アジカンが2016年1発目にシングルをリリースした。
そのタイトルが、「Right Now」
この曲に発売にあたって、Vo/Gtの後藤正文が以下のコメントを発表している。
映画の主題歌というのは、映画のために作られながら、どこか映画の外部のような性質があるので、作っている側としては、ときどき寂しさを感じます。行定監督と夏帆さんにグッと映画『ピンクとグレー』との距離を縮めていただいて、とても嬉しかったです。「Right now」のミュージックビデオを、映画のスピンアウト作品のように楽しんでいただけたら幸いです。公式HPより引用
映画「ピンクとグレー」の主題歌としての発言。
アジカンの主題歌がどのように映画に絡んでくるのかは映画館で楽しんでいただきたい。
それにしても、この「Right Now」は個人的に久々にビビっと来る強さを持っている曲だった。
その理由を掘り下げていく。
へヴィなサウンドとアジカンらしいギターアンサンブル
イントロから勢いのあるギターのリフから始まり、もう1本のギターとベース・ドラムが入ってくる。
アジカンが元々持っているロックの初期衝動がそこにある。
この曲のキーはDメジャーなのだが、このDメジャーというキーはロックの初期衝動を表すには最適なキーの1つである。
ロックの初期衝動については別途解説するが、勢いに任せて解放弦を使ってギターをかき鳴らした時に生まれるのがその1つだ。
そして、Dメジャーは解放弦を使うことができるキーである。
例えば、同じように解放弦のDを使ってロックの初期衝動を感じさせてくれるのはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「世界の終わり」である。
[LIVE] THEE MICHELLE GUN ELEPHANT - 世界の終わり
この曲は特にライブ音源だと最高にカッコいい。
この曲と同じ匂いがする。
このリフに絡むのがアジカンお得意のオクターブ奏法でのオーバーダブ。
左のギターはそのままの音程だが、右のギターは5度上を重ねているのだ。
アジカンは初期の頃からオクターブ奏法を使ったリフを多用している。この辺りはアジカンらしさが出ていて非常に良い。
今回サウンドとして感じたことがもう一つ。
やけにへヴィなのだ。
それはベースが太い音で低音を支えているからである。もしかしたら、今までの曲よりもレベルが大きめにミックスされているせいかもしれない。
このサウンドはギターとベースが上手く補い合ってへヴィな音作りになっている。
ベースはあまり大きな動きは見せずほぼルート弾きなのだが、それがしっかりとボトムを支えることになっていて、非常にへヴィさを押し出してくれている。
ロックの初期衝動の荒々しさと綿密に作りこまれたへヴィなサウンドで始まるこの楽曲が名曲にならないはずはない。
また、歌詞はいつものゴッチ節で抽象度の高いものとなっている。
後藤は「生きるほうに向かって映画を終わらせたかった」と。
元々「ピンクとグレー」の主題歌としておさえるところはおさえている。
そして、歌詞の中にはピンクとグレーが顔を出す。
楽曲全体の構成はシンプルなヴァース/コーラスかと思わせて後半に展開がある。
これは意図的に組み込んだものである。
2回目のコーラスから一度リズム隊が引き、静かなブリッジへと続いていく。
ブリッジは最後の見せ場である大サビに向かっていく。
この大サビはとにかく「さあ、」と語りかけて前へ前へと進める掛け声となっている。
その力強さは前半の疾走感とはまた違うものである。
同じ曲の中で2つの面があり、前半の疾走感と後半の力強さが歌詞もリンクしており、楽曲の構成も映画とリンクするのだから主題歌としては狙い通りなのだろう。
アルバム「Wonder Future」からの流れ
前作 「Wonder Future」はFoo FightersのプライベートスタジオStudio 606でレコーディングされた。
その狙いはオーセンティックなサウンドでラウドさを追求することだった。
そして、そのサウンドイメージはFoo Figntersを連想させたのだ。
それ以前にはデビュー10周年ライブのために作った「スローダウン」「ローリングストーン」という曲で4人で演奏できる曲を目指した。
この辺から4人でのストレートなロックサウンドに向かっていくことになる。
リズムは王道8ビートへの挑戦となった。
3rdアルバムの「ファンクラブ」の頃は8ビートが禁止だったが、このアルバムでは8ビートを軸にしている。
そんなラウドなサウンドと8ビートの流れを汲んでいるシングルであることは間違いない。
しかし、前述している映画の主題歌の面がアジカンを次のステージへと導いてくれている。
PVが豪華
PVは「ピンクとグレー」の監督である行定勲が監督を務めている。
その主役は女優の夏帆だ。
行定監督が依頼してアジカンが作成した「Right Now」に対して、アジカンからのオファーで行定監督がPVを作成する。
ブリッジ部分から後藤が出演している。
そして、夏帆とロシアンルーレットを行う。
Short Ver.ではここで終わってしまう。
エンディングの大サビは聴こえてこない。
この狙いは分からないが、生への執着とロシアンルーレットに乗ってしまった結果、命を失ったことを表現しているのではないだろうか。
まんまと後藤の意図通りになってしまった形である。
同時発売のPV集
「Right Now」のリリースと同時に「映像作品集11巻」も発表されている。
内容は以下の通り。
1.All right part2
2.マーチングバンド
3.踵で愛を打ち鳴らせ
4.夜を越えて
5.それでは、また明日
6.バイシクルレース
7.今を生きて
8.Loser
9.ローリングストーン
10.スタンダード
11.Easter / 復活祭
12.Planet of the Apes / 猿の惑星
13.Opera Glasses / オペラグラス
MUSIC CLIPメイキング集
1.All right part2
2.踵で愛を打ち鳴らせ
3.それでは、また明日
4.今を生きて
5.Planet of the Apes / 猿の惑星
6.Opera Glasses / オペラグラス
7.ローリングストーン(long ver.)
アルバム「ランドマーク」以降の映像作品集となっており、メイキング集も含めて98分のボリュームとなっている。
PVの監督は以下の通り。
関和亮 -1.All right part2、3.踵で愛を打ち鳴らせ
鎌谷聡次郎 - 2.マーチングバンド
フカツマサカズ -4.夜を超えて
番場秀一 - 6.バイシクルレース
沖田修一 - 7.今を生きて
鶴岡雅浩 - 8.Loser
山岸聖太 - 9.ローリングストーン
大喜多正毅 - 10.スタンダード、11.Easter / 復活祭、13.Opera Glasses / オペラグラス
飯塚健 - 12.Planet of the Apes / 猿の惑星
2016年も盛りだくさんの予定
①2016年3月16日 シングル「Re:Re:」リリース
②2016年3月16日 Blu-ray&DVD「映像作品集12巻 〜Tour2015 「Wonder Future」〜」リリース
③2016年秋、アルバム「ソルファ」リリース
大きなポイントはアルバム「ソルファ」のリレコーディングである。
アルバム「ソルファ」には3rdシングル、「サイレン」、4thシングル「ループ&ループ」、5thシングル「リライト」、6thシングル「君の街まで」が収録されている。
これはアジカンの初期の名曲が並んでおり、「Re:Re」はアルバムの1曲ながらライブでの人気がある。
その証拠にアルバム「フィードバックファイル」にライヴバージョンが収録されるほどだ。
ライブバージョンでのリレコーディングは行われている。
初のライブアルバム「ザ・レコーディング at NHK CR-509 Studio」では「リライト」の中間部分が長くなって各楽器のソロが含まれるアレンジとなっていた。
しかし、他の楽曲についてはほぼそのままのアレンジであった。
リレコーディングがただの再録音なのか、アレンジが加わるのかは不明だが、その仕上りを非常に楽しみにしたい。
最後に
「Right Now」は2016年に入って初めて衝撃を受けた作品だった。
これはただただカッコいい。
シングルに収録されているライブ盤の3曲もライブの生々しさがあって非常に良いので、一緒にチェックしていただきたい。
アルバム「ソルファ」のリレコーディングは本当に楽しみで待ちきれない。
2016年のASIAN KUNG-FU GENERATIONの活動から目が離せない。
こちらからは以上です。
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