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-第3回-マンガ 秒速5センチメートル(1)(2)の感想【ネタバレあり】

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秒速5センチメートルも、アニメ、小説と読み進めてきた。

dankantakeshi.hatenablog.com

 

そこから、マンガ版2巻を読み進めてみた。

また同じ内容の繰り返しかと思いきや、また新しい情報があったことと、シーンに新しい発見があった。

 

マンガ・秒速5センチメートル

マンガ版の秒速5センチメートルは新海 誠監督原作の連続アニメーション秒速5センチメートルを清家 雪子が漫画として描いている。

2巻構成となっており、「桜花抄」、「コスモナウト」、「秒速5センチメートル」という3部構成の形は残っているが、1巻に5話、2巻に6話が収録されている。

・1巻 

第1話「桜花抄」

第2話「焦燥」

第3話「思い出話遠くの日々」

第4話「カナエの気持ち」

第5話「コスモナウト」

・2巻

第6話「君のいちばんに…」

第7話「END THEME_1」

第8話「END THEME_2

第9話「END THEME_3」

第10話「One More Time,One More Chance」

最終話「空と海の詩」

 

小学4年生に遠野 貴樹と篠原 明里が出会うところから始まり、引っ越し前の貴樹と明里と再会する「桜花抄」、種子島に転校した貴樹と地元の同級生澄田 花苗の気持ちの変化を描く「コスモナウト」、社会人となった貴樹が交際している水野 理紗との別れを描き、そこからの未来を描く「秒速5センチメートル」の基本構成は変わっていない。

しかし、漫画版は「秒速5センチメートル」に相当する「END THEME_1」、「END THEME_2」、「END THEME_3」とアニメ版や小説版よりも詳細に描かれている。

また、「One More Time,One More Chance」では「コスモナウト」に出てくる澄田 花苗のその後を描いている。

アニメ版や小説版と比べてあまり詳しく描かれていない貴樹と水野 理紗の関係や、澄田 花苗のその後が描かれている点では新しい情報があり、作品をより深くより多面的に楽しむことができる。

 

マンガ版の感想

アニメ版、小説版と読み進めてきたことを抜きにしてもかなり良い作品だと思うし、アニメ版、小説版を知っている方でも読んだ方が良いと思う作品だった。

 

小説版でも同様のことがあったが、セリフであったりその情景の一部が言語化されることによってアニメでは気付けなかったことを意識することができるし、そのおかげで新しい視点を得られた。

例えば、2巻の第6話「君の一番に…」では花苗が貴樹に告白をしようとして、いつもの商店の裏で苗が貴樹のシャツの裾を掴むシーンがある。

ここで、なぜ苗が告白できなかったかがアニメ版や小説版では分からなかったが、マンガ版では貴樹の目が「何も言うな」と語っていたことが分かった。

確かにそれなら苗が告白できなかったことも、その後結局言えず終いだったのもうなずける。

 

もう一つは新しいシーンが描かれていたこと。

2巻がそのメインとなる。

貴樹と水野 理紗の馴れ初めから別れることになった経緯が描かれている。

とにかく何故理紗と別れることになってしまったのか、理由は想像がつくがその過程を知ることで、また別の視点が大きくなってバランスが良い作品になっている。

そして、最終話「空と海の詩」で花苗の10年後を描いている。

これも花苗の視点が入り、さらに10年後という時間が新たな展開をもたらしてくれる。

それに貴樹が進学で上京する際に花苗がかけた言葉も描かれている。

これは貴樹が以前に関わってきた女性から言われた言葉を回想するシーンがあるのだけど、その中の一コマとして描かれている。

 

心に残るシーン

心に残るシーンがいくつかあって、貴樹が理沙を岩舟に置いてくるシーンと花苗が東京に出てきて最後に貴樹とすれ違えたか!?というシーン。

 

まずは貴樹が理沙を岩舟に置いてくるシーン。

貴樹が仕事を辞めることを決め、理沙が親に会ってほしいと頼んでも「俺は今将来とか考えられない」と答えたことで3年続けてきた関係がギクシャクし始める。

そこから貴樹が理沙に会うことを先延ばしにし続け、休日出勤帰りに会社を出たところで貴樹は理沙がいることに気付き「貴樹君が私に隠してきた心 一番見せたくないものを見せて」と言って、次の話で電車で岩舟に向かうことになる。

そこで朱里のことを理沙に吐き出していく。

岩舟に到着して理沙が先に降り、「貴樹君」と呼ばれたことで朱里がフラッシュバックして貴樹はそのまま電車を降りずに行ってしまう。

ここでもやっぱり貴樹は過去から逃れられず、目の前の人を大切にできない。

どこか自分もこういうところがあるよなと思い当たる節があるが故に、なかなか心に刺さるシーンだ。

 

もう一つのシーンは最終話「空と海の詩」のラストシーン。

花苗は亮という2年前に種子島にやってきた男性からアプローチされるが、貴樹のことを引きずっており前に進めない。

そんな時どうしてよいか分からず、姉に相談したところ「東京に行ってみたら?」と言われて東京に行ってみることになる。

貴樹がいるのは三鷹だということが分かって、そこまで行くのだがそこで新たなことに気付く。

最後に貴樹らしい姿が見えるのだがそこで終わっている。

もしかしたら、本当にすれ違っていて再会を果たせたのかもしれないし、それは花苗の想いが見せた幻なのかもしれない。

それでも、その姿が見えたことで幻でが前に進めることは分かっている。

それだけで価値があるシーンだった。

 

その時流れていた音楽

 やっぱりお話を読むときには音楽が欠かせない。

この辺は別記事にしてある。


今回も音楽を聴いていたのだが、今回はMr.Childrenの「常套句」と花*花の「さよなら大好きな人」がピッタリだった。

 

PVの自分が削れていくイメージと貴樹が妙に重なる。

そして、朱里は別な人と結婚していくわけで、もう自分が小さくなっていってしまっている。

この辺がピッタリだったかもしれない。

「君に会いたい」

この歌詞が誰にとっても大事な言葉になっているのも確か。

 

そして、花*花の「さよなら大好きな人」

この曲自体は本当は亡くなった祖父への気持ちを歌っている曲なのだけど、大きな意味で別れを歌っている。

それが花苗と理紗の貴樹への気持ちへの決別の気持ちと重なった。

 

こういうことがあるから音楽を聴きながら本を読むことを止められない。

 

最後に

原作はあくまで新海 誠であるので、アニメ版や小説版から大きくズレることなく作品の世界を広げてくれた作品だった。

出会いや別れや自分ではどうしようもないことを描いているので、報われていないように見えるのでこの作品を読むことで気持ちが落ち込む方がいるかもしれない。

しかし、アニメ版や小説版よりはもっと後味が良い仕上がりになっている。

 

残すは小説版のone more sideを残すのみとなった。

この作品によって、秒速5センチメートルの世界が完成する。

その感想は追々書いていく予定だ。

 

こちらからは以上です。

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