Jailbreak

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チャットモンチー完結に寄せて~LAST LOVE LETTER~

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2017年11月23日オフィシャルサイトでチャットモンチー完結のお知らせが発表された。
2005年にメジャーデビューし、13年後の2018年7月にその活動を終えることになる。

 

チャットモンチーを知ったのは確か、2006年の2ndシングル「恋愛スピリッツ」をラジオで聴いたのがきっかけだった。世界を劈くような橋本の歌声に、ヘヴィなサウンドだがシンプルなギターとベースとドラムだけの潔さと、少ないコードにも関わらず飽きさせない強い歌詞で一発で魅了された。

調べてみると徳島県出身の3ピースガールズバンドだと言うではないか。当時、発表して間もない1stアルバム『耳鳴り』とミニアルバム『chatmonchy has come』をとにかく聴きまくった。「恋愛スピリッツ」こそ潔い重心の低いロックだったが、他の楽曲はギター・ベース・ドラムを基本にしたシンプルな音数に見合わない多彩な音楽を鳴らしていた。もっとギターのオーバーダブを増やしてもいいんじゃないか?もっと色んな音を足してもいいんじゃないか?そう思ったのだが、きっと彼女たちの音楽は3人で各々のできることを最大限考えて、作り、アレンジすることなんだろうなと想像できた。なので、他のロックサウンドに比べると音が薄っぺらく感じたり、迫力がないときもあるのだが、他と合わせるのではなくあくまで自分たちのオリジナリティを追及する姿をその後の作品でも耳にすることになり、そしてチャットモンチーという閉じられた世界が後に彼女たちを苦しめたんじゃないかなと想像する。

2007年に発売された2ndアルバム『生命力』が個人的には一番好きなアルバムだ。「シャングリラ」、「女子たちに明日はない」、「とび魚のバタフライ/世界が終わる夜に」、「橙」というシングルの収録が多いのも良い点だが、それ以外の楽曲の出来の良さが前作『耳鳴り』と大きく変わらないのが大きなポイントだと思っている。『耳鳴り』の1曲目「東京ハチミツオーケストラ」が何ともよたよた歩きの行進だったのに対して、『生命力』の1曲目の「親知らず」が同じ行進でも足取りをしっかりさせつつ同じ純真の歌詞をぶつけてくる辺りでノックアウトされる。このアルバムの中で一番好きなのは「真夜中遊園地」なのだけど、この楽曲の疾走感と橋本のエモい歌が個人的にはハイライト。

もちろん、「シャングリラ」の4つ打ちのダンスビートや「とび魚のバタフライ」の南国感、「世界が終わる夜に」の歌詞の世界とサウンド的な重さと語ることがまだまだたくさんある作品でもある。しかし、『告白』、『Awa Come』、『YOU MORE』とアルバムが進んでいくにつれて、どうも心に刺さらない曲が多くなってきた。「風吹けば恋」や「Last Love Letter 」シングル曲は良いのだが、アルバム収録曲にいい曲が減った。個人的には「Last Love Letter」が最後の輝きだったんじゃないかと思っている。OKAMOTO'Sのベース、ハマ・オカモトが絶賛したベースラインから始まるこの楽曲はチャットモンチー史上3本の指に入るカッコよさでこれまたノックアウトされる。

 

その後ドラムの高橋久美子が脱退してしまうわけだが、ここで自分の思っているチャットモンチー像から大きく乖離していくことになる。多分、スリーピースバンドのバランスが崩れてその一角がなくなることで、一気に音楽として不安定になった。ギター、ベース、ドラムのいずれか2つしかない楽曲や、ギターをループさせて無理やりやり抜く楽曲であったり、音が足りないのを頑張って2人で補っていた時期だ。ドラムのサポートメンバーを入れてライブを行っていたりもしたが、やはり以前の3人の頃とは違った。「満月に吠えろ」、「きらきらひかれ」あたりのシングルはまだ以前の良さが残っていると感じていたが、アルバム5th『変身』になるとアルバム収録曲の良さが無くなってしまっていた。

この楽曲の良さが難しいところであり、歌詞の世界観は崩れてはいないのだが、アレンジの幅やメロディのキャッチーさ辺りが足りないのだ。何回か聴いても全然口ずさめる曲がないというのが正直な印象だった。ミュージシャンが長く活動を続けていくと、どんどん独自路線に進んでいってとても聴きづらい音楽ができあがることがある。それもオリジナリティなのだが、オリジナリティとポピュラリティのバランスが崩れていったのは否めない。そう考えると『告白』くらいまでのプロデューサーであるいしわたり淳治がいい仕事をしていた可能性が高い。だからと言って、以前と同じ作風を続けられるのは飽きる可能性があるわけで、大御所の新作に求めるものは何かという記事でも書いたが変化の割合が大きすぎる作品はなかなか受け入れづらいとは思う。

 

変化を続けていくチャットモンチーは橋本の入籍・出産後に活動を再開すると、恒岡章と下村亮介をサポートメンバーに迎えて男陣としたり、北野愛子と世武裕子を迎えて乙女団としたりと他のミュージシャンを表舞台に立たせた活動を始める。なかなかサポートメンバーを明確に打ち出すことをしないアーティストがいる一方で、このように名前を付けて打ち出すのはちょっとした企画となった。ただ、それでも作品の良さが発揮されることはなかった。その残念さを書くべく、レビューをしている。

どうも橋本・福岡だけの楽曲は色が足りないのと、橋本に作曲を任せる形をとっている関係上きっと橋本への負担が大きいからなんじゃないかと思っている。今までのアルバムの作品を見ても、橋本が作詞した作品より福岡と高橋が書いた作品が多かったのもある。

 

チャットモンチーの活動とは別で、橋本は ASIAN KUNG-FU GENERATION、POLYSICS、SUEMITSU&THE SUEMITHとの歌でのコラボや、シュノーケル「一筋縄」、高垣彩陽「私の時計」等作詞の提供を行っているし、福岡はアパレルブランド「STINGRAY」や、おおはた雄一とのユニット「くもゆき」への参加等各々での活動の幅を広げていることは知っていた。それがチャットモンチーの活動へ反映されて良い作品になれば良いなと思っていた時にチャットモンチー完結の知らせが入った。

理由もチャットモンチーの枠に収まらなくても良いからというものだし、別な活動が軌道に乗っているかは怪しいが、別な道があるのは確かだ。ここまで芸術家思考を持っているとは思わなかったが、きっとそういうことなんだろう。本当の理由は分からないが、バンドが解散する理由は様々で一時期その辺を書いてみたこともある。

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何となくなのだが、 チャットモンチーはまた活動を再開しそうな気がするし、部分的に復活(橋本・福岡・高橋の中に3人のうちの2人)なんてのもあるんじゃないかなと希望的観測を持ってしまう。コラボができて、フェスに出るようなアーティストなのだから、そう期待してしまうのだけど。

 

最近の活動や音楽がそんなに心揺さぶられることはなかったが、元々の活動や楽曲の良さがあったからこそ、個人的にずっとチェックし続けてきたアーティストである。2018年元旦にさらに発表があるとのことなので、その発表を待ちたいと思うが、まだまだ我々をワクワクさせてくれるんじゃないかと期待しているぞ!

 

こちらからは以上です。 

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