Jailbreak

新しい世界の切り取り方

「オススメのMr.Childrenのオリジナルアルバムを教えて」と言われたら

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自他ともに認める音楽バカの自分だが、飲み会で音楽に関するよく無茶な質問をされる。
 
「好きなバンドは?」
→いっぱいありすぎて答えきれないし、万が一知っていたとして話広がる?
 
「ドラムやってると分かると思うけど、やっぱりYoshikiはスゲーの?」
→ドラム=YOSHIKIはやめましょう。バカ丸出し。

 

たまにイラっとするものもあるのも確か。

全く答える気にならない質問がある一方、しっかりと答えたら何か変わるかもと思う時があり、その1つにミスチルのアルバム問題がある。

 

ミスチルは活動が長く、現時点で国内発売分のベスト盤4枚とB面集・ライブ盤を除く、オリジナルアルバムは1992年の「Everything」から2015年の「REFLECTION」まで16枚に及ぶ。

この中から良いと思える曲・アルバムに出会える確率を上げたいとなると、知っている人に訊いてみるのは良い方法だ。

 
「オススメのMr.Childrenのオリジナルアルバムを教えて」 
最近、友人にされた質問でもあり、そこそこ考えて答えてみたので書いてみようと思う。
 

どんなアルバムイメージが好きか選ぶ

 
ミスチルはアルバムごとに変化していて、それぞれのアルバムに個性がある。
そこで、どのアルバムを聴くかの判断基準としてアルバムのイメージを自分なりに表してみた。
どれもいい曲が入っているし、シングル曲も含まれている。
あとは相性の問題。
 
以下の中から気になるアルバムを聴いてみると良い。
①一番売れたアルバム
②暗闇に射す一筋の光のようなアルバム
③生活がそこにあるアルバム
④とにかく青臭いアルバム
⑤一つながりになっているアルバム
⑥色とりどりでキレイだけど裏切られるアルバム
⑦一番ポップなアルバム
⑧ロックしているアルバム
⑨心に刺さる攻撃的なアルバム
番外編:ミスチルを好きになりたいならおススメしないアルバム
 

①一番売れたアルバム

Atomic Heart

一番売れたアルバムは累計343.0万枚を記録している4thアルバムの「Atomic Heart」だ。
2000年代になってCDが売れなくなっているので全てのアルバムを売り上げ枚数だけで単純比較するのはフェアではないのだが、それでも300万枚を超えることは本当にスゴイことだ。
 
このアルバムは193.6万枚を売り上げた5thシングル「innocent world」、125.6万枚を売り上げた4thシングル「CROSS ROAD」が収録されていて、この2つの曲がこのアルバムの大きな柱となっている。
 
オープニングのインスト「Printing」から始まり、ライブの定番「Dance Dance Dance」、「ラヴ コネクション」とアップテンポな曲が続く。 
この2曲を知っているとライブ参戦時に楽しめる可能性が高くなる。 
 
5曲目の「クラスメイト」、10曲目の「雨のち晴れ」、12曲目の「Over」はミスチルの真骨頂ステキなアルバムの1曲として自分の周りのミスチル好きの中でよく名前が挙がる。
具体的な人間関係がイメージできる歌詞であったり、キャッチーさがあってJ-POPが好きなら是非とも聴いてほしい楽曲。
 
7曲目「ジェラシー」、8曲目「Asia (エイジア) 」、11曲目の「Round About 〜孤独の肖像〜 」はミスチルの中でも珍しいオリエンタルでノスタルジックな雰囲気のある曲。
打って変わって抽象的な概念を歌っているのだが、こういうアルバムの流れと曲順を楽しむ曲があるのもミスチルのアルバムの楽しみ方。
 
「Atomic Heart」はアルバム全体のバランスが良く、1曲1曲で聴く・アルバムを通して聴くのにも適している。
やはり売れるアルバムには売れるだけの理由があるのだ。
 

②暗闇に射す一筋の光のようなアルバム

DISCOVERY

 暗闇に射す一筋の光のようなアルバムは7thアルバムの「DISCOVERY」である。
 このキーワードだけだと「REFLECTION」を想像してしまいがちだが、「REFLECTION」の世界観は暗闇に射す一筋の光ではないので今回は対象外。
 
 「DISCOVERY」は活動休止を挟んで発表されたアルバム。
 活動休止中は解散説や悪い噂があったが、見事に復活を遂げてくれた。
 アルバム自体はアルバムジャケットの様に暗い曲もあるのだが、その暗い曲でもギターは常に一筋の光を指してくれる。
 
例えば、1曲目の「DISCOVERY」のイントロや3曲目の「Prism」のイントロは暗闇の中で光り輝いて落ちていく桜の花びらの様な儚い光を放っている。
2曲目の「光の射す方へ」の2回目のサビ~3回目のサビにかけてのブリッジでのギターも同様である。
 
その一方で、漆黒の闇に位置する5曲目の「ニシエヒガシエ」や8曲目の「#2601」があることで、またさらにその光の価値が上がる。
 
そんな中でも6曲目の「Simple」や9曲目の「ラララ」に見えるアコースティックな温かさが肩の力を抜いてくれる。
 
そして、7曲目の「I'll be」や10曲目の「終わりなき旅」で見せる一筋の光を目指して進んでいく力を与えてくれる曲。
特にこの2曲は辛い状況において、力を与えてくれる曲であることは間違いない。
 
儚い光の1曲目「DISCOVERY」に始まり、11曲目の「Image」で壮大に楽曲が進んでいくまでの間にドラマがある。
それがこのアルバムである。
 

③生活がそこにあるアルバム

HOME(通常盤)

生活がそこにあるアルバムは13thアルバム「HOME」である。
それもそのはず、「あえて言うまでもない、日常の言葉、言動、景色等を大切に」がテーマのアルバムである。 
それだけに日常のいろんなシーンを描いてくれている。
 
アルバムの核となっている3曲目の「彩り」はまさに日常を描いていて、そこを彩る色々なことを上手くとらえている。

仕事で忘れていけないは、自分がした仕事がその先の誰かの笑顔につながっているということ。

そういうメッセージが入っているこの曲は個人的に大好きである。

 
同様に14曲目の「あんまり覚えてないや」の日常が見える雰囲気もこのアルバムらしさがあり、幸せな日常を描いてくれている。
 
とはいえ、日常はいつも幸せなわけではない。
5曲目の「Another Story」で描く2人の関係はちょっとこじれていたり、7曲目の「もっと」で描く悲しみの中の心の持ち方だったり、9曲目の「フェイク」で描かれる嘘と真実のことだって日常にはあること。
そういうマイナスな面もひっくるめて日常なのだ。
 
4曲目の「箒星」のミスチルには珍しいフレッシュさがイレギュラーに思えたり、熱く歌い上げる12曲目の「しるし」が普段見えないこともちゃんと見ておくことが大事なんだと思わせてくれたり、日常にはまだまだ色んなことが転がっていそうだと思わせてくれる。
 
日常は良くも悪くも日常で、その中に新しい発見や忘れがちなことがあることを思い出させ、もっと日常を大事にできるようになるかもしれないアルバムだ。
 

④とにかく青臭いアルバム

Kind of Love

とにかく青臭いアルバムは2ndアルバムの「Kind of Love」である。
アルバムのタイトルからして青臭くて、「いろんな愛」とか「愛のようなもの」なんて意味だから困ったものだ。
 
曲のタイトルからして青臭さ満載。
7曲目の「車の中で隠れてキスをしよう」は甘酸っぱい恋愛を描いていて、こんなことがあったらそれと重なるし経験が無くても想像で埋められるくらいの内容だったり。
そういう妄想をしていた時期と重なるだろう。
8曲目の「思春期の夏 ~君との恋が今も牧場に~」はドラムのJENが歌っていて、全然ミスチルっぽくないカントリーソング。これも甘酸っぱい恋の歌。
 
そして、5曲目の「グッバイ・マイ・グルーミーデイズ」の片思い感と10曲目の「ティーンエイジ・ドリーム (I~II)」で描く学校の風景だったり、中二病感だったり、11曲目の「いつの日にか二人で」の年上への想いを描くあたりで青臭さMAXである。
 
このアルバムは青臭さだけではない。
しっかりと恋愛を描いた3曲目の「BLUE」や4曲目の「抱きしめたい」、6曲目の「Distance」は2人の関係性であったりその風景が思い浮かぶ作品だ。
 大人な楽曲という意味では2曲目の「All by myself」もある。
 
アルバムのもう一つのテーマ、空の楽曲2曲。
1曲目は「虹の彼方へ」は疾走感溢れる曲で、虹をテーマにキラキラとした若さを描いている。
9曲目の「星になれたら」はミスチル好きの中では卒業ソング・お別れソングの定番。
多少青臭いがアルバムの骨格になっている。
 
桜井さんの声が若いのもあって、青臭さ満載なのだがその青臭さは成長していく過程で通っている可能性があって懐かしく思えるもの。 
忘れていたあの頃の気持ちを取り戻すには最適なアルバムだ。
 

⑤一つながりになっているアルバム

深海

 一つながりになっているアルバムは5thアルバムの「深海」だ。
 アルバム全体がつながっており、曲間がなく次の曲に入ったり、前の曲の最後と次の曲の始まりが交差したりと便宜上のトラック分けはされているだけである。
 
ミスチルのアルバムの聴き方として重要なのはちゃんと1枚のアルバムとして聴くこと。そして、その曲順や流れを楽しむこと。
これができると1曲1曲の素晴らしさが分かるだけでなく、アルバムの良さが分かって作品をもう一段界深く楽しむことができるのだ。
 
このアルバムの前半戦は7曲目「名もなき詩」までである。
1曲目の「Dive」の前フリから2曲目の「シーラカンス」でいきなり深海の静と動を見せつけ、3曲目の「手紙」で回想に入る。
その想いを引き継ぎつつ、より現実的なストーリー仕立ての4曲目「ありふれた Love Story 〜男女問題はいつも面倒だ〜」に進み、より関係性を明確に描いた5曲目「Mirror」から「名もなき詩」への前フリ6曲目の「Making songs」があって、7曲目「名もなき詩」でより生きることへ向かい合っていく。
 
後半戦は長渕剛風の8曲目「So Let's Get Truth」で社会風刺を始め、9曲目の「臨時ニュース」で冷めることなく風刺は続き、10曲目の「マシンガンをぶっ放せ」で社会風刺はMAXとなり、怒りに満ち溢れてしまう。
そこに続くのが約9分ある11曲目「ゆりかごのある丘から」が壮大に世界を広げてくれて、飛び立つヘリコプターの音から12曲目の「虜」でゴスペル的な壮大さに変化していく。
そして、もう少し落ち着いて「花 -Mémento-Mori-」で生きること・死ぬことを再確認し、14曲目の「深海」へ沈んでいく。

 
ニューヨークでレコーディングされた本作はミスチルの中でもサウンドが枯れていて、古臭く感じるのだけどそれがまたマッチしている。
とにかく最新のデジタル化した音だけを追いかけたのでは、こうはならなかったはずだ。
 
 
こんな流れを知ることだって、アルバムを通して聴くからこそできること。
それが退屈でなく山あり谷ありなアルバムが「深海」である。 
 

⑥色とりどりでキレイだけど裏切られるアルバム

SUPERMARKET FANTASY [通常盤]

色とりどりでキレイなアルバムは15thアルバム「SUPERMARKET FANTASY」だ。
アルバムジャケットのイメージはそのアルバムのイメージを大きく印象付ける要素。
ミスチルの中でも一番色を使ってるんじゃないかというくらいカラフルなのだ。
 
このアルバムはアルバム全体のつながりを楽しむというよりは、1曲1曲の粒立ちの良さを楽しむ方が適している。
それは1曲1曲に色がついていて、色とりどりのキャンディを透明なガラスの瓶から選ぶような感覚。
そうやって選んだキャンディを安心して口に運ぶと思ってもいない味が出てきてビックリする。
つまり、曲のタイトルから勝手に曲を想像して聴いてみると、思ってたのと違う!?となる曲が多いこと。
 
1曲目の「終末のコンフィデンスソング」から裏切られる。
1曲目はアルバムの始まりを決める大事な曲だけれど、アコースティックなアットホームな雰囲気。今までも静かに始まることはあったが、こんな中盤~ラストに置くようなアルバムの1曲目に置いたことに驚くかもしれない。
2曲目の「HANABI」から6曲目の「旅立ちの歌」まではこのアルバムの中でも光り輝く曲ばかり。タイアップも多かったため、耳にしたことがある曲が多い可能性が高い。
 
7曲目の「口がすべって」は「終末のコンフィデンスソング」同様アットホームな雰囲気で進むのかと思いきや、最後にはど派手にオーケストラが入っちゃう。
8曲目の「水上バス」はどう裏切るの?と思うと、全然何も裏切らない。とてもストレートな曲で、肩肘張った姿勢を恥じる。そして、歌詞がすっと入ってくるのだ。
 
9曲目「東京」や10曲目「ロックンロール」あたりでタイトルからダークサイドに落としてくれるのかと思いきや、サラっと歌ってくれる。
11曲目の「羊、吠える」で頓智のきいた雰囲気があるのかなと思いきや、表現の面白さはあるけれどそれほどの深さはなくこれもサラっと終わる。
 
そして、12曲目の「風と星とメビウスの輪」以降は壮大な雰囲気で、世界をどんどん広げて終わっていく。
 
 
このアルバムのカラフルさを表している1曲が「エソラ」である。

とてもカラフルなPVなのだが、どこか切なさや憂いを秘めているのがこの曲の良さ。
2000年代のミスチルになかったポップな切なさがある。
 
そして、2曲目は「GIFT」

歌詞の中に色や光が出てくるので非常に分かりやすい。
PVがとてもステキで人のつながりと色と光。
水と光があれば虹ができてキレイなのは分かっているのだから。
 
最後は「花の匂い」

こんなにカラフルで温かいアルバムの最後のPVがほぼモノクロ。
唯一花に色がついているくらい。
こういう対比をして見てみることができるのも、このアルバムの良さ。
 
先入観を持ってタイトルから想像すると裏切られるが、あまりダークサイドに落ちることはない。とてもキレイに輝いてくれたり、日常にともし火をくれるアルバムだ。
 
 

⑦一番ポップなアルバム

It’s a wonderful world

一番ポップなアルバムは10thアルバムの「IT'S A WONDERFUL WORLD」である。
ミスチルはロックバンドではない。あえて言うとポップバンド。 
ただ、ロックとポップスの境界は凄く曖昧で人によって違ってしまっているのが難しいところ。
ポップさはサビ(コーラス)のキャッチーさやメロディの動きが多いことが1つの尺度ではないかと思う。
 
アルバム全体を覆うデジタル感は前作の9thアルバム「Q」から引きずっているものだが、全ての楽曲に適応されているわけではなく、アルバムの始まりと終わりを囲っている。
ソリッドで生々しいサウンドとうまくミックスされているのでバンド感を失っていない。
 
このアルバムは分かりやすいポップさがある。
14曲目の20thシングル「優しい歌」、6曲目の21stシングル「youthful days」、12曲目の22ndシングル「君が好き」はいずれもポップで聴きやすく、歌えるか歌えないかは別としてカラオケでもよく歌われている。

ポップな良さはアルバムの1曲もしっかり担っている。
2曲目の「蘇生」はアレンジ次第ではもっと荒々しいものになってしまいそうだが、その熱さを胸に秘めて、余計な力を抜いた爽やかなポップスだ。
4曲目の「one two three」 はアントニオ猪木の言葉からできていて、その内容は夢とか希望とかそういう内容なのだけど、深刻にとらえておらずお気楽な姿勢。サウンドがポップで軽めなのも良い。
5曲目の「渇いたkiss」は2人の微妙な関係を描いていて、ミスチル流シティポップのアレンジが相まってオシャレで落ち着いた大人のポップスに仕上がっている。
そして、11曲目の「Drawing」は2番のサビまでのデジタルとその後の展開のアナログへの変化がとてもドラマチックで、描くことをテーマにした素敵な歌詞とともに想像力を掻き立ててくれる。
こういうアルバムの1曲が名曲になるくらいの力のある曲が揃っていて、それがポップだから聴きやすく入り口が広いのはこのアルバムの強さの一つ。 
 
もちろん、ただポップなだけではなく、最後の「It's a wonderful world」でしっかりとしたメッセージを伝えている。
忘れないで君のことを僕は必要としていて
同じようにそれ以上に想ってる人もいる
あなどらないで僕らにはまだやれることがある
手遅れじゃない まだ間に合うさ
この世界は今日も美しい そうだ美しい
大事なことを忘れないでねとポップに分かりやすく。
ポップなシングルとポップなアルバムの1曲が脇を固めてちゃんと締める。一番ポップでもしっかりと締まりのあるアルバムがこのアルバムだ。 
 

⑧ロックしているアルバム

BOLERO

ロックしているアルバムは6thアルバム「BOLERO」である。
さっきミスチルはポップバンドだと言ったじゃないかと思うかもしれないが、ポップスという言葉自体に幅があるし、ロックとの親和性もある。
何より、こんなにギターが前に出てくるアルバムは他にない。
 
2曲目の13thシングル「Everything (It's you) 」は王道のロックバラード。
田原さんから桜井さんへのギターソロの連続があり、ギターとしての見せどころ満載。
3曲目の「タイムマシーンに乗って」も歪んだギターでコードを弾きならすよりも、パワーコードでゴリゴリ押していく珍しい曲。
4曲目の「Brandnew my lover」はイントロの跳躍するギターフレーズとともにバリバリに歪んだギター。こんな攻撃的なサウンドのミスチルはなかなか聴くことは少ない。
 
ロックしているのはギターだけではない。
7曲目の「傘の下の君に告ぐ」と10曲目の「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-」では社会批判や風刺をしている。
批判的な楽曲はたまにあるのだが、ここまで集中しているのは珍しい。
 
それ以外にも5曲目の8thシングル「【es】 〜Theme of es〜」、8曲目「ALIVE」で描く精神世界や最大のヒット6thシングルの12曲目「Tomorrow never knows (remix)」が収録されているのはロック色の強さにはつながらないが、ロックばかりではないミスチルの魅力が分かる良い対比の対象となる。

ロックの力強さとポップスの分かりやすさを兼ね備えたミスチルの中でロック色の強いアルバムである。 
 

⑨心に刺さる攻撃的なアルバム

シフクノオト

心に刺さる攻撃的なアルバムは11thアルバム「シフクノオト」だ。
このアルバムは全体にテーマが重く、暗い雰囲気を持っている。
それは5thアルバムの「深海」が持つ重さや深さとはまた違うもの。
 
その始まりに戦慄が走る。
1曲目の「言わせてみてぇもんだ」から”愛想を尽かしてくれても 一向に構わない”と突き放しにかかる。
2曲目の「PADDLE」も明るい希望の曲のはずなのに、サウンドの暗さが尾を引く。確かにいつも光り輝く未来ばかりではないし、霧の中から光を探すのはこういう雰囲気なのかもしれない。
3曲目の25thシングルの「掌」は攻撃的に見ないように目をそらしてきたことを歌っている。

5曲目の「花言葉」、6曲目の「Pink 〜奇妙な夢」の持つ暗さ。キーがマイナー(短調)なのもあるが、それよりももっと心にモヤをかけてしまう。
 
もちろん、暗さだけではなく明るい光もある。
4曲目の25thシングルの「くるみ」は「終わりなき旅」に匹敵する強い光のある曲なのだが、それが故に楽曲のパワーのせいで心がやられる。

泣けるPVなのは確かなのだけど、泣きたくないのに泣けてしまうのは逆に辛い。

 

唯一心を軽くしてくれるのは23rdシングルの「Any」である。

今 僕のいる場所が 探してたのと違っても
間違いじゃない きっと答えは一つじゃない 
今を認めてくれる歌で助けられる。
 
最後に最大の山場がやってくる。
11曲目の「タガタメ」から12曲目の「HERO」の流れである。
「タガタメ」は自分たちの家族や大好きな人たちをどうやって守ろうか、というテーマがあり、続く「HERO」はその家族のHEROになりたいと歌っている。
この鬼気迫る流れは熱量とテーマから心を削られる。
この流れを知らないのならば、是非とも体感してほしい。

アルバム全体に流れる重さやテーマの重さがある。それが故に心が削られやすい。
 

番外編:ミスチルを好きになりたいならおススメしないアルバム

[(an imitation) blood orange](通常盤)

 
どんなアルバムを聴いても良いのだが、せっかくだからミスチルを好きになって欲しい。
だから、よほど好きな知っている曲が入っている場合じゃない限りは他のオリジナルアルバムはおススメしない。
 
例えば、1stの「EVERYTHING」や3rdの「Versus」はいいアルバムなのだが、青臭さがのこっていてポップだが2ndの「Kind of Love」ほどの印象が残せない可能性が高い。
 
9thアルバムの「Q」他紹介していないアルバムがあるが、どれも最初におススメするアルバムじゃないと思っている。
いいアルバムなのと、ミスチルを好きになってもらうには適していないのだ。
特に17thアルバム「[(an imitation) blood orange]」はシングル以外にほとんど良さがないアルバムなので最も聴くのをおススメしない。 
 

最後に

 
アルバムごとの個性を掴むと、そのアルバムが受け入れやすくなったり楽曲が自分の中に入ってくる感覚が味わえるかもしれない。 
そういう音楽の楽しみ方をできるのも、ミスチルのオリジナルアルバムの良いところだ。
 
今回はオリジナルアルバムに絞ってみたが、本当にミスチル入門をしたいのならとりあえずベスト盤を聴きましょうと勧める。
全部で4枚あるのだが、聴き方が1曲1曲になってしまいがちなのが残念なところ。
曲順やアルバムに収録されている他の曲と比べることで楽しめる世界があるので、それを失ってでもとにかく聴きたいなら止めはしない。
 
アルバムには曲順があって、その順番で聴くことで生まれる価値がある。
だから、プリンスはアルバムの価値を問うたことがある。

ミスチルのアルバムを聴くなら順番に最初から最後まで聴くことをおススメする。

 
こちらからは以上です。