本題に入る前に前提を。
自分はミスチルが好きで、自分を構成する9枚にはミスチルが当然入るし、よく考えたらミスチルの呪縛にかかっている。
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また、シティポップの定義をしようとかそんな大それたことは考えておらず、自分の考えるシティポップってこうだなと思い至ったというお話。
それでは本題へ。
先日、TSUTAYAでCDをレンタルしようと思って、アルバムを物色していた。
4枚1000円10枚2000円とセットだと安くなるのは分かっていたのだが、とりあえず6枚までは割とすぐ決まったのだが、4枚でもなく10枚でもなくてどうも中途半端だった。普段聴かない音楽に手を出すチャンスだと思って、オススメされているCDの中からシティポップと紹介されているアーティストが気になった。。森は生きている、cero、Awesome City Club、tofubeatsと普段聴かないアーティストのアルバムを手に取ったのだった。
TSUTAYAの紹介でも森は生きている、tofubeatsはシティポップのど真ん中ではないが、このジャンルを語る上では必要という判断があっての紹介だとポップがあった。ほとんど聴いたことがないアーティストばかりでなかなか面白いと思った一方、2000年以降のシティポップはこんな感じなのかと思った。自分の思っているシティポップとは違うなと。(どのアーティストがどうだったかはまた別の話で書くつもり)
シティポップの始まりとして、はっぴいえんど、ユーミン、角松敏生とかが思い浮かんで元々70年代後半くらいから80年代の音楽だととらえている。今聴いてもいい音楽だし、適度なオシャレ感と情景のある歌詞とキチンとしたメロディ。2010年代にだって音楽としての完成度は全く引けを取らないものだ。大瀧詠一の音楽や松本隆の歌詞はJ-POPの基本のキみたいなもんだと思う。それはそれとして、自分の思うシティポップはミスチルの特定の曲だなと思い至ったのだった。
さて、これからミスチルのオリジナルアルバム毎にシティポップだなと思う曲を列挙してみる。
『EVERYTHING』
・Mr.Shining Moon
・ためいきの日曜日
『Kind of Love』
・BLUE
・グッバイ・マイ・グルーミーデイズ
『Versus』
・メインストリートに行こう
・and I close to you
・さよならは夢の中へ
『Atomic Heart』
・クラスメイト
『深海』
該当なし
『BOLERO』
・幸せのカテゴリー
『DISCOVERY』
該当なし
『Q』
該当なし
『IT'S A WONDERFUL WORLD』
・渇いたkiss
『シフクノオト』
該当なし
『I ♥ U』
該当なし
『HOME』
・Wake me up!
・Another Story
『SUPERMARKET FANTASY』
該当なし
『SENSE』
・I'm talking about Lovin'
『[(an imitation) blood orange] 』
該当なし
『REFLECTION』
・You make me happy
・Jewelry
ここに名作の多いB面集も加えよう。
『B-SIDE』
・デルモ
・Heavenly kiss
・I'm sorry
・こんな風にひどく蒸し暑い日
・my sweet heart
合計20曲。現在最新のヒカリノアトリエまで217曲の10%に満たない程度が該当する。この曲の共通項を考えてみると、「メジャーセブンスやテンションコードを多用」、「ホーン(管楽器)アレンジがされている」、「鍵盤(ピアノ・エレピ・オルガン)の存在感が強め」、「ロックな歪んだギターサウンドは弱め」、「君と僕の恋愛の話」といったところ。テイストとしてブラックミュージックやジャズっぽさがあり、メロディや歌詞はミスチルらしい色恋ものなので、何ともサウンドも歌詞もトレンディなのが特徴。この中でも「クラスメイト」、「幸せのカテゴリー」、「渇いたkiss」、「Heavenly kiss」は特にサウンドの雰囲気といい、歌詞の世界観や設定といいシティポップだ。
4thアルバム『Atomic Heart』収録の「クラスメイト」は、社会人になって3か月前に同窓会があり、恋人になった彼女と再会した設定。それでも恋の魔法が解けてきつつあって、現実に戻されて別れ話をしそうになるけれど、週末に会ってまた各々の生活に戻っていくと寂しいという心情を描いている。最後はこんなに街の情景を語るだけなのに、寂しさにつながっていくだなんて、ズルいとしか言いようがない。ホーン隊の温かさに包まれて、ゆっくりと沈んでいく夕暮れ時の雰囲気とピッタリで、何だか大人で子どもにはレベルが高そうに思えるのが良いのだ。
6thアルバム『BOLERO』収録の「幸せのカテゴリー」は一緒にいる時間が長くなるにつれて冷めていく恋心と、恋人でいることやカップルであることを優先させて、中身が無かったり幸せではなくなってしまって、最終的に別れてしまうその過程を描いている。結局、建設的に関係性を築き続けることが必要だったり、コミュニケーションを通じて相手の考えや幸せってどういうこと?っていうことを擦り合わせることが大事だと言っているんじゃないだろうかと思う。サウンド的にはちょっとロックっぽいんだけど、グロッケンがいい感じにその辺の荒さを抑え込んでくれていたり、メジャーセブンスを多用することでメジャーのようなマイナーのような絶妙な雰囲気を作り出しているので、一瞬明るい曲に聴こえるが明るさの中に暗さのあるいい曲。
10thアルバム『IT'S A WONDERFUL WORLD』収録の「渇いたKiss」は恋愛末期状態のカップルを色気たっぷりに描いている。それなりに時間を重ねて想い出があり、冷めていく気持ちとの葛藤だったり、思い出すことによってまた立ち止まってみるけれど、それでもやっぱり離れてしまう気持ち。右にも左にも引っ張られるから張り裂けそうになる感覚みたいなものが、幸せなことばかりでない恋愛には汎用的で、個人的な何かに一致して重ねやすくなっているのが何とも上手い。この曲はホーン隊とオルガンとエレピがキモになっている。フワフワとした浮遊感を与えてくれて、ちょっと痛々しい歌詞であっても上手く包み込んでくれている。基本的なコード進行だが、フレーズの〆にⅤ-9を使ったり経過音としてⅢ♭dimを使ったりと小技が効いていて、最後には半音上がる転調まで用意されてドラマチックに仕上げているのがまたニクイ曲。「渇いた」が喉が渇いたに使われる”かわいた”であって、乾燥している”乾いた”ではないのがポイント。やっぱり満たされていないキスではダメなんだろうなと。
18thシングル『口笛』のカップリング曲であり、B面集『B-SIDE』に収録されている「Heavenly kiss」もそれなりに年月を重ねたカップルの話。前述の「幸せのカテゴリー」や「渇いたKiss」で見せる悲しみみたいなものではなくて、倦怠期を迎えたカップルであってももう少しポジティブに2人の関係を楽しんでいる。今でも”綺麗だ”と言えてしまったり、上手くいかないというほど上手くいっていない状態ではなくて、新鮮さとか情熱みたいなものがほとんどなくなった関係なだけだと。そんな状態で重ねるキスは価値がなくなっているのか?というと、そうでもなさそうでこれはこれで意味がある。キスで思い出す気持ちもあるし、少なくとも気持ちが萎えてしまってはいないんだなと確認できるといった具合だ。イントロやAメロこそギターが中心にアレンジされているけれど、そこからオルガンやホーン隊がしっかりと彩りと厚みを与えてくれる。もちろん、ギターも弾きすぎず、適度に刻んで場をわきまえて最適化された最小限の音を鳴らしているのがオシャレだ。
と、これだけ書いてきたのだが、今回紹介した曲だって別にミスチルの魅力の1面でしかないんだなと。 自分の思うシティポップはこういう感じで、あまりデジタルに寄りすぎず、アコースティックに落ちるでもなく、楽器は多めだけどやりすぎないバンドサウンドに色恋モノの歌詞が歌われている曲だ。だから、TSUTAYAでオススメされた最近のシティポップはちょっと違うなと思ったわけだ。
ずっといいなと思っている曲を、ある程度カテゴライズしてみるのはなかなか楽しかった。次回は「新三大 Mr.Childrenのアルバムの1曲だけど、ポップスど真ん中過ぎるバラード」でも書いてみようかな。
こちらからは以上です。
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