バンドの魅力の一つにコーラスワークがあると思う。
もちろん、コーラスを全くやらないアーティストもいるし、PUFFYのようにユニゾンで歌うアーティストもいる。
何より楽器を演奏しながら歌うのはプロは簡単そうにやってのけるが、かなり大変なこと。
それでも、ヴォーカルに寄り添って最高のコーラスワークを見せてくれるバンドがある。
そして、どんなに音源のコーラスワークが素晴らしくても、ライブでも同じレベルを見せてもらいたいものだが、これもレベルの高い要求だ。
ハモリは簡単なものじゃない。ただメロディが歌えればいいのとはわけが違う。
それでも、ライブでもCDかそれ以上のコーラスワークを聴かせてくれるバンドがある。
今回はそんな最高のバンドと名曲とそのライブでの完成度を見ていきたい。
Mr.Big/Green-Tinted Sixties Mind
Mr.Bigの代表曲の1つであるアルバム「Lean Into It」収録の「Green-Tinted Sixties Mind」はイントロのギターのフレーズがタッピングで構成されていることに耳がいきがちだが、サビのコーラスのハモリが凄いのである。
Mr.BigはヴォーカルのEric Martin以外にギターのPaul Gilbert、ベースのBilly Sheehan、ドラムのPat Torpeyの3人はみんな歌えて、コーラスをする。
Paul Gilbertについては別記事で触れている。
そんなバンドの強みと楽曲の良さが組み合わせられたGreen-Tinted Sixties Mindはとてもキレイでポップなロックなのだ。
特にサビのハモリが絶妙。
スタジオヴァージョンよりもライブバージョンの方がいいのがこの曲の特徴で、特にライブ盤「RAW LIKE SUSHI III -JAPANDEMONIUM-」、「LIVE FROM THE LIVING ROOM」で聴かせてくれるギターソロ明けのハモリがとにかく最高。
2:43~がちょうどその部分。
Mr. Big - Green-Tinted Sixties Mind (Live from the living room)
これ、多分ライブで聴いたら鳥肌モノ。
十分に原曲を再現していて、その上でナチュラルにハモリがキレイ。
これがMr.Bigの魅力の1つ。
他にも楽器の上手さ(超絶テクニック)とか楽曲の良さもあって日本ではウケている。
この楽曲以外にもスゲーコーラスが聴ける曲が何曲もあるので、是非ともチェックして欲しい。
Dokken/In My Dream
Dokkenのアルバム「Under Lock and Key」に収録されている「In My Dream」はミドルテンポでメロディアスなハードロックな曲。
Dokkenは1980年代のLAメタルに分類されるバンドで、ヴォーカルのドン・ドッケンの歌はまさにハードロックのヴォーカルらしいハイトーンボイスを持っていて、分かりやすい。
ハモリに限らなければもっと有名な曲(Tooth And NailとかInto The Fireとか)があるのだけど、ハモリとなると「In My Dream」一択。
曲の始まりからサビがくる構成なので、分かりやすいと思う。
日本人が好きそうな哀愁のあるメロディをキレイにハモっている。
三声くらいに聴こえるけど、案外二声で十分でライブではベースのジェフ・ピルソンが上でハモっている。
これが聴けるのがアルバム「Beast from the East」である。
ドラムのワイルド・ミック・ブラウンにもコーラス用のマイクはあるのだけど、実質ベースのジェフがコーラスをやっているだけ。
それでもこれだけ原曲を再現して、コーラスを入れることによって楽曲の広がりを持たせている。
LAメタルだと思ってバカにすると痛い目にあうぞ!
Firehouse/All She Wrote
Firehouseは1990年にデビューしたアメリカのロックバンドだが、ハードロックが下火になってきたころにデビューしてしまったため、アメリカよりもハードロック人気の余韻が残っていた日本を含むアジア各国で人気がある。
そんなFirehouseの1stアルバム「Firehouse」に収録されている「All She Wrote」は先述のDokkenの「In My Dream」同様イントロからサビパターンでハモリがきける。
FireHouse - All She Wrote (HQ sound)
オープニングが印象的なのだが、これは「Bye-bye baby, bye-bye」と歌っている。
歌詞の内容は帰ったら彼女が出て行ってしまっていて、手紙に「Bye-bye baby, bye-bye」と書いてあったというもの。
この「All She Wrote」のライブ盤は「Bring 'Em Out Live」で聴くことができる。
ミックスの関係でヴォーカルのC.J.スネアの声が大きい気がするが、それでもコーラスは入っている。
当時のギターのコスビー・エリスとベースのペリー・リチャードソンがハモっているがなかなかいい具合なのではないだろうか。
これだけ似たような曲が2曲並ぶということは、コーラスをするならあまりテンポが速くない、音の動きが少ない方がカッコいいということなんだろう。
The Corrs/Breathless
The Corrsはコアー兄妹で結成されたアイルランドのフォークロックバンド。
日本でいうとバンドではないけど、サーカスが近いかも?
アイルランド出身というのもあって、ケルト音楽をミックスしたりもしていたが、アルバム「In Blue」収録の「Breathless」はその雰囲気はとてもポップで明るい。
その曲の良さから初の全英No.1やグラミー賞最優秀ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞のデュオ/グループ部門にノミネートされている。
この曲のコーラスはBメロも良いのだが、サビのコーラスが一番だ。
HQ) The Corrs Breathless [OFFICIAL MUSIC VIDEO] (With Annotated Lyrics) YouTube
スタジオ版でコーラスをメインヴォーカルが務めてしまうことは多いので、PVの通り姉妹でコーラスをしているかどうかは分からない。
サビの4回の繰り返しに対して1回目2回目は同じコーラスだが、3回目は別のパターン、4回目も別パターンを重ねてくるあたりがニクイアレンジである。
この「Breathless」が聴けるのはアルバム「VH1 Presents: The Corrs, Live In Dublin」である。
The Corrs - Live in Dublin - Breathless HQ
これはしっかりと姉妹がコーラスをしており、何ならお兄ちゃんのジム・コアーコーラスに参加している。
全体的なサウンドもオーケストラと共演してさらに幅が出ているところが輪をかけて良さを引き出している。
原曲のアレンジをしっかりと再現して、サウンド的には+αをしている点は評価できるんじゃないだろうか。
それにしてもメインヴォーカルのアンドレア・コアーが正面から見るとキャメロン・ディアスに見えるんだよなぁ。
Eagles/Hotel California
本ブログによく登場するEagles。
ウェストコーストのカントリーロックサウンドが味なのだが、Glenn Freyは元々全員が歌えるバンドを目指していたのもあり、メンバー各々がメインヴォーカルを務める曲があるくらい歌えるメンバーばかりのバンドである。
メインヴォーカルを採れる4人が集まっていて、コーラスの質が高い。
こんなバンドなかなかない。
そして、素晴らしい楽曲が多いのも特徴。
好きにならずにはいられない。
そんなEaglesには名曲がたくさんあるのだけど、その中でも代表曲「Hotel California」のコーラスは素晴らしい。
サビのコーラスがもうお手本。
ギターソロが長い曲なのは別件。
hotel california video oficial
サビの「Welcome to the Hotel California」は全員でハモり、「Such a lovely place」はメインが歌った後にコーラスが追いかける。
2010年代にはもう古い手法なのかもしれないけど、スタンダードな手法ともいえる。
そんなコーラスの基本をおさえた「Hotel California」は新曲+ライブアルバムである「Hell Freezes Over」が良い。
1994年再結成後のライブなのだが、普段のアレンジではなくアンプラグド(アコースティックアレンジ)なのである。
この完成度をライブで披露するのはさすがとしか言いようがない。
メンバーの年齢的にも40代の後半になっているのだけど、旬を過ぎたらあとは円熟度を見せるしかない。
その円熟度が半端じゃない。
アンプラグドだからこそ分かる本当の歌の上手さが光っている。
この曲以外にも「Take It Easy」とか「Hole In The World」あたりのコーラスも好き。
イーグルスは楽曲の良さと歌の良さを伝えて続けてくれるバンドなのは確か。
Stray Cats/I Won't Stand In Your Way
Stray Catsはロカビリーバンドで、ギターも歌も上手い天がニ物を与えたBrian Setzerそ中心としている。
そのロックンロールはブルージーなものから、ビバップのような気持ちいい曲、ジャジーな曲、カントリー調の曲と古き良きアメリカのサウンドを昇華している。
あまりStray Catsにコーラスのイメージがない方もいるかもしれないが、アカペラアレンジの「I Won't Stand In Your Way(邦題:涙のリトル・ガール)」がある。
原曲はバンドアレンジのバラードなのだけど、このアカペラアレンジがめちゃくちゃカッコいい。
Stray Cats - I Won't Stand In Your Way (Accapella)
やっぱりBrian Setzerの歌は上手い。
きっと最近の歌は歌ではなくてメロディになってしまっていて、表現が乏しいんだと思う。
そういう意味では、本当に歌を歌っている。
そして、ライブバージョンの音源は「LIVE AT THE GRAND OLE OPRY,1983 」のものだと思うんだけど、これがまたいい感じ。
Stray Cats - I won't stand in your way - Live in Nashville 1983
バンドアレンジにはなっているけど、コーラスとバンドが融合していてたまらない。
ついでにサックスの間奏がまたいい感じ。
こんな感じでブライアン・セッツァー・オーケストラでのライブをやってくれたらなと思うのだけど、近年はブライアン一人でギターを持って弾き語りのスタイルに落ち着いている。
隠れた名アレンジここにありだ。
Beach Boys/Good Vibrations
アメリカのロックバンドであるBeach Boysの代表曲「Good Vibrations」。
今では当たり前になっている何層にもダビングを繰り返して、切り貼りして作られた楽曲なのだが1966年当時は凄いことだったはず。
楽曲を制作したブライアン・ウィルソンはコーラスワークを多用したアレンジが特徴。
その最たるものが「Good Vibrations」なのだ。
The Beach Boys - Good Vibrations
この曲の始まりの切なさは半端じゃないけど、今回はコーラスの件。
その後の明るくなってからのコーラスがポイント。
低音のメロディに対して、中音域のコーラスが重なり、高音域のコーラスが重なっていく。
この階段のようにきれいに重なっていくコーラスは本当にスゴイと思う。
そんなコーラスワークがライブでどうなるのかはアルバム「Good Timin': Live at Knebworth England 1980」を聴くのがよい。
若干コーラスの音量のバランスが悪いけれど、ほぼ原曲の示したコーラスを再現しているんじゃないだろうか。
2~3人がしっかりコーラスしているとここまでできるのである。
この楽曲の深さはこれだけではないんだけど、そこに触れると書ききるのにどれだけ時間がかかるか分かったもんじゃないので、ここまでにしておく。
TOTO/Africa
スタジオミュージシャンで結成されているアメリカのロックバンドTOTO。
スタジオミュージシャンなので、楽器が上手いのは言わずもがな、コーラスワークまで完璧にやり通してしまう。
メンバーの入れ替わりはあるが、そのクオリティを落とさないのは全員がスタジオミュージシャンだからかもしれない。
TOTOのコーラスワークが良い曲として、アルバム「TOTO IV」に収録されている「Africa」を聴いてみたい。
サビのコーラスがキマりまくっているのだけど、キマりすぎていて特に凄さは感じないかもしれない。
スゴイことをサラっとやってしまうのが、本当にスゴイミュージシャンなんだけど、TOTOはまさにそんな感じ。
最初のハモリはユニゾン、2回目は下からハモリ、3回目はさらに下からハモる。
コーラスを上に重なっていく手法はあったけど、下から支えて重ねていくのは今まで紹介した中にもなかったはず。
そんなTOTOの「Africa」は多々のライブ盤から「Live in Amsterdam」のヴァージョンが良い。
それはヴォーカルがボビー・キンボールだし、キーボードがデヴィッド・ペイチだからなんだけど。
Toto - Africa (Live In Amsterdam)
ライブ盤も相変わらずの安定感。
サビのコーラスに対して、ボビー・キンボールの突き抜けた高音が気持ちいい。
このクオリティをCDの頃と変わらずかそれ以上に円熟させて披露してくれるTOTOはスゴイミュージシャン集団で間違いない。
TOTOには名曲が多いけど、いずれもしっかりとコーラスが入っていて楽曲の世界を広げる工夫が施されている。
元々の仕掛けとともにライブになると再アレンジをしたりして、同じ名曲もちょっと違って聴こえて新しい魅力を感じさせてくれる。
音楽を飽きさせない。超一流ミュージシャンの流儀なのかもしれない。
Chicago/Hard To Say I'm Sorry
ブラスロックと呼ばれて、1970年代に管楽器をバンドにいち早く取り入れたロックバンドChicago。
ギターやピアノだけで音楽を彩らない音楽は当時珍しかったはずだ。
そんなChicagoの大ヒット曲にしてデヴィッド・フォスターがプロデュースして沈みかけたバンドを助けた「Hard To Say I'm Sorry」のコーラスが良いのだ。
Chicago- Hard To Say I'm Sorry (Music Video)
1番よりも2番の方がかなりコーラスが入っていて、ほぼフレーズの歌いだし以外はコーラスが入っている。
ここまでやっても楽曲の邪魔にならないどころか、そのコーラスがないと物足りなくなってしまうくらいの病みつきになる。
この病みつきになるコーラスが聴けるのが「Live in Japan」や「Chicago XXVI: Live in Concert」あたりがいいかもしれない。
もうヴォーカルは当時のピーター・セテラではなく多分ジェイソン・シェフなのだが、楽曲の良さは十分伝わるはずだ。
十分ヴォーカルに絡み着いたコーラスをしているんじゃないだろうか。
細かい音作りやアレンジはあるが、これはこれ。
楽曲の良さをしっかりと伝えてくれている。
Chicagoは活動が長く、メンバーの入れ替わりもあるが名曲を生んだバンドには違いないし、ライブでもコーラスをやってくれるのだ。
それにしても、何でこの曲のアレンジは最後に盛り上げて全然別の曲にしてしまったんだろう。
最後に
ライブでコーラスをやらないバンドもあるし、楽曲をそのままライブで再現するのが難しい音楽が増えているのは確かなこと。
それでも、メンバーでコーラスをして楽曲の完成度を落とさないように・もっと上げるように努力する姿は当たり前かもしれないが大事なことだ。
こんなバンドのライブなら見に行きたいし、CDとして聴いてもその楽曲の素晴らしさは変わらないかそれ以上になるんじゃないだろうか。
こちらからは以上です。

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