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吹奏楽コンクールでの楽譜改変と思ったこと

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何気なく夜にはてブを見ていたら、ちょっと気になるまとめがあった。

自分も15年以上前に吹奏楽部に所属していて、50人以下の部、地方の都道府県大会で金賞を取得したことがある。全国大会こそ行けなかったが、当時の周辺事情からコメントをした。

吹奏楽コンクールでの楽譜改変について - Togetter

コンクール以外の実績が認められないのが問題なのでは?/確かに作る側からすると残念なのは分かるが、演奏する側の論理もあるので、正しさのない正義の殺し合い。/著作権的に云々なら訴えて、前例を残してくれとしか

2019/06/01 23:51

まとめ自体が色々問題点・論点がとっ散らかっているので、整理しつつ、自分が書きたかったことをもう少し言葉を足して書きたい。

・吹奏楽コンクールの結果がキャリアになるので、結果が求められがち

・改変されたくない気持ちもわかるし、改変したくなる・する理由もわかる

・著作権の話はよく分からないが、問題があるというのであれば、立場を明確にしてほしい

 

まず、吹奏楽コンクールについて、またその取り巻く環境についての前提・自分が知っていることをまとめる。

吹奏楽コンクールや環境の前提

吹奏楽はクラシックに分類されていて、ポップスやジャズを演奏することもあるが、基本的にはクラシックを中心として演奏する。この、クラシックにかかわる部分がハイカルチャーであるが故に、形式やルールを重んじるという意味で面倒だなと感じる人もいる部分。 

吹奏楽コンクールは、日本最大のコンクールである全日本吹奏楽コンクール(以下、コンクール)を指す。吹奏楽の甲子園などと言われて、吹奏楽を志す者の目標になるもの。細かいルールは規定を見てもらうのがよい。

http://www.ajba.or.jp/kitei.competition.pdf

特に今回話題に上がっているのは、A編成と呼ばれる一番大きな編成で、全国大会があり、課題曲+自由曲で12分と決められているところ。

他のコンクールとしては、マーチングバンド用のマーチングコンテストや、小編成のアンサンブルコンクール、ソロで演奏するソロコンクール等もあって一部触れるが、今回の対象と関係はあるが、メインではない。 

吹奏楽からのキャリアを積み上げようとすると、コンクールで良い結果を出す団体にいるのが重要となる。また、そういう団体はしっかりとした指導をするので、個人の能力も高いことが多い。

そこから音楽家としてのキャリアを積もうとすると、ソロコンで結果を出すと箔がつくし、プロの世界でも海外の〇〇コンクール×位とか■■コンクール優勝みたいなものがプロフィールについて回る。クラシックは権威主義的なところが少なからずあるので、結果を出すことが大事だ。

コンクールで結果を出すことが、学校の評判となるため、公立私立を問わず結果を出せるものに入れることになる。また、一般の団体であればよい団員を集めることになるし、企業であればその売りになることもある。こういう仕組みがあるのも確か。

思ったこと

件のまとめで論点が定まっていないので、  自分の前提をベースとして、思ったこと。

多分、下記のポイントを両立できないといけない

・課題曲+自由曲が12分と決まってて、制限時間を超えると失格になる

・作曲者の没後50年は著作権があるので、変更をする場合、必要に応じて許可を取る必要がある(吹奏楽コンクールの規約にあり)

・楽器の構成上、用意できない楽器の代替アレンジが必要なことがある

・少しでも上の結果を出したい、上の大会に出場したい

楽曲改変

何をもって改変かだが、2つあるように思う。

1つはアレンジを変えること

例えば、元々オーボエでソロを行うアレンジだったが、オーボエがいないためサックスに変更等は楽曲を演奏する上では必要なことがある。これが許されないと、その楽曲を演奏するために必要な楽器がすべて揃っていないといけないことになる。

他には盛り上げるために、本来ない楽器を追加して、物理的な音量を増すことみたいなアレンジもある。編曲も含めて楽曲の一部だとなると、最初の例のように、結局その曲を演奏できなくなる。

いずれの例でも、演奏する人や楽器が揃わないと演奏できないことになってしまう問題があると思う。ここは許してほしいところ。コンクールで勝てる楽曲が吹奏楽向けの楽曲ばかりではなく、本来オーケストラアレンジしているものを、吹奏楽向けにアレンジしなおすこともあるので、なかなか難しい問題でもある。

もう一つの改変は、楽曲の一部をカットすること

経験として、本来の曲から部分的にカットした曲を演奏したことがあるし、それ自体の問題を指摘しているツイートもあった。著作権的な問題は後述するが、何故楽曲をカットする必要があるかと言えば、制限時間内に演奏を終わらせないと、失格となってしまい評価の対象外になってしまうから。コンクールに出る以上、結果が欲しいのが常で、どんなにいい演奏ができても評価されないと、今までやってきたことの意味を問うてしまう。

評価を得るために、楽曲の美味しいところだけを演奏したくなるのは、必然であると思う。楽曲は連続したフレーズや型の繰り返しなので、ある程度繰り返しをカットしたり、不要な楽章をカットしても成立させることは可能。前述のとおり、コンクールで演奏する曲は、コンクール向けの曲ではないことが多い。それは、楽曲の長さもコンクール向けに丁度良い長さの楽曲がないことも意味している。 

では、コンクールの制限時間を無制限にするのが良いかというと、それは現実的ではない。日程が事前に決められ、その中で審査・発表まで行うため、制限時間がなくなることはあり得ない。また、審査員もプロが行うことが通例だが、1日中音楽を聴いて審査をするのは精神的にも肉体的にも大変なことは想像に難くない。その意味で、時間制限は必要だと考える。

著作権

著作権については、全日本吹奏楽コンクール実施規定の全日本吹奏楽コンクール実施規定・審査内規に下記のように記載がある。

第14条 著作権の存在する楽曲を編曲して演奏する場合は、事前に著作権者からの編曲の許諾を受けなければならない。この許諾を受けないで本大会に出場することは認めない。
(注)1)作曲者の死後およそ50年を経ていない大半の作品には、著作権が存在する。
   2)編曲の許諾は、日本音楽著作権協会ではなく、著作権者(作曲者またはその楽譜の出版社など)が行っている。

これに則っていないのであれば、それは別な問題。しかし、ここで述べられている編曲が前述のどちらのパターンなのかが分からない。どちらにしても、許諾を取らずにアレンジしてしまうのは、指摘を受けても仕方がない。

上記のような規定があるので、結局演奏される曲は著作権が切れたものとなり、1900年代前半までの楽曲になることが多い。 

あとは、曲を作った人自身が色んなアレンジを用意してくれたり、コンクールサイズにしてくれるものも多少なりとも存在する。課題曲なんかにはそういう考慮がされていることがある。ただし、圧倒的に対象となる曲は少ないはず。(統計等はとっていないので、感覚)

最後に

コンクールで入賞することを目的とすると、編曲を変えることや曲をカットすることは必要となる。しかし、著作権が切れていない曲に関しては、許諾が必要ということになる。

曲をカットしたりするのに違和感を感じないのは、たしかにこういうコンクールへの手法に慣れてしまっているということかもしれない。これの良し悪しはあって、元々作った人の意図を理解して音楽を楽しむということを無視するのが良くないという考え方もあるだろう。これを弊害という指摘はあると思う。 

個人的には、楽譜に落とし込んだ時点で作曲者や編曲者の仕事は終わりで、そこから先は演奏する人のものだと思っている。もちろん、作者の意図は大事にしなきゃいけないとは思うが、演奏くらい好きにさせてくれと思う。

こちらからは以上です。

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