わる

BOLERO

ヴォーカルは曲によって歌い方や声色を変えるものだと思っていた。もちろん、その歌声が大きく変わるから同じ人が歌っているのは分かっているけど、本当に桜井さんが歌ってるのか?と思ってしまうくらいの変化がある。

例えば6thアルバムの『BOLERO』だと、「Everything(It's you)」の落ち着いた歌声と「傘の下の君に告ぐ」のはっちゃけてメーターを振り切った歌声と「シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~」のエルビス・コステロっぽい歌い方と、一つのアルバムの中でも変化を感じるものだ。

楽曲に合わせて歌い方を変えるのは表現として当たり前だと思っていたが、案外そんなことはなかった。大体どんな曲も同じ歌い方で歌ってしまうJ-POPのアーティストはそこそこいる。もちろん、スピッツの草野マサムネや小田和正みたいな唯一無二な歌声であれば、そんなに歌い方に変化はいらないかもしれないが、そこまでオリジナリティがある歌声こそ変化を出しずらい。

変化をつけるのも、変化をつけけないのも一長一短があるが、自分は変化があるもんだと思っていて、そういうもんだと思っている。

オリジナルアルバムの収録曲には幅がある 

Atomic Heart

ミスチルはロックもポップスにも渡る幅広い音楽性があるが、それは曲ごとに割合を変えて現れる。ロック寄りでアップテンポにソリッドに攻める時、オシャレにシティポップでしっとりと抑える時、アコースティックに静かにメッセージを伝える時…これと決めたサウンドがあるわけではないので、様々な楽器を使ってアレンジがされている。

4thアルバム『Atomic Heart』は2曲目の「Dance Dance Dance」はちょっとメタリックにダンサブルなロックで、3曲目の「ラヴ コネクション」はローリングストーンズを意識して作った曲だけあってノリノリのロックンロールに仕上がっている。そうと思うと、4曲目「innocent world」、6曲目「CROSS ROAD」、12曲目「Over」と正統派のポップスで歌詞の分かりやすさやメロディーのキャッチーさはピカイチ。そして、5曲目「クラスメイト」のミスチル流シティポップと10曲目「雨のち晴れ」の妙にリアルな生活臭のする音楽。7曲目「ジェラシー」・8曲目「Asia (エイジア)」とサイケデリックなシンセが鳴る不思議な楽曲がある。

好き嫌いはあるものも、アルバムの中に様々な曲があることで飽きることはないし、各楽曲のキャラクターがハッキリして比較しても面白い。

これが他の音楽だとそうはいかないことがある。メロコアやパンクはアルバムを通してサウンドが変わらないなんてことはザラだし、メタルにもそういうアルバムは存在する。ほぼ同じテンポで似たようなメロディと歌詞がつまらなく感じることもある。逆にそのサウンドそのメロディそのリフにハマってしまえば、最高の音楽になることもあるのを知るのはずっと後の話。

いつも歌詞が良いもの

Q

 何をもって良い歌詞かは難しいのだが、少なくとも「こんなこと歌ってるんだ」と思える内容である方がよいのではないか、と思うのだ。桜井さんの歌詞は抽象度はあまり高くないが、いろんな解釈ができる曲があるのも特長。ポイントとしては「こんなこと・状況・風景を歌っているのかな」と想像できて「こういうのも良いな」と思えるのは良い歌詞。あとは「気づき」を与えてくれる歌詞は良い歌詞。ミスチルの歌詞はこういうものを経験させ続けてくれている。

9thアルバム『Q』はこの歌詞のバランスが良いアルバムの一つ。前半では1曲目の「CENTER OF UNIVERSE」では”どんな不幸からも喜びを拾い上げ笑って暮らす才能を誰もが持っている”と生きているだけで価値があることを気付かせてくれ、3曲目「NOT FOUND」では生きる辛さを歌ってくれ、5曲目「Surrender」ではダメな男の心情を吐露し、6曲目「つよがり」では2人の絶妙な関係にある境界線を越えるようなメッセージがある。後半の9曲目「ロードムービー」では爽やかに人生を進んでいく姿を歌い、10曲目「Everything is made from a dream」では核兵器だって始まりは科学者の小さな夢だったかもしれないと気づかせてくれ、11曲目「口笛」と13曲目「安らげる場所」では二人の関係に変化はあるがそれでも続けていくこと愛しさを感じることを忘れないように大事にすることを示し、12曲目「Hallelujah」では下から愛を叫ぶ。

難しいことを難しく歌ったり、何にも歌っていない時もある。それでも、歌と言葉で表現することでこんなに何かを表せるんだと思える楽曲は多い。自分は英語がネイティブ並みに聴けるわけではないので、洋楽は同じレベルで聴きとって楽しむことはできず、気になった曲の気になった歌詞を後から読んでみる程度。そのため、邦楽と洋楽は同じレベルで歌詞を楽しむのは難しいと思っている。

ライブは必ずしもオリジナル通りとは限らない・ライブバージョンがある

Mr.Children 1/42

音楽の楽しみ方はCDやオーディオで楽しむだけでなく、ライブでも楽しめる。そして、「音源になった曲をライブでどのようにパフォーマンスしてくれるか」はライブを楽しむ最重要ポイントになる。

サウンドはどうしても生楽器を使う関係上同一にはならないが、ほぼ同じような音は聴かせてくれるし、曲によってはプログラミングされたバックのサウンドと合わせることもあるので、しっかりと原曲を再現するアプローチがある。その一方で、ライブの定番曲やその時の最新音源以外の楽曲をライブ用にアレンジして演奏することがある。アコースティックアレンジであったり、サウンドはほぼ同じだが構成を変えたり、イントロが全く違ったりとアプローチは色々ある。ライブを通して楽曲は全て原曲通りではないし、全てアレンジを変えてあるわけでもない。そのバランスの良さがミスチルのライブを楽しめる根本的な理由なのだ。

ミスチルはライブDVDがほぼツアー毎に発売されていて、ライブの様子を追体験することができる。自分が初めて買ったライブビデオは『regress or progress '96-'97 tour final IN TOKYO DOME』だったし、初めて買ったライブ盤は『1/42』だった。『regress or~』では5thアルバム『深海』の曲は曲順もアルバム通りに再現している。その一方で「Dance Dance Dance」では中間部にアレンジが加えられメンバー紹介になっているし、「タイムマシーンに乗って」のラストはテンポが上がった別アレンジがされている。『1/42』に至ってはDisc1はほぼ原曲通りで、「I'll be」が若干長いくらいだが、Disc2の「ラヴ コネクション」はギターの掛け合いから始まりロックな仕上がりになっているし、「ニシエヒガシエ」では中間部が大胆にアレンジされているが原曲を超えたんじゃないかと思うくらい、最高のアレンジがされている。これは一例で各ライブDVD毎に同じようなことが同じくらいの割合で仕込まれている。

コンセプトとしてアルバムを再現するライブもあるし、終始アコースティックアレンジで進むライブもある。ミスチルはその辺の原曲通りの再現力は申し分ないが、アレンジをした際に原曲を殺さず楽曲の新しい面を見せてくれる。こういうことが他のアーティストが当たり前にやっていると思うと痛い目を見る。下手すると原曲より歌が下手なんてこともあるから恐ろしい。

メンバー交代はしない・バンドに脱退/加入しない

REFLECTION{Drip}通常盤

ミスチルはデビューから桜井和寿、田原健一、中川敬輔、鈴木英哉の4人のメンバーが変わっていない。そのため、Mr.Children=4人のメンバーなのだ。週刊誌に不仲説や桜井さんの独立説を書かれたこともあるが、今のところ解散やメンバーの脱退はない。

これがバンドやユニットとなると、なかなかそうはいかない。様々な理由によるメンバーの脱退や入れ替えがあり、あのバンドのあの人がメンバーになるみたいなことは割とよくある話。バンド名やユニット名の看板は同じだけど、また違う音楽性になることなんてこともある。その辺のメンバーが変わることに因る影響がどうなるかという記事を書いたこともある。

長く同じメンバーで活動を続けている方が少なくて、あのサザン・オールスターズだってギターの大森隆志が脱退しているし、BOØWYは解散しているし、X JAPANはギターのHIDEが亡くなっている。様々な理由により同じメンバーでの活動ができないことの方が多いのはミスチル以外を知らないと分からないことだ。もちろん、18枚目のアルバム『REFLECTION』ではミスチル第5のメンバーと呼ばれるプロデューサーの小林武が関わらない作品が増えたが、あくまで小林武はプロデューサーであってメンバーではないのだ。小林武がミスチルに大きな影響を与えてとても良いバランス感覚で音楽を仕上げるプロであるのは間違いないのだが。

最後に

当たり前が全然当たり前じゃないと思う時、原点に返るとその理由が分かる。音楽は絶対的にとらえても良いのだが、相対的にそれも幅広く様々なものと比べると原点の素晴らしさや良さに気付くことがある。

ミスチルはリスナーの知らないところで音楽のエンタメ性を高めてくれている。そのため、自分は「どんな音楽を聴くの?」とか「どんなアーティストが好きなの?」という話になるとミスチルの名前を挙げることが多い。あまり音楽を詳しくない人でも知っていて、音楽を良く知っている人でも上記のような話をすると納得してくれることが多いからだ。

 

こちらからは以上です。