Jailbreak

新しい世界の切り取り方

カヴァーでメタリカが蘇る?~Metallica中期から後期のサウンドと音楽性~

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 今週のお題「私がアツくなる瞬間」 

 

 

ちょっとメタル談義をしてみたいと思う。

 

 

ハードロックやらメタルやらが好きで、その辺の記事を書いてくれているおっさんハックさん(id:grampusday)。

自分もアラサーなので、ほぼ同世代であるはずです。

その割に好みが古臭い(世代で言うと10歳以上上の感覚)なところも自分と似ていて(勝手に)共感してます。 

 

そんなおっさんハックさんが魅力的な記事を書いてくれました。

ossanhack.hatenadiary.jp

 

自分もメタリカ大好きです。

St.Anger*1も持っています。

ただ、ちょっと見え方・聴こえ方が違うので、対比ができそうだなと。

 

※使用されている画像はamazonへのリンクとなっています。

 

Load~Reload以前以後

Metallica

Metallicaは「Load」「Reload」以前の1991年に全世界で3000万枚以上を売り上げた「Metallica」(通称ブラックアルバム)をリリースしている。

 

ブラックアルバム自体はMetallicaがそれまで築き上げてきたスラッシュメタルの「速さ」の部分を削ぎ落した作品であると思う。

だからこそ、先行シングルでありアルバムの1曲目に収録されている「Enter Sandman」の雰囲気がまさにそう。

 

この時アメリカはグランジブームでNirvanaやPearl Jamの全盛期。

流行に乗った大物ロックバンドがヒットしたのである。

 

LOAD

「Load」と「Reload」が発売された1996年~1997年のアメリカはポストグランジの時代で全体的にはグランジ・オルタナの暗さから抜け切れていないサウンドがメインであった。

「Load」と「Reload」は対になる作品で2枚組になる予定もあったほどなので、2枚合わせて1枚という見方もある。

 

「Load」はテーマが「ルーズ」 であり、リズムがカッチリしていたスラッシュメタル時代とは一線を画している。

楽曲もミドルテンポな曲が多いのもそのため。

Metallicaは前回のブラックアルバムでそぎ落とした「速さ」の分を「重さ」を重視したサウンドや楽曲に変化している。

当時、ギターやベースの機材の発展が目覚ましかったこともあり、ラインでの録音やアンプでの再生音域が広がったりとそのサウンドを余すところなく音源に残すことができるようになっている。

そんな楽曲やサウンドは賛否両論(今までのMetallicaファンは嫌う人が多い印象)が巻き起こった作品になっている。

 

Re-Load

 

当然、その流れでできている「Reload」はへヴィな指向なのだが、オープニングを飾る「Fuel」のような曲もあり「Load」よりは楽曲にバリエーションが出ている。

それでも昔のMetallicaが好きな方は残念に思ったかもしれない。

 

 

ブラックアルバムから流れているオルタナティブ感とMetallicaが元々持っているへヴィさを強調して変化していっている時期の作品である「Load」と「Reload」。

個人的には「Reload」収録のFuelを聴いてMetallicaを知ってカッコいいと思ったきっかけなので、若干思い入れがある。


Metallica - Fuel [Official Music Video] - YouTube

 

このイントロ。

ジェームズのラップのようにも思える怒涛の歌詞。

へヴィなサウンドで重戦車が時速120kmを出しているくらいの暴走感があってたまらない。

 

 

 

それから6年後の2003年に発売されたのが本題の「St.Anger」である。

 

St.Angerで目指したサウンド

St Anger (Bonus Dvd)

 

実は「St.Anger」の制作はドキュメンタリー映画になっている。

「Some Kind of Monster」という作品だ。

 

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この作品で描かれているエピソードや曲作りの方法を知っておくと「St.Anger」が良く分かるとともに、Metallicaファン必見であることは間違いない。

また、「St.Anger」にはスタジオライブ映像が収録されており、「St.Anger」の楽曲を演奏している。

これがまたカッコいい!

 

 

「St.Anger」はかつて失ったスピード感を取り戻すとともに機材の進歩とともによりへヴィになっている。

楽曲はブラックアルバム以前のクラシックにも通じるような楽曲の展開はないが、リフを中心に楽曲を展開している。

また、2000年代のギターソロはカッコ悪いの流れを汲んでいてギターソロはほぼなし。カークいる意味ほとんどないじゃん。

でも、おっさんハックさんが仰っているようなギターのラインそのままのメロディばかりではないしむしろ少ないと思う。

それに、フックが無いのはチラ聴きしかしておらずちゃんと聴いてないからではないかと思ってしまう。

Franticや表題曲のSt.Anger等フックのあるリフはあるし、歌だってキャッチーなものは多々含まれている。

もちろん、そんなちゃんと聴く気にならないと言われればそれまでなのだけれど。

 

 

問題のサウンドはこれまた賛否両論。

7弦ギターを導入していたり、ダウンチューニングが横行しているので物理的にサウンドがへヴィ。

そして、批判が多いラーズのドラムサウンド。

特にスネアがカンカン鳴っていて好き嫌いが分かれるところ。

この頃ラーズはレコーディング中にスナッピーを切ったサウンドが気に入ったらしく、このようなスネアの音になっている。

 

 

ドラムを叩く者として、ドラムのサウンドについて少しだけ。

スネアのサウンドに関しては2000年代に入ってから以前よりもオープンな響き(スネアがカーンって鳴っているとか胴鳴りが入っている*2

その意味では流行に乗っているし、デッドで低いチューニングのスネアよりもキレがあって攻撃性が増している点ではへヴィ・メタルのサウンドに合っているのではないか。

余談ここまで。

 

 

そんなことを書こうかなと思ってて、ちょっと調べたらこんなのがYouTubeにあがっていた。 


Metallica - Master of Puppets (St. Anger version ...

 

これはSt.AngerのラーズのスネアサウンドでMaster of Puppetsをやったら?というものみたい。

このように、スネアだけでも印象は変わるけれど、普通にミックスするとオープンな響きはギターやベースである程度かき消されてしまう。

ここから「St.Anger」のサウンドは狙って作っていることがここから分かるはずだ。

 

Metallicaのファン層による違い

 

 

Metallicaは1981年に結成していて、そのキャリアは30年以上になる。

それだけ長くバンドを続けていれば、スラッシュメタルをバリバリやっていた初期の頃からのファンとブラックアルバムが売れたことによって知った中期のファンと「Load」「Reload」以降のファンとはMetallica自身が変化していっているため好きなサウンドが異なる。

 

初期のスラッシュメタルサウンドが好きなら、「St.Anger」について「速さ」は戻ったけどクラシック的な展開はないし、サウンドも思っているようなスラッシュメタルのサウンドではない。

ブラックアルバムで獲得したファンはそれこそラーズのスネアが気になるし、物理的に重くなっているサウンドが気に入らないかもしれない。

 

カヴァーで曲が蘇る!?

 

おっさんハックさんが紹介されていた動画はカヴァー。

全然別人が再度録音しなおしたもの。


(HQ STEREO MIX) #STANGER2015 - Metallica's ...

 

ヴォーカルはジェームズっぽさ満点でサイコー!

ただ、サウンド全体にこっちの方が低音がモッサリしており、ギターはもっとカリカリにしてベースで低音を補うサウンドの方が個人的には好き。

その演奏については良く言えば上手。悪く言うとMetallicaの持つ荒さがないので、優等生のメタル。

おっさんハックさんのようにIRON MAIDEN、Judas Priestが好きという方にはカッチリしていて好かれるのかもしれない。

 

 

これ系が好きならば、ジェームズも気に入っているTriviumのカヴァーも現代的なサウンドになっていってカッコいいのでオススメ。


Metallica Tribute (Trivium) - Master Of Puppets ...

 

この辺のカヴァーの出会いの順番については別で書いている。

 

Metalicaはオワコン?

 

 

オワコンかオワコンじゃないかと言うとオワコンじゃないと言えると思う

でも、旬は過ぎているというのが実態だと思う。

 

これについても別で書いているが、ミュージシャンは売れ続けなければ価値は落ちるだけ。

Metallicaはその意味では売れ続けている。

一応、最新になる2008年発表の「Death Magnetic*3」も売れている。

ワールドツアーをやってもスタジアム級の会場を満員にできる。

その意味ではオワコンではない。

 

とはいえ、Death Magnetic」に真新しいさはなく、スマッシュヒットをしたかというと全然そんなことない。

初期の名曲「Battery」や「Master of Puppets」、ブラックアルバムの1曲目を飾る「Enter Sandman」のような名曲は生まれていない。

当然、評価が終わっていないというのもあるのだが、旬な楽曲を提供できていないのは確かである。

 

そういうことから考えると浜崎あゆみがCDを出しても売れないし、A-nationでもトリを務められないことを考えると旬でもないし、オワコン。

 

最後に

 

長々と書いてきたけれど、「St.Anger」はちゃんと聴けばいいアルバムであるし、ドキュメンタリーやライブ映像も含めるとその制作過程や人間模様が目に見えて分かるのでそういったアプローチがあることを知ってほしい。

 

Metallicaの初期作品から最新まで彼らは変化し続けている。

その時その時でコンセプトがある場合もあるので、その辺を掘り下げるのも楽しい。

個人的にはMetallicaはその作品ごとの良さがあって、それが合う・合わない、好き・嫌いがあるだけだと思っている。

別にクオリティが低いわけじゃないので、是非とも全ての作品を聴いてほしい。

 

あと、おっさんハックが仰っている中で、絶望的にセンスのないドラムに関してはほぼ同意する。

リフマスターとして崇められているジェームズがいる一方で、ドラマーとしての評価が低いラーズは残念でならない。

キャラ的にも嫌われるのもあるのだけど。

 

 

こちらからは以上です。

 

Load

Load

 

 

Re-Load

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Death Magnetic by Warner Bros. 【並行輸入品】

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Master Of Puppets

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 合わせて読みたい

 

*1:セイント・アンガーと読みます。直訳すると「聖なる怒り」

*2:ここに脚注を書きます)のものが登場する機会が増えている。

*3:原点回帰を狙った「Death Magnetic」は「St.Anger」とは全く違うサウンドであるし、速さも戻ってきてクラシック的な展開もある。