Jailbreak

新しい世界の切り取り方

生音・生バンド信仰をぶっ壊してくれたのは小室哲哉だった

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音楽プロデューサー小室哲哉が引退する。しかも、その理由が不倫騒動のけじめとして。

理由はどうあれ、引退自体は残念でならない。特に自分の生音・生バンド信仰をぶっ壊してくれたのは小室哲哉だったから。

 

自分はロックが大好きで、中学に入るころには洋楽のハードロックやメタルを聴いていた。ギターを弾いているのもあったが、テクニカルな音楽にどんどん惹かれていった。それだけあって、「自分を構成する9枚」を選んでみるとロックばっかり。なので、10代の頃はバンド志向で、生音サイコー!という考え方だった。打ち込みはもちろん、シンセも全く入っていないソリッドさこと至高!なので、R&Bが流行っていた2000年代のJ-POPはあまり好きではなかった。

今考えると、見えている世界が狭い。アナログとデジタルの融合やジャンルの融合が進むと生音と打ち込みやシンセが組み合わせられて、今まで聴いたことがない凄い音楽になったりするのも知らないし、その音楽を知るきっかけも失う可能性があって、とても残念だなと思う。好きなものを貫くことは悪くはないが、せっかくだから音楽くらい色んなものを聴いてみればいいと思う。今はもっと色んな音楽を聴いてみることにしている。

 

自分には弟がいる。弟は当時流行っている音楽が好きで、アイドルも全てストライクゾーンだが、あまりロックは聴かない。嫌いなわけではないが、優先順位が低い。自分の聴く音楽とはほぼ被らない状態だった。そんな弟が90年代後半によく聴いていたのが小室ファミリーであり、globeのアルバム『FACES PLACES』だった。

何故よく聴く音楽を知っていたかというと、 両親が運転する車で移動する時に音楽をかけていたのだが、そこで流す曲は自分たちがその時聴きたい曲を聴くことになっていた。さらに、お互いの公平性を保つために3曲毎に自分の曲と相手の曲をかけあうことにしていた。ほぼ毎週末車で動くことがあったので、嫌でも相手の音楽を聴くことになる。最初はカセットテープだったが、CDのなり、MDになり…とメディアの変遷こそあれど、基本ルールは守られた。

嫌でも自分の好きではない音楽に触れる機会があり、お互いの最先端の良い音楽を聴かせあう機会があったのだ。

 

時は過ぎて自分が20代になり、BOOKOFFで安い中古CDを買い漁るのが好きになっていた。その昔よく聴いたZARDのベスト盤が500円、B'zの初期のアルバムが300円等の投げ売り状態になっていて、そういうものを細々と購入していた。

この頃になると生音・生バンド信仰もだいぶなくなり、洋楽信仰もほぼなくなってフラットに音楽を楽しめるようになった。

そんなタイミングに小室哲哉が音楽番組で紹介されていた。2000年も過ぎて小室ファミリーのブームが去り、当時はTKがトランスに傾倒していた時期。トランスの良さについて語っていたのだが、「4つ打ちのバスドラが鼓動と同じに感じられて心地いい」という旨の発言があり、目から鱗。音楽の気持ちよさについて、それほどちゃんと考えたことがなかったので、そういう見方もあるのかと思った。そう考えると、打ち込みの規則的なリズムが気持ちよいとも思えるし、生音よりも機械音の方が規則的な音を出しやすい。規則的な音の価値を教えてくれたのは小室哲哉だった。

そう思ってglobeの楽曲を再度聴いてみると、4つ打ちの気持ちよさに溢れていた。

どうも弟のせいでglobeに慣れ親しんでいるせいか、globeは好きなのだ。あの頃安室奈美恵だってTRFだって車の中で流れていたはずなのに。

 

小室哲哉は最新の音楽を書かなくても、既に十二分に日本の音楽業界をけん引したと思う。全盛期を知っているだけに昔小室ファミリーだったアーティストと小室哲哉がタッグを組むのも楽しみだった。 でも、それはあくまで自分がそうであったら良かったと思うだけだ。音楽家小室哲哉が偉大であることに変わりはない。

 

こちらからは以上です。

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