Jailbreak

新しい世界の切り取り方

今さらながらチャットモンチーの魅力とおすすめ曲・おすすめアルバムを整理する

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2005年のメジャーデビューから現在までチャットモンチーは成長と変化を続けてきおり、今もそれを止めていない。彼女たちがバンドとして、ミュージシャンとして、人間として、成長していく姿を作品を通してみてきたからこそ分かる彼女たちの音楽の良さがある。その辺をチャットモンチーの成長のフェーズと共にオススメの楽曲を整理していきたい。

3人で頑張ろう期(メジャーデビュー~『YOU MORE』)

chatmonchy has come (Forever Edition)

デビュー時のチャットモンチーは橋本絵莉子(ヴォーカル&ギター)、福岡晃子(ベース&コーラス)、高橋久美子 (ドラム&コーラス)の3人。いずれも徳島県出身で、橋本と福岡は同い年、高橋は2人の1つ上の先輩にあたる。

彼女たちの曲作りの方法は3人が各々歌詞を書き、橋本がメロディーをつける詩先が基本になっている。その渡し方も学生の頃にやったような手紙方式をとっている。つまり、3人の作詞家がいるのでそれぞれの世界観があって、面白い。

福岡の歌詞は女性目線の乙女チックなものが多い。デビューミニアルバムの『chatmonchy has come』収録の「ツマサキ」はデートの風景と心情を歌っていて、ヒールが高い靴を履いてつま先にある蝶々のペディキュアにスポットライトを当てている。また、3rdアルバム『生命力』収録の「Make Up!Make Up!」では化粧をする女心を見事に表現している。

これ以外にも「女子たちに明日はない」、「恋の煙」、「Last Love Letter」、「とび魚のバタフライ」辺りも福岡の作詞によるものだ。

これに対して高橋は歌詞の中にストーリーがあり、現実と空想の間を行く芸術性を持ったものが多い。『chatmonchy has come』のオープニングを飾り、1stアルバム『耳鳴り』にも収録されている「ハナノユメ」はチャットモンチーを知るうえで挨拶代わりになる曲であり、サビこそ痛みを感じるからこそ生きている感覚を伝えているが、AメロBメロはあんまり大きな意味は感じない不思議さがある。「シャングリラ」、「真夜中遊園地」、「風吹けば恋」が似たように本当にメインとなるところ以外にあまり重みがないタイプの歌詞である。一方、『生命力』収録の「バスロマンス」に見る遠距離恋愛の距離感やと嬉しさ淋しさをバスを使って上手く表現したや、『chatmonchy has come』収録の「サラバ青春」の卒業式の持つ未来へのドキドキと過去への回想というストーリーの中の情景がとてもキレイである。

最後に橋本の歌詞は他の2人に比べて、とても真面目で真っすぐ。ちょっと内向的でエモいものが多い。特に初期の作品はエモく、『chatmonchy has come』収録の「夕日哀愁風車」は未来への不安を歌った青臭いけれど多くの人が持ったであろう想いを歌っていたり、『耳鳴り』収録の「恋愛スピリッツ」は不利な恋愛状態であっても結局自分の方を向いてくれるじゃないと激情と言っても過言ではない仕上りになっている。『生命力』収録の「橙」はエモさと内向的なところが全面に出ていて、誰かを引き合いに出しながら自分のことしか見えていない、視野の狭くなってしまった世界観がある。

 

チャットモンチーの特徴のもう一つは3ピースバンドであるが故に一人一人目一杯アレンジをしているところ。どうしてもスリーピースバンドは音が少なくなりがちで、歌を歌うメンバーの楽器の手数が手薄になりがちだ。ヴォーカルがギターを弾きながらだとコード弾きが多くなるし、ベースだとルート弾きが多くなるし、ドラムだとシンプルにビートだけを刻むことが多くなりがち。そうならないようにイントロや間奏にちょっと変わったアプローチをする。オルタナティブロックと言えばそうなのだが、スケールアウトすることはあまりなく、スケール内に嵌めながらもリズムや音使いで特徴を出す。もちろん、引き際としてシンプルに攻める箇所もあるのだが、それだけではないのがチャットモンチーの楽曲へのアプローチなのだ。例えば、1stシングルであり『耳鳴り』収録の「恋の煙」はイントロのギターが裏から入っているのがドラムが入って初めて分かるという、王道のロックリフのアプローチから始まる。そして、1番のサビ以降は4つ打ちになるというリズム的にもノリ的にも幅広く展開していく。

アレンジにも関わるが、チャットモンチーはギターのオーバーダブが少な目なのもあって、ベースとドラムの音量のバランスが大きめだ。そして、ミックスとして整理はされているが、割と音域が広めに攻撃的な音をしている。そこがリズム的なアプローチの良さを引き出している。4thアルバム『告白』収録の「風吹けば恋」はベース・ドラムのリズム隊が最高に映えている曲だ。イントロから疾走感を出していくが、ギターのアプローチがサビ以外は点と線で切っているのに対してドラムとベースは面でアプローチしているお陰で、丁度良い隙間が生まれてギターが遊びつつ各楽器のカッコよさが粒立っている。

こういう細かくアレンジをすることもあるが、「サラバ青春」、「恋愛スピリッツ」や『生命力』収録の「世界が終わる夜に」の様にアレンジはシンプルだけれど、楽曲の持つメロディの良さやロックバンドであることの熱さの表現がハマってカッコイイ曲もあるし、必ずしもギター・ベース・ドラムだけに留まらないアレンジをすることもある。ピアノやクラリネット、パーカッションと必ずしも自分の担当楽器もあるのだ。こういった音楽性の広さも良さの一つ。

他にも橋本の歌声やハイトーン、全員が歌う・コーラスをするところであったり、3人が醸し出す雰囲気やいい意味でのユルさ、あまり東京に染まっていない言葉遣いだったりと、雑誌でのインタビューやテレビ出演をする姿を見ても好きになる要素はたくさんある。

2人で頑張ろう期(『変身』)

変身(初回生産限定盤)(DVD付)

チャットモンチーも長く活動をしてきたが、ドラムの高橋が「音楽に向かっていくパワーがなくなっている」「気持ちを偽りながら曲作りはできない」という想いを抱えて、メンバー内で話し合った結果2011年の9月29日のライブを以て脱退してしまう。チャットモンチーはトライアングルで成り立っていたが、2点を結ぶ線になってしまう。それでも福岡がじゃあドラムを自分が叩けばいいやと思ったり、それに橋本が賛同したりということでバンド活動自体は継続となった。

ライブではどうしてもできない場合はサポートメンバーを入れてライブを切り抜けたが、ここでも”自分たちだけでやらねば”という基本方針が貫かれる。さらに、高橋が脱退する前のアルバム4thアルバムの『YOU MORE』ではチャットモンチーのセルフプロデュースであり、その傾向は3thアルバムの『告白』では元々のプロデュースを続けてきた元SUPER CARのいしわたり淳治と売れっ子プロデューサー亀田誠治とチャットモンチーのセルフプロデュースと様々だった。そこから発売された5thアルバム『変身』は、1曲は奥田民生、2曲はASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギターの後藤正文がプロデュースしており、残りの曲はチャットモンチーのセルフプロデュースとなっている。

曲によって橋本と福岡が分担してドラムを担当して、ギターとベースは各自空いている方が行う方向でアレンジがされている。これが今までよりも少ない楽器で演奏することになり、スカスカのサウンドになり今までのパワフルさは一気になくなった。しかし、今まで以上に橋本の作詞曲が多かったり、より楽曲へのアプローチが前衛的になって面白さは出ることになった。

14thシングル「きらきらひかれ」はチャットモンチー上最速のテンポであり、ドラムは福岡が担当している。ベースレスなのだが、その分コーラスをかなり多めに入れていて今までにはないアプローチをしている。また、アジカンの後藤がプロデュースしているのも今までとは異なるアプローチになっている要因の一つだろう。ライブでは最初のギターをループさせてギターを重ねる手法をとっている。

同じく15thシングル「コンビニエンスハネムーン」では橋本がギターをループさせ、単音フレーズを弾いたり、福岡はAメロで右手はタンバリンでドラムを叩いたりと、とにかく自家栽培を信条として2人でやり切ることをライブでも見せようという心意気を感じる。

いろんな人とやってみよう期(『共鳴』)

共鳴

2013年ヴォーカル&ギターの橋本が結婚と妊娠を発表し、同年に出産をしている。母となった橋本がチャットモンチーとしての2014年の活動再開ライブで恒岡章(ドラム、 Hi-STANDARD、CUBISMO GRAFICO FIVE)と下村亮介(キーボード・ギター、the chef cooks me)が参加したことでサポートメンバーを加えた4ピースという新たな化学変化が生まれる。ここから16thシングル「こころとあたま/いたちごっこ」が生まれる。今までのチャットモンチーと違ったロックバンドとしてのパワフルさと音色が増えたことによって音楽性を広げることに成功した。

前述の恒岡章・下村亮介を男陣、北野愛子(ドラム、DQS、nelca / ex. your gold, my pink)、世武裕子(キーボード)を女団としてサポートメンバー隊でライブを進めていくことになる。女団として17thシングル『ときめき/隣の女』を発表している。この曲はとても女性的で良かったので、当時レビューを書いている。

男陣とのパワフルなロックと女団の繊細さという2つの武器を手に入れ、男陣恒岡を迎えた3ピース、前作でやったような橋本・福岡の2ピースという幅広く楽曲に対してアプローチを行ったアルバムが6thアルバム『共鳴』だ。

ドラムが戻ってきたことによる、各々の楽器へのアプローチに集中できたことや、サポートメンバーがいることによる今までになかったチャットモンチーのロックとしての王道な面が出てきたりと新たな一面を見せてくれるいい作品だ。

オススメ曲とオススメアルバム

じゃあ、何がオススメかというといくつかテーマを設けないと難しいので、テーマごとにオススメ曲を紹介する。

とりあえず3曲

シングル売り上げTOP3の「シャングリラ」、「ヒラヒラヒラク秘密ノ扉」、「風吹けば恋」をどうぞ。アップテンポな曲ばかりだけど、3人で頑張ろう期の一生懸命アレンジをした跡があって良い曲ばかりです。

シャングリラ

シャングリラ

  • チャットモンチー
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

ヒラヒラヒラク秘密ノ扉

ヒラヒラヒラク秘密ノ扉

  • チャットモンチー
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

風吹けば恋

風吹けば恋

  • チャットモンチー
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

カッコイイ曲

「真夜中遊園地」がロックっぽさと勢いと歌詞とのバランスが最高にカッコいい。

真夜中遊園地

真夜中遊園地

  • チャットモンチー
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

疾走感がたまらない曲

「風吹けば恋」、「こころとあたま」、「きらきらひかれ」あたりがアップテンポでアガる。案外みんなでやってみよう期の「こころとあたま」は今までのチャットモンチーが持つグルーヴと違ってカッコイイ。

こころとあたま

こころとあたま

  • チャットモンチー
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

へヴィな曲

「世界が終わる夜に」。テンポの遅さとリズム隊の重さと歌詞も割と重め。 

世界が終わる夜に

世界が終わる夜に

  • チャットモンチー
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

橋本作詞曲

「橙」、「恋愛スピリッツ」。いずれもチャットモンチー初期の曲がエモい。

橙

  • チャットモンチー
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

福岡作詞曲

「女子たちに明日はない」、「Last Love Letter」の女性的表現が良い。ただ、「Last Love Letter」のイントロのベースはチャットモンチー史上最高にカッコいいベースだ。PVもちょっと面白い。

高橋作詞曲

「ヒラヒラヒラク秘密ノ扉」の芸術性、「親知らず」のストーリー性がオススメ。特に「親知らず」は福岡が書いた『耳鳴り』のオープニング曲「東京ハチミツオーケストラ」の続編を高橋が書いたという面白さがある。続けて聴くと上京してすぐの心情が、少しずつ慣れていく変化が楽しめる。

オススメアルバム

ここまでたくさんの曲を紹介してきたが、アルバムだとどういうアルバムを聴けばいいかとなると、これもどれだけチャットモンチーを知っているかによる。

入門編として、とにかく今回紹介されている曲が多いのはベスト盤の『チャットモンチー BEST〜2005-2011〜』。注意点としては3人で頑張ろう期の高橋がいる頃の楽曲の総集編になっているため、それ以降の楽曲は入っていない。

それ以降の2人で頑張ろう期、みんなで頑張ろう期を聴いたことが無ければ、『変身』、『共鳴』の各アルバムを聴いてみるのが良い。

オリジナルアルバムを1枚だけオススメするならば、 『生命力』。『耳鳴り』といい勝負だが、演奏や楽曲の円熟感と初期作品ならではの勢いとグルーヴが良いアルバムなので、困ったら『生命力』。それから『耳鳴り』。

チャットモンチーの大体の曲は知ってるよというのなら、『表情<Coupling Collection>』はどうだろうか。カップリング曲は必ずしもアルバムに収録されてはいないし、DISC2は「ハイビスカスは冬に咲く」、「ツマサキ」、「バスロマンス」、「恋愛スピリッツ」、「サラバ青春」のアコースティックバージョンが収録されているので、普段のバージョンとはまた違った彼女たちならではのユルさのある楽しいバージョンになっているのはどうでしょう。

最後に

長々と魅力を書いてきたが、どこか好きになるポイントがあったり曲があると、そこからどんどん好きになっていけばいい。そのためのポイントは書いてきたので、どこか楽しめるポイントを見つけていただければ幸いだ。 

チャットモンチーは進化し続けていて、まだバンド活動は続いている。これからの彼女たちの進化を楽しみにしている。

こちらからは以上です。

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