先日Mr.Bigのライブに行ってきた。良いライブで詳細は記事を読んでいただきたいのだい。
このライブを通して、旬を過ぎたアーティストの価値について思うところがあって、今回はそのあたりを書いてみたい。特に今回見たライブが残像でも十分カッコイイものだったので、その理由について考えてみた。
先のライブでオープニング曲が「Daddy,Brother,Lover,Little Boy(Electric Drill Song)」で、これがまた最高にカッコいいのなんのって、心臓バクバクしたんすよ。
でも、原曲と比べると半音下げだし、発表から25年経過しているし、本人たちも年をとっているし、何ならドラムが違う。それでもカッコイイのです。イントロのリズムを刻み始めて、ギターがリフに入ってピッキングハーモニクスを鳴らす。そして、コードが展開されていく。こんな決まりきったことなのにカッコイイ。よく恋愛でも「○○だから好き」より「××だけど好き」の方が好きのレベルが高いと言われているけど、これは音楽でも同じで、マイナスな要因があるにも関わらずカッコイイ。こりゃ、完全に酔っている。
何度も言っているミュージシャンの旬については、別記事にしてある。
Mr.Bigの旬はアルバムでいうと1996年の4thアルバム『Hey Man』の頃だったんじゃないかと思う。実際、1997年のライブ盤『LIVE AT BUDOKAN』の出来は控えめに言って最高だ。(本当のところは何故か武道館のライブ盤は名盤が多いのだけど、それは本件とはあまり関係ない)バンドどしてもアルバムを4枚発売しているので、オリジナルも重ねており、『Lean into It』、『Bump Ahead』とヒットを重ねている状態。正直、『Hey Man』はキャッチーさに欠けてブルージーでダークな曲も多く、やけに泥臭いハードロックになっている。これがMr.Bigの目指すところだったんじゃないかと思っている。Paul Gilbertが脱退して、Richie Kotzenが加入して制作された『Get Over It』でEricだったかBillyだったかが「これこそMr.Bigでやりたかった音楽だ!」なんてインタビューがあった記憶があり、このアルバムに一番近いのが『Hey Man』だから。
そんな旬だった時代はもう20年も前の話にも関わらず、ライブを重ねてきたお陰でその当時の曲はスーパーマリオのスターを取った時の無敵状態になるほど磨き上げられており、意識せずとも最高に彼らの味が出た状態で演奏されるのだ。これは売れた曲を持つミュージシャンの特権で、万国共通のミュージシャンの価値なんじゃないかなと。実際、この状態になってファンの反応が変わるのを目の当たりにした。件のライブで最新曲ではイスに座って前のめりがいいところなのに、後半の「Addicted To That Rush」でついに立ち上がり拳を振り上げたご婦人。他の曲も楽しむがとにかく「Colorado Bulldog」のヴァースの静かな個所で決めるギターのカッティングに合わせてガッツポーズを決める中年男性。全曲歌うが、「Green-Tinted Sixties Mind」のコーラスでハモることに命を懸けるお兄さん。と、こんな人たちは周りにいて、最高にキマった状態だったわけですよ。
そして、ここでもう一つ大事なことに気付いた。ライブでそんな姿で楽しむファンはきっと各々の頭の中で聴こえている楽曲が輝いているのだ。この輝きは人生の中で楽曲と共に生きてきて、ただの楽曲ではない個人的な経験が紐づいた楽曲になっているのだ。大事な想い出と紐づいた楽曲はとてつもない価値がある。その一つの例として、昔ライブで見たことなんてのもアリで、これがライブへの無限ループへのいざないだったりすんじゃないかなと。毎回ライブに足を運んでしまう理由の一つに十分なりうる。
と、ここまで書いてきたが、これが残像でも十分カッコイイ理由。ミュージシャンの無敵状態の楽曲に個人の想いが重なってボーナスステージも入ると、こんな風に最強の楽曲になるんだなと。
以前、大御所の新作について書いたこともあるけれど、結局挑戦といつも通りの割合のちょうどいいところを攻めて欲しいと思ったのだ。
残像でも十分にカッコイイは、最近のDeep Purpleを聴いても、ボンゾの息子と再結成したLed Zeppelinを聴いても起こる。実際、客観的に最高の演奏か?客観的に最高の楽曲か?と言われると怪しいのだけど、 主観として最高の点数をつけてしまう。粗探しをして見つけても、結局好きだからそんなに気にならない。残像でもカッコイイは「××だけど好き」のパターンでもあって、これは強い好きだから仕方ない。
残像でもカッコイイはキャリアを重ねてきたアーティストでしか成り立たない。Mr.Bigだって25年以上のキャリアがあるし、各々ソロ活動もしている。そういうステージにいるミュージシャンを近くで見られて幸せな時間だったなと今でも噛みしめている。たまに仕事をなんとかして、好きなアーティストのライブを見に行くのも悪くないもんだということだけ付け加えておく。
こちらからは以上です。
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