Jailbreak

新しい世界の切り取り方

近年の邦楽の要素を多々感じる須田景凪の『Billow』

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Billow (通常盤)

1.Vanilla

2.飛花

3.刹那の渦

4.Alba

5.veil

6.Carol

7.メメント

8.MUG

9.迷鳥

10.風の姿

11.MOIL

12.はるどなり

13.welp

14.色に出ず

15.ゆるる

オススメ曲→2,5,7,13,15

 

 須田景凪の『Billow』を聴いたので、そのレビュー。

作品としては、近年売れた邦楽アーティストっぽさを感じるものだった。具体的には、2010年代に出てきたアーティストの影響を受けたと思われる雰囲気があって、2020年代の2010年代に影響を受けた音楽がついに出てきたかというのが、大まかな感想。

別に似ているからパクリとかそういう短絡的なことが言いたいのではなくて、あくまで売れて、その特徴が捉えられるとると、音楽的な影響として出てきてしまうくらい一般的な手法となってしまうということである。

例えば、5曲目の「veil」なんかは2ndくらいまでのゲスの極み乙女。っぽいアレンジに聴こえる。

単音でクルクル動くリードギターと、サビではカッティングになるスタイルや、ドラムの4つ打ち+裏打ちハイハットに、細かく動くシンセを組み合わせたスタイル。

もうちょっとベースがうるさかったら、本当にゲスの極み乙女。に聴こえたかもしれない。

とはいえ、これも2010年代の音楽なので、影響を受けていたり、生バンドをベースとしたアレンジとして、ゲスの極み乙女。スタイルをオマージュしていても別におかしくない。

13曲目「welp」なんかは、米それ津玄師っぽさを感じる。

アレンジが打ち込みをベースとしたスカスカな音と、ちょっとオリエンタルな雰囲気を出すと、それだけでそれっぽさが出るのだ。

これも、もう当たり前のスタイルなのかもしれない。

 

では、須田景凪らしさはどこにあるかというと、歌声だと思う。

一聴すると、歌声が浅いところにある(逆に歌声が深いとEXILE系の歌声のイメージをしてもらうとよいと思う)ため、素人がカラオケで歌っているような安っぽさを感じることもある。

実際、6曲目「Carol」のサビの前半なんかは、そういう風に素人っぽさを感じた。

しかし、あまり高音域を引っ張らず、あまり声を張らず、ファルセットを絡めるスタイルになるととても良い。

例えば、7曲目「メメント」のどんよりした雰囲気に、絡みつくような歌声で地声とファルセットを行ったり来たりするような感じは、かなり合っていると思う。

あまりテンポの速い曲よりも、スローな曲の方がよい曲が多く、タイアップをしている曲も多いのでキャッチーさは十分にある。

メロディ的には15曲目の「ゆるる」は結構好みなので、キャッチーさを忘れず、ねっとり歌うスタイルの曲が今後増えていくのを楽しみにしている。 

 

もともとボカロPとして楽曲制作していたのもあって、楽曲のアレンジに関しては2020年代のスタイルとして、めちゃくちゃ新しさは感じない。

それでも、しっかりと作り込まれた世界観であったり、狙いを持ったアレンジがあり、全体として完成度の高い楽曲ばかりであった。

そのため、ただ自分の好き嫌いだけで楽曲を選べるという、贅沢なアルバムであった。

 

こちらからは、以上です。

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