残業で23時ごろ帰り道をiPodを聴きながら歩いていた。その時はiPodを全曲シャッフルにして何が出るかな状態で音楽を楽しんでいたのだが、Slayerのライブ盤『Decade of Aggression』から「Born of Fire」がかかった。「Born of Fire」自体はSLAYERらしいレッドゾーンに到達したハイテンポで押しまくる曲なので、とても好きな曲だ。
しかし「Born of Fire」というよりは、『Decade of Aggression』が大好きなアルバムでオススメライブ盤のまとめに書いたこともある。
『Decade of Aggression』は1991年に発表されているので25年も前の作品。ライブ盤というものあるが、選曲もほぼベスト状態でこのアルバムを今でもそのままやってくれるというだけで何万円もかけてライブに行く価値があるんじゃないかと思う。
もちろん、オリジナルメンバーの故Jeff Hannemanがギターを弾いていたり、ドラムがDave Lombardoだったり、メンバー全員が30代という旬な時期の作品なのも最高なアルバムの理由の脇を固めている。
そんな作品の1曲がかかって思ったのだ。
大御所にこれ以上の作品を求めるのか?何より、大御所が新作を出したら何を望むんだ?と。
そこで、きっといくつか考えてみると答えが出てきそうなので、考えてみることにした。
例えば、Eric Claptonの新作はどうだろうか。きっと聴いてみるが、買わない可能性が高い。個人的クラプトンは「Change The World」とか「Tears In Heaven」あたりのアンプラグドが落ち着いてちょっとポップになった頃聴き始めていて、2000年以降のブルースアルバムはほとんど聴かない。
こればかりはそのアーティストとの出会い方が関係してくるから仕方ないのだが、そのアーティストに対して自分の持っているイメージの楽曲があるなら作品として欲しいかもしれない。
またBabyfaceとタッグを組んで作品を作るっていうなら買うとかそういうことになるんだろう。
クラプトンはもう70歳を過ぎているし、そんなに大胆な変化があるとは思えないのだけどね。
サザン・オールスターズの新作ならどうだろうか。
サザンの曲はタイアップが多いし、テレビやラジオで耳にすることをきっかけに買うことがある。良くも悪くもサザンサウンドやサザン節があるので、イメージから外れない作品が多いのもある。 ざっくり桑田佳祐の新作と考えるともう少しサウンドに幅があるが、それでもJ-POPの枠は外れない。
これはいつも通りのサザンでありつつ、新しい歌詞やサウンドの変化を楽しむ形になると思う。
じゃあ、Mr.Childrenならどうだろうか。
ミスチルのアルバムは毎回色が違って、テーマも異なっているので歌詞もサウンドも今までと同じとはいかない。だからこそどのアルバムにどんな色があって、どのアルバムが初心者に聴いてもらって受け入れやすいかを考えたこともある。
その一方でミスチルもサザン同様テレビやラジオで耳にするタイミングが多いので、既に楽曲自体が気に入ってしまえば手に入れることは確実。ただ、最近脱小林武を行ったせいかどうかは不明だが、パッとしない作品が続いているのは否めないが故に絶対買う!とは言い切れない。
変化が激しいという意味で考えると、Red Hot Chili Peppersもアルバムや時代によってサウンドや楽曲の雰囲気がどんどん変わっていくから一応試聴しないと怖くて買えない。いや、必ず買っても良いのだが、必ず新作を好きになれるわけではないのを知っているからだ。
そう考えると、以前なら○○の新作なら全部買う!と言うくらい好きなアーティストがいたような気がするけれど、ここ最近は試聴をして気に入ったうえで新作を買うようになっている。 多分、音楽を聴き始めた10代の頃よりも自分の時間が減っていて、聴きたくない音楽に時間を割いていられないが、楽曲と出会うチャンスは逃したくないという想いの結果だろう。
SlayerやMetallicaくらいになると、いつも通りやってんなくらいの感じで微笑ましく思ってしまう。へヴィメタルバンドは大きく変化することよりも、いつも通りいることが好ましいように思える。それはそのアーティストのオリジナリティでありアイデンティティがもう90%以上確立されてしまっているからで、Metallicaが『St. Anger』みたいなアルバム*1を出して売れるかもしれないが、受け入れられるかは別の話だし。
長くなってしまったが、なんとなく考えはまとまってきた。
その昔、槇原敬之が名曲「遠く遠く」の中でこのように歌っている。
大事なのは”変わってくこと””変わらずにいること”
そのアーティストにこの変わっていくことと変わらずにいることの割合の期待値が違うのだ。前述のRed Hot Chili Peppersは変わっていくこととある程度許容されていてそれを楽しみに待つ人も多いんじゃないだろうか。その一方で、SlayerやMetallicaはいつも通りであることがかなり多めに求められている気がする。この割合を間違うと今までのファンは離れる。
そして、いつも通りであって、あの名曲を超える曲はそうそう作れないだろうなと諦めているところはある。ミスチルに今更「Tomorrow never knows」を超える曲を作れとか、Slayerに「Angel of Death」と同等の名曲を!はやっぱり難しいわけで。難しいっていうのは、クオリティとかそういう問題ではなくて、自分との繋がりだったり記憶と紐づいていたり衝撃だったりその曲への想いと繋がっていたりして、音楽としての価値がまた別のところにあるのが原因で、同等のレベルの音楽に出会ってから積み上げるまでの時間も含めての音楽の評価になってしまっているから、そんなもん一瞬でできるんだったら山ほど音楽を聴いていない。
それ以外にもSlayerは故Jeff Hannemanが作った楽曲が好きなんだよな~と気付くのが亡くなった後だと気づく遅さもある。や、Jeff Hannemanは神!神ったら神!
にしても、ロックレジェンドは亡くなると殿堂入りするような気がしてならなくて、人間は本当に無いものねだりばっかりだなぁと。
そんなことを考えながら、真夏を超えてちょっと涼しくなった風に当たりながら家路につくこともあるのだ。
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*1:今までのMetallicaとはちょっと違うオルタナ感が押し出されたアルバム