もう少し細かく言うと、イントロで一節以上ソロ状態で歌うロックはカッコいいけど、数が少なくて、しかも失恋ソングというお話です。
先日、iPodで音楽をかけながら車を運転していたところ、FireHouseの 「All She Wrote」という曲が流れてきました。この曲、イントロのヴォーカルがとても印象的な曲です。(PVだとちょっと長いですが、0:24~が該当します)
最初聴いたとき、全然何を言っているか分からなかったのですが、歌詞はこんな感じです。
Bye-bye baby bye-bye
And that was all she wrote
「バイバイ、ベイビー」と置手紙があったということです。歌詞を読み進めていくと、この置手紙で別れが確定していることと、別れを惜しむ男の歌なんですね。別に未来を見るでもなく、とにかく別れてしまったことを回顧しているだけの曲だったりします。もっと女々しくてもよさそうなのですが、割と別れた理由を知りたがっているくらいで、あの時はああだったとか、めちゃくちゃいい女だったな…みたいな歌詞は一切ないので、案外ドライといえばドライだし、問題を解決したがる男性脳的な歌詞だなという感想です。
楽曲的には、1990年の作品ですが、80年代のハードロックやL.Aメタルあたりを引きずった感じの雰囲気になっていて、個人的には大好きな部類の曲です。メロディアスで、キャッチーで、テクニックに走り過ぎない中、ヴォーカルのC. J. Snareのハイトーンヴォイスはロック然としていてよいのです。やっぱり、イントロの”Bye-bye baby bye-bye”のコーラスの重厚さからの、”And that was all she wrote”でヴォーカルがソロになることによるヌケ感もたまらない。
この感じのイントロだと、Bon Joviの「You Give Love A Bad Name」も同じパターンだなと思った。
重厚なコーラスからのヴォーカルのヌケ感の感じはかなり近い。何なら、1986年の作品なので、こちらの方が古いので先駆けともいえる。ただ、「All She Wrote」と比べると、"Shot through the heart. And you're to blame"の部分は、ほぼユニゾンなので、そんなに広がりは感じない。
実は、「All She Wrote」と共通点がある。それは、これもフラれた男の曲であるということ。
Shot through the heart
And you're to blame
Darlin' You give love a bad name
「心を撃ち抜かれたのは お前のせいだ、ダーリン、お前は愛の名を汚したのさ」くらいの意味でしょうか。もう少し細かいことを言うと、歌っていること自体は、付き合ったは良いが上手くいかない感じで、フラれている雰囲気。これで初の全米No.1を取っているのだから、侮れない。
この曲が収録されている『Slippery When Wet』は半分くらいの楽曲制作にDesmond Childが関わっており、普段だとヴォーカルのJon Bon Joviと当時のギターRichie Samboraの2人以外の力が働いている。何ならこの曲はDesmond ChildがBonnie Tylerに作った「If You Were a Woman (And I Was a Man)」が元ネタだったりする。これが案外知られていない。
歌詞は変わっているが、メロディはもちろん似ている。歌詞の歌いまわしで、メロディも引きずられて変わるよなということが分かるのが面白い。それよりも、ずっと鳴っているシンセのリフが同アルバム収録の「Livin' On A Prayer」に似ている気がするのは、自分だけだろうか?
最近は、この曲、椿鬼奴がBon Joviを歌う時に使われるので、ちょっとおもしろいイメージがついてしまっている気がする。Bon Joviは日本でも売れているので、ネタにされやすい。
続いて、思いついたのが、Dokkenの「In My Dreams」。この曲は、イントロが完全にハモリでできているが、これがまたカッコイイ。メインメロディに対して上のハモリが効いているのがよい。
ド頭から歌っている歌詞が、なかなか女々しくて、味わい深いんですよ。
In my dreams
It’s still the same
Your love is strong
It still remains
「 夢の中では今でも同じで、お前の愛は強くてまだ残ってる」という感じの歌詞で、これは”夢の中では”とある通り、現実では異なるわけです。夢の中で君に会いたいみたいな歌詞はそこそこあると思うんですが、別れた彼女が夢の中では同じみたいなケースって案外少ないんじゃないかなと。これも、フラれた男の悲しい歌でした。憂いのあるメロディに悲しいメッセージなんて、まんまじゃんという感じですね。
実は自分がこの曲と出会ったのは、『Beast From The East』というライブ盤で、このライブバージョンがまた最高にかっこいいんですよ。Dokkenが一番脂がのって、最強だった時代の音源だったりします。
このイントロのカッコよさは、ヴォーカルの Don Dokkenではなくて、実はコーラスをしているベースのJeff Pilsonが最高なんですよ。バンドのベースは目立たない人が多いですが、Jeff Pilsonは楽曲制作にも関わって、その音楽性を忌憚なく発揮している珍しいベーシストです。
この後、Dokkenは解散してしまいます。その後、再結成したりもするのですが、やっぱりこの時期の輝きはなかなか戻らなかった。
たまたま思いついた3曲が失恋ソングで未練タラタラな曲ばかりでした。色々ハードロックの楽曲を探してみたんですが、案外ヴォーカル始まりで、楽器が全く鳴らない曲が他にImpellitteriの『Victim Of The System』収録の「The Young and the Ruthless」くらいしか、見つからず。この曲も93年なので、80年代後半から90年代前半に一部存在したくらいのアレンジなのかなと思いつつ。他にも、ハードロックで、ソロでヴォーカル始まりがある曲を知っていたら教えていただきたい。
こちらからは、以上です。
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