タイトル通りであるあると思えるなら、あとは具体例くらいしかないのだけど、少しだけ前フリから。
自分は音楽を山ほど聴いていて、月に100~500曲くらい評価をしている。ここでの評価とは、また聴きたい曲があるかどうかを仕分けること。詳しくは別記事を読んでいただきたい。
できる限りアルバム単位で聴くようにしていて、全体の流れや曲同士の違いを感じながらふり幅を聴いてみたり。評価自体は1曲1曲行うのだが、アルバム全体の評価ってあるよなと思って。そこから、あのアルバムの後にこのアルバムを聴いたから良い・悪いなんてのも発生するが、それはまた別の話。
アルバムの評価を進めていくと、「いい曲いっぱいの名盤」、「この1曲があるから好きなアルバム」、「ずば抜けてよい曲はないが、全体としていいアルバム」、「琴線に触れないアルバム」と大きく4パターンに分かれる。このうちの2つについてちょっと掘り下げてみたい。
アルバム全体を聴いてみて、この曲めちゃくちゃ好きだ!と思える曲があるとその曲に引っ張られて評価してしまうことがある。これを「この1曲があるから好きなアルバム」と名付けている。個人的には「Home Sweet Home」しかないMötley Crüeの『Theatre Of Pain』だったり、「I Still Remember」しかないBloc Partyの『A Weekend In The City』、「KICK IT OUT」しかないBOOM BOOM SATELLITESの『ON』あたりが該当する。いずれもシングルとしてのレベルがあって、他の曲とちょっと次元が違うのだ。
『A Weekend In The City』を例に挙げると、何だかアルバムが全体的に洋楽特有のどうして売れちゃったかなと良くわからないしょっぱい音楽なのだ。明るくもなく、暗くもなく、エモさは足りず、キャッチーでもない。ロックに行ききるでもなく、デジタルとの融合がしっかりできているでもなく。どうもどの曲もまた聴こうと思えないのだ。しかし、「I Still Remember」はいい感じのバンド感を残しつつ、デジタルっぽさを程よいバランスで融合できている。しかも、ちょっと甘酸っぱい。この曲だけそんな香りがしてとても良いのだ。
こういうアルバムはその曲を中心に聴くか、その曲しか聴かないという選択ができてアルバムとしての価値よりも楽曲としての価値に重きが置かれる。もうシングル買った方が良かったと思うわけだが、これはその楽曲にまだ出会えただけ良かったと思うことにしている。アルバム全体が良くない・1曲も自分の琴線に触れないなんてこともあるので、大好きな1曲があるだけまだマシなのだ。
そんなアルバムがある一方で、めちゃくちゃ好きな曲はないが、アルバム全体的に好きということがある。これを「ずば抜けてよい曲はないが、全体としていいアルバム」と呼んでいる。捨て曲がないけど、この中でどれかだけ聴きたいということもない状態で、各々の曲を聴くというよりはアルバムを聴くという感覚。このパターンにハマりやすいのが特定のジャンル・音楽性を突き通すアルバムだ。そして、案外こういうアルバムに出くわすことがある。最近評価したアルバムだと土岐麻子の『PINK』、Dopeの『American Apathy』、Metallicaの『Hardwired…To Self-Destruct』あたりが思い浮かぶ。
土岐麻子の『PINK』は一言で言うと「バンド感を抜きにしたデジタル・シティポップ」で、自分の思うシティポップとも非常にマッチしていた。最近のシティ・ポップの定義にモヤモヤしていた時期に聴いたから余計にそう思ったのかもしれない。
Dopeの『American Apathy』は「やっと仕上がってきたインドストリアル・メタル」という印象。これは、Dopeのアルバムを1stから聴いてきて、やっと4枚目の『American Apathy』に到達した感想。今までも悪くなったけど、やっと仕上がったなと。だからといって、このアルバムならこの曲を聴け!みたいな曲はなくて、規則的でザクザクと刻まれるリズムとリフに、機械がきしむ音のようなヴォーカルを聴くのが良いというだけ。
Metallicaの『Hardwired…To Self-Destruct』はちょっと事情が違う。こういう大御所の場合、新しい音が聴けるのがまず嬉しい。その意味では、アルバム全体として良いし、聴きたいなと思えるのだ。しかし、過去の名曲達が自分の中の名曲リストに名を連ねていて、それを超える曲なんてそうそう生まれない。Metallicaの場合、この作品の前の『Lulu』、『Death Magnetic』くらいから名曲がない。ライブを見るなら、今回のアルバムの曲は最小限にして過去の名曲を目の前で演奏してくれることを心から望んでしまう。この辺は別記事で大御所の新作に求めるものって何だっけ?と自問自答した。
こんなことをたまにまとめて考えることがあるのだ。音楽を聴くこと自体は考えるより感じることを優先していて、何で良いんだっけ?何が良くないんだろう?は後付けでしかない。良いものは良いし、良くないものは良くないといえばそれまでだけれど、そこから良いと思う音楽の共通点やポイントを分析・分類していくと自分の好きな音楽がより明確になってくる。例えば、自分がアップテンポだと思うのはBPMが150位からなんだなとか、どうもデス・ボイスで歌われるとダメだなとか、とにかくピアノでバラードを歌われると心を打ちぬかれる可能性が3割増しとかそういう感じで。
音楽の楽しみ方は自由なので好きに聴けばいいと思うけれど、「これはこう楽しむ」みたいなパターンがあると、どれに当てはまるかな?とか新しい楽しみ方を発見してみたりと、案外楽しめたりするのでおすすめする。
こちらからは以上です。
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