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【レビュー】薄味だからこそスパイスが効くSuchmos『THE KIDS』とルーツの話

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THE KIDS(通常盤)

1.A.G.I.T.
2.STAY TUNE
3.PINKVIBES
4.TOBACCO
5.SNOOZE
6.DUMBO
7.INTERLUDE S.G.S.4
8.MINT
9.SEAWEED
10.ARE WE ALONE
11.BODY

オススメ曲→1、2、5、7、8

 

Suchmosの2ndアルバム『THE KIDS』を聴いた。

ロック感はなく、ブラックミュージックをベースにしっかりと引き算をした薄味で絶妙なバランスのアルバムだった。ヤンチャさ・オシャレさを融合させるセンスが良い。

 

アルバムとしては前作『THE BAY』から1年半、EP『LOVE&VICE』、『MINT CONDITION』や「A.G.I.T.」といった既に別な形で発表されている曲が多い。11曲中6曲が新たに発表された曲ということだ。

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オープニングから「A.G.I.T.」と「STAY TUNE」とキャッチでノリの良い曲が続く。「STAY TUNE」はこのアルバムの目玉トラックだし、CMに使われたことで認知度も高いのでアルバム前半にあることは大事なことだ。この曲がないとアルバム全体を聞き流してしまう。個人的には「MINT」の様に落ち着て、MAXの盛り上がりすら全然ピークに感じないサラっとした感じのSuchmosが好きだ。一方でこのアルバムで一番好きな曲が「DUMBO」だ。Suchmosには珍しいリフで押しまくる曲なのだが、このリフがリズムの裏に入る中、ギターの刻みやドラムが表にいることでさらにリフをグルヴィーなものにしている。

自分は普段ゴリゴリのロックやメタルを聴くので、Suchmosを聴くと音圧の無さだったり、ヴォーカルの声の張らなさが気になる。どうしてもへヴィで尖った音楽を聴くことが多いから余計に、そういう音楽とは楽しむポイントが違うと思わせてくれる。全体の雰囲気や歌っていることはもちろん、音と音の間を楽しむのが良いのだ。リズムや音域の隙間を感じて楽しむことで、文章で言う行間を読むような感覚だ。Suchmosの音楽はシンプルに仕上がっているので、あることを楽しむより、ないことを楽しむのが合っていると思っている。

アルバム全体として今までリリースされた楽曲と雰囲気が大きく違う曲はなかった。それだけSuchmosの音楽性が固まっているということ。まだ変化するよりも、持っている楽曲をどんどんリリースして欲しい限りだ。 

 

Suchmosってロックバンドなんだっけ?とずっと疑問だった。雑誌等のメディアで紹介される時にとにかく「ロックバンド」って乱用されている気がして、全然ロックじゃないじゃんと思うことも多々ある。ポップバンドとかジャズバンドとかあまり使わないが、スカバンドとかヘヴィメタルバンドなら使われるかなとも思いつつ、イマイチしっくりこなかった。

Suchmosの音楽をAcid Jazzが一番近いジャンルなんだろうが、Acid Jazz自体がFunk JazzやSoul Jazzの派生ジャンルなので、かなりニッチなジャンルなのだ。それだけに、Acid Jazzに収まらないこともあるのだ。

最初はHip-Hopを生バンドでやっているイメージで、そこにオシャレな感覚が足された音楽性なのかと思っていた。R&BやFunk、Soulといったブラックミュージックがベースにあるのは確かだなと。そんなことを考えていたら、ヴォーカルのYONCEがインタビューに答えている記事があった。

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この中で語られているSuchmosのメンバーと出会った頃に聴いたというD'ANGELO、Erykah BaduがまさにSuchmosの音楽の原型だった。

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こういう音楽から影響を受けたと分かると一気にいろんなことが分かる。 

D'ANGELOはR&B、Funk、Soulのシンガーソングライターだし、Erykah BaduはR&BにJazzを融合させたneo soulのアーティストだ。洋楽のブラックミュージックがSuchmosメンバー内の共通項なのだ。

これ以外にもNIRVANA、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、BLANKEY JET CITYなんてバンド名も出てくるが、Suchmosの音楽性からは全くその雰囲気は感じられない。

ちょっとルーツも分かって個人的にはスッキリしたが、やっぱりどう考えてもロックな感じや雰囲気は全く感じないんだよな。Suchmosはブラックミュージックをルーツとしたバンドだ。

 

こちらからは以上です。

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