Jailbreak

新しい世界の切り取り方

よく同じ声質の後任ヴォーカルを見つけたなと思うロックバンド

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ロックバンドのヴォーカルは、バンドの花形であり、顔だ。ギターが変わろうが、ドラムが変わろうが、実質音を聴いてもそんなに違いが分からないことも多いが、ヴォーカルはさすがに分かる。歌声が違うのだから、非常に分かりやすい。

ヴォーカルが交代すると、バンドの印象が変わるのは避けられない。以前のヴォーカルの楽曲を歌うと、やはり比べられる。ファンに受け入れられないことだってある。そうやって、バンド活動が継続できなくなることだってある。

例えば、QueenはFreddie Mercuryが亡くなって、Paul Rodgersや最近だとAdam Lambertをヴォーカルとして迎え入れているが、やはりFreddieとの違いは大きく感じる。もちろん、未だにQueenの音をライブで聴くことができるのはとてつもない価値なので、オリジナルメンバーとは別物として良いのだが、それはそれ。(Adam LambertなんかはかなりFreddieの雰囲気と近いので、勢いもあって個人的には好きである)

また、Van Halenのように、初代ヴォーカルDavid Lee RothからSammy Hagarとなり大きく変化したバンドもある。その後加入したGary CheroneはDavid Lee Rothと同じタイプだったので、Sammy Hagarの変化はなかなか大きなものだった。

世の中には、ヴォーカルが変わったにもかかわらず、同じような歌声を持つヴォーカルを迎え入れることで、今までと変わらない雰囲気で楽曲を聴かせることに成功しているロックバンドがある。そんなバンドを紹介していきたい。

Journey / Steve Perry→Steve Augeri→Arnel Pineda

Revelation

もういきなり大本命のバンドJourney。よくもまあ、こんなに同じタイプの歌声を揃えてきたもんだと感心すること間違いなしのバンド。

70年代から80年代にヒットを飛ばしたアメリカのバンドJourney。バンドの中心人物がギターのNeal SchonやベースのRoss Valoryで、ヴォーカルが歴代5人いる珍しいバンドだ。その中でもSteve Perryは、Journeyの全盛期を支えた偉大なヴォーカリストだ。

鼻にかかった特徴的な歌声と突き抜けるようなハイトーン。完全にJourneyの顔だったSteve Perryが86年に心労から突然脱退。1996年に一度アルバムに参加し、復活の兆しを見せるも、結局ツアーに参加できず、脱退。その後任ヴォーカルとしてオーディションからSteve Augeriが参加する。

Steve AugeriもSteve Perryに負けず劣らず、鼻にかかった歌声とハイトーンボイスの持ち主だった。何なら名前も同じSteveなので、これまたなじみが良かった。

しかし、Steve Augeriが2006年に喉の感染症を理由に脱退してから新たなヴォーカルを迎えてなんとか活動を継続したが、活動を休止してしまう。

2007年の暮れにフィリピン出身のヴォーカル、Arnel Pinedaの加入が公式にアナウンスされる。これがまた、今までのJourneyを踏襲しつつパワフルになった歌声が最高。

元々のメンバーとは一回りくらい年下で、しかもフィリピン人という国籍を超えたヴォーカルが加入するというのは皆が驚いただろう。経緯は、Youtubeに上がっていたArnel の動画を見て、Neal Schonがアプローチしたという、なんとも現代的なものだ。

2013年には、Journey加入と成功の軌跡がドキュメンタリー映画「Don't Stop Believin' ~The Everyman's Journey」として発表されている。これはなかなかのサクセスストーリーなので、必見。

 

Steve Augeriを見つけただけでも、なかなか凄いことだと思うが、Youtubeで見つけた他国のヴォーカルにアプローチして、正式に招き入れるとはなかなか懐が深いバンドなのかもしれない。しかも、パワフルに若返って復活とは、なかなかないことだろう。

個人的には、Arnel Pinedaが加入して最初のアルバム『Revelation』はかなりオススメ。特にDISC2の今までのヒット曲を再録したものがなかなか良い。 

 

余談だが、脱退してしまった4代目のドラマー、Deen Castronovoが歌えるドラマーだったのは、隠れた価値。

GOTTHARD / Steve Lee→Nic Maeder

DEFROSTED 2 / DIGIBOOK

スイスのハードロックバンドGOTTHARD。王道のハードロックを間違いなくやってくれる最高のバンド。楽器隊はテクニックに走り過ぎず、あくまで楽曲のために各メンバーが自分の役割を果たす。そんな中でもSteve Leeのヴォーカルは嗄れ声のハイトーンがロック然としていて、とにかくカッコイイ。

Led ZeppelinのRobert Plantにも似た声質で、GOTTHARDとしてカヴァーした「Immigrant Song」 は原曲よりもハードな歌声がとにかくカッコよい。

Steve Leeの訃報が届いたのは2010年10月5日。交通事故により、亡くなってしまう。享年48歳。これは、GOTTHARDの活動はもう続けられないんじゃないかと、個人的に思ってしまった。 それくらい衝撃的な出来事だった。

2011年にオーディションでNic Maederが加入することが決まり、「Remember It's Me」がオフィシャルサイトで、無料ダウンロードとして公開された。この歌声を聴いて、「ああ、Steveの最後の歌だったんだな」と最初は思ったのだが、良く書いてあることを見てみると新曲と書かれていて、Nic Maederが歌っている曲だと分かった時はかなり驚いた。

一番高いところの歌声がSteveと同じかどうかまでは分からないが、声質はかなり似ていて、なかなかいい感じだ。しかも、なかなかのイケメン。フロントマンとしての華もあるので、よくこんなヴォーカルを見つけたもんだと思った。

Arch Enemy / Angela Gossow→Alissa White-Gluz

ウォー・エターナル

2代目ヴォーカルのAngela Gossowは、女性ヴォーカリストでありながら、男性に負けない音域でデスボイスを披露する。

この歌声で、低音のグロウルから、高音のハイスクリームまでこなす。特にデスボイスに関してはこのジャンルのパイオニアといっても過言ではない。音だけ聴いたら、まさか女性が歌っているとは思えない。2000年から2014年まで、ヴォーカルとして活動し、その後はバンドのマネージャーを担っている。

Angela Gossowの後任として2014年からAlissa White-Gluzが加入している。AlissaもAngelaに負けず劣らずのデスボイスとパフォーマンスを見せてくれる。

Alissaの歌声はAngelaと比べて、若干デスボイスの音域が高い気がするが、ここまでデスボイスで歌える女性ヴォーカルはそういない。

Alissa White-Gluzはもともと所属していたThe Agonistというバンドでも、同じようなスタイルを見せていて、Arch Enemyに加入したからこのスタイルになったわけではない。とはいえ、The Agonistではクリーンなコーラスも聴かせていたので、そのスタイルに偏りは与えているかもしれない。

見た目的にも、Angelaの派手さに負けないくらいのビジュアルを持つ、Alissa。歌声、ビジュアル、そしてパフォーマンスも申し分ない唯一無二といっていいヴォーカルをよく見つけたもんだと、Alissa White-Gluzが参加したArch Enemyを聴くたびに、感慨深くなる。 

WANDS / 上杉昇→和久二郎

時の扉

Being全盛の90年代の中心にいたWANDS。第1期から第2期まで在籍したヴォーカルの上杉昇は、作詞作曲も担当している。スラムダンクのEDでおなじみの「世界が終るまでは…」のクサい詞は上杉のもの。

くっきりと芯のある歌声を基本として、中低音域の鳴りの良さと、高音域のロックっぽいミックスボイスが特徴的。 

WANDSは1997年にプロデューサーの長戸大幸との意見対立により、上杉昇とギターの柴崎浩が脱退してしまう。元々長戸が集めたメンバーであり、メンバー間のつながりはそれほど強くなかったようだ。

その後、残ったキーボードの木村真也とともに、ヴォーカルの和久二郎、ギターの杉元一生が加入して、第3期が始まる。

これがなかなか上杉の歌声とタイプが似ている。若干、和久のヴォーカルの方が高音域で声が開いて前へ出てしまっている感じはするが、似たタイプの声質としてもよいのではないかと思う。しかし、シングル4枚、オリジナルアルバム1枚を発表して、2003年に解体が発表される。

 

WANDSの情報は最近、色々なところで公開されていて、 上杉昇が当時の活動の葛藤を語ったインタビューはなかなか興味深かった。

独特のファッションセンスや、本当にやりたいことがWANDSの雰囲気とは違っていたようだ。

そして、最近第5期の再始動がアナウンスされた。2020年には新曲の発売も待っている。

ライブ映像がYoutubeに上がっていたので、早速聴いてみた。

新ヴォーカリスト上原大史は上杉昇と和久二郎よりは若々しく、所々似ているところもありつつ、やはり違いは感じた。。 「もっと強く抱きしめたなら」や「時の扉」は割と近い雰囲気で歌えるいた。しかし、「世界が終るまでは…」では高音部がキツイのか、ライブ後半だったからなのか、ライブ後半になったせいなのか若干歌声が不安定になっていた。

2020年発売の新曲に期待しつつ、 過去の楽曲は大事にしなければならない活動はなかなか大変そうに思える。

最後に

以前、ロックバンドのメンバーが変わると何が変わるのかという記事を書いたことがある。その中で、ヴォーカルに関しては、「ヴォーカルが変わるとバンドの顔が変わり、バンドの印象が変わる」と結論付けている。

今回紹介したバンドで言うと、歌声に大きな変化がない時、音源で聴く限りはそんなに違いが出てこない。しかし、ライブでのパフォーマンスまで全く同じわけではない。

今回紹介したバンドでいうと、全体的に活動歴が長く、バンドメンバーの年齢がヴォーカルに比べて高めなので、若返った印象を与えるという違いはあるかもしれない。

同じバンドでもヴォーカルが変わることで、どれくらい違うかを比較しながら楽しんでみてはいかがだろうか。

こちらからは、以上です。

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