2017/02/03 歌詞について一部修正
いつから音楽にへヴィさを求めるようになったんだろう?
自分が意識的に音楽を聴きだした90年代のJ-POPはアメリカからのハードロックの影響で、既にCDの最大音量を意識したボリュームになっていた。
ギターだってラインで録音するようになってきていて、その音域を余すところなく録音できるようになりつつあった。
それに洋楽アーティスト(主にロックとかメタル)のインタビューで新作のコメントをでは「最高にへヴィでカッコいいアルバムに仕上がっているぜ!」なんて言う。
そんなに毎度毎度へヴィな作品ばかりだとは思えないが、当然のようにへヴィという言葉が躍る。
それはそれで構わないのだが、このへヴィさって何なのかを考えていきたい。
Black SabbathとZakk Wylde
自分がへヴィな音楽に出会ったのは、中学生になってOzzy Osbourneの『The Ozzman Cometh』というアルバムを購入したのがきっかけ。
Ozzyがメタルの帝王と呼ばれていて、丁度来日公演があってそのライブレポートを読んだのがきっかけだった。
『The Ozzman Cometh』にはBlack Sabbath時代の楽曲からRandy Rhoads・Jake E. Lee・Zakk Wyldeとその時代を彩ったギタリストとともに、代名詞となる楽曲が衆力されていて、Black Sabbathの「War Pigs」のへヴィさに驚いた。
重苦しいビートと歪んで尖りまくったギターは今まで体験したことのない音楽体験を与えてくれた。
イントロからテンポが早くなっても、なお重たいビートと気だるさ。
今聴いても本当にカッコいいと思う。
『The Ozzman Cometh』の中でも新しいサウンドを効かせていたのがZakk Wyldeで、丁度自前のバンドのBlack Label Societyが1stアルバム『Sonic Brew』を発売したのもあり飛びついたら、これは物理的に重たいサウンドのアルバムだった。
元々Zakkはギターのチューニングが半音下げで物理的に低い音を出せる。
そこにさらに6弦を4音下げにして、5弦の解放弦の音とオクターブ状態でこの曲のリフを弾いている。
これは、ベースの音域で若干地鳴りがするレベル。
ベースも4弦をそこまで下げているかは不明だが、とにかくギターがへヴィな作品。
さらに言えば2ndアルバムの『Stronger Than Death』では6弦を5音下げにするという暴挙に出ており、弦の太さもベースの弦と同じものを使っていたりする。
ここからメタル漬けになるのだが、物理的な重さやリズムに重さを意識したのはこの頃からだった。
何より低音は音楽に迫力と安定感をもたらす。
ギターだけで言うとメタルのサウンドは必ずしもヘヴィじゃない
2000年代に入るころには7弦ギターや5弦ベースが一般にもお手頃な価格で売り出されて、ミクスチャーバンドが流行ったのもあり重低音のロックを耳にすることが増えた。
Limp Bizkit、KoЯn、POD、Linkin Parkとラップメタルなんて呼ばれるバンドが流行ったのだ。
この辺のバンドはギターは7弦だが、案外低音はカリカリでベースと住み分けができていることが多く、低音はちゃんとベースとバスドラが支えている。
ただ、もう音というより地鳴りみたいなベースになっているので、再生する機器によっては全然聴こえてこないこともある。
2000年代にへヴィ志向となったメタルの4羽鴉の一翼であるMettalicaの『St. Anger』 を聴いてみても同じだ.。
イントロのギターは若干歪みを抑えてミュート気味に弾いているが、実際のサウンドもそれほどゴリゴリに低音を出しているわけではない。
ギターのダウンチューニングは今では常套手段となっているが、バンド全体のサウンドで考えるとそれほど大きな影響はないのかもしれない。
それよりも、ベースとともに全体のへヴィさを狙ったミックスとなるので、無駄な低音域は出さない方がへヴィになるという逆説的な結果につながるのを知っておいて損はない。
ヘヴィなリズム・重たいリズム
Black Sabbathのへヴィさはサウンドそのものもあるが、重たいリズムがへヴィさを演出している。
かなりスローなテンポである時の気だるさであり、テンポが早くなっても何だかリズムが重たいのだ。
これが何だか考えてみるとNirvana時代のDave Grohlのドラムが同じなんじゃないかと思えてきて。
Daveのドラムはパワフルで重たい。
テンポが早くても重たい。
名盤『NEVERMIND』の「Breed」はハイテンポだが、ドラムはとにかく重たい。
これくらいのテンポになると、リズムが突っ込み気味になってビートが軽くなりがちなのだが、Daveのドラムは突っ込まない。
もちろん、タイコのチューニングが低く物理的な音の重さもあるのだけど、それだけではない。
ドラムの重たいリズムは8ビートで考えると、バスドラとスネアの(時間的な)距離で決まる。
そして、ビートの重さはジャストよりもモタり気味だと重く感じる。
Daveのドラムはモタり気味なのもあるのだが、何よりバスドラとスネアの距離が長いのだ。
ドラマーはドラムを叩いている時に無意識に自分の体から出るリズムがあるのだが、これがジャストより早めで突っ込んでいる人やDaveのようにモタり気味の人がいて、こればかりは個性の範囲になってしまう。
もちろん、意識をして前ノリや後ノリを出すことはあれど、無意識に出る重いリズムは体に馴染んでいるだけに自然にカッコいいことが多い。
もちろん、Black SabbathのBill Wardも同じように低めのチューニングで重いビートを叩いているから同じように感じたのだ。
メタルドラマーは割と重めのビートを刻むことが多いのだけど、メロコア系のバンドのドラムはビートが軽いことが多いと感じている。
これはジャンルの特性もあり、何でもかんでも重いビートを叩けばいいというもんでもなく、合う・合わないとか好き・嫌いの範疇になってくる。
ヘヴィな歌詞と世界観
別にへヴィな音楽はサウンドの物理的な重さや、リズムの重さだけではないなとも思う。
音楽には歌の世界があり、歌の世界観が重たい曲はある。
例えば、中村中の「友達の詩」なんかはこれに該当するんじゃないかと。
中村中は性同一性障害で、戸籍上男性だけれど自分の持っている性は女性。
「友達の詩」は中村が15歳の時に初めて組んだバンドのメンバーへの片思いを書いた曲で、悲しい結末が待っている歌。
サビの歌詞が印象的で、想像するだけでとても重たい言葉。
テーマがへヴィといったところだろうか。
他にもフラワーカンパニーズの「深夜高速」なんかもへヴィな空気を持っていて。
何ともいえない全体に漂う闇の雰囲気と、言葉の荒々しさがとにかくへヴィなのだ。
サウンドで言えば、物理的な重さはなくてリズムも重たくない。
クリーンな「静」と歪んだギターが炸裂する「動」があるのはよくある手法で、楽曲のメリハリをつけるためには必要なことで、飽きさせないためにも大切なこと。
それにしても、強い言葉のAメロの後のサビがこの曲を貫いている。
生きててよかった そんな夜を探してる~フラワーカンパーニーズ「深夜高速」より~
強い言葉は心の叫びで、そんな感情を抱えているだけでへヴィだ。
どこか負のオーラを纏う曲はへヴィな内容の楽曲になりがちだ。
こんな曲を精神的にオカシクなりそうな時に聴いてはいけない。
この辺は別記事でも書いている。
へヴィなサウンドは実はシンセがエグい
いかんせん元ギター小僧なのと、ロックが大好きなのもあって、ギターロックやメタルを中心にへヴィなサウンドを求めてきがちだった。
だけど、ある時、テレビから流れてきたへヴィな音にびっくりした。
それはWalk The Moonの「Up 2 U」だった。
この曲の1:01~のリフを是非とも聴いていただきたい。
ギターとベースがユニゾンをしているのはもちろん、その隙間がなくなるくらいの音域でシンセが鳴っているのだ。
シンセがこんなにへヴィだったなんて盲点だった。
最近の流行りであるEDMでもこういう図太い音のシンセは入っていて、それがサウンド全体の音圧を上げている。
やっぱり、へヴィだと音圧が上がるから派手に聴こえる。
ど派手なEDMにもメインのリフを聴かせるにはちょうどいい音色なわけだ。
そういえば、 最近カッコイイリフを探してYoutubeを漁っていたら、The Edgar Winter Groupの「Frankenstein」に出会った。
この曲自体は1972年のものだけれど、かなりエグイ音色で超へヴィなシンセを弾いている。
全体的に音の分離はよくてカリカリのサウンドなのだけど、70年代でこれはかなりへヴィなサウンドじゃないだろうか。
そういえば、Deep PurpleのJon Lordもオルガンを歪ませて、ギターに負けない図太い音を出してたっけ。
ロック小僧の自分にとってはシンセのへヴィさはちょっと革命的だった。
最後に
音楽に関わるへヴィさを考えてみたのだけど、サウンドやリズムに歌詞の世界観と色々な観点でへヴィさは存在する。
サウンドは分かりやすいけれど、楽曲全体のミックスにもよるので単純に一つの楽器だけでへヴィさを出すもんじゃない。
リズムの重さはその人の持ち味ではあるけれど、何でもかんでも重いリズムであればいいってもんでもない。ロックでは割と重いリズムは好かれる傾向はあるけど。
歌詞の重さは精神的にやられる可能性があるので、いつもどんな時でも聴ける音楽じゃないのが痛いところ。なので、最適な時に聴いてほしい。
へヴィな音楽はカッコいいけど、消耗する。
スポーツの疲れみたいに気持ちよい消耗の仕方ばかりではないので要注意だ。
でも、適度に聴く分にはいい刺激になる。
こちらからは以上です。
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