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RockにHIP-HOPを!信頼と実績のスーパーグループProphets Of Rage『Prophets Of Rage』をレビュー

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PROPHETS OF RAGE [CD]

1. Radical Eyes
2. Unfuck The World
3. Legalize Me
4. Living On The 110
5. The Counteroffensive
6. Hail To The Chief
7. Take Me Higher
8. Strength In Numbers
9. Fired A Shot
10. Who Owns Who
11. Hands Up
12. Smashit

オススメ曲→1,2,6,10,11

 

「信頼と実績の~」だなんて、長年経営が続いている企業の野暮なキャッチコピーの枕詞だと思うかもしれない。それはその通りなのだけど、Rage Against the Machineの名前が出てくると一気にその言葉に重みが出てくる。Rage~と言えば、90年代のミクスチャーロックシーンのトップアーティストで、Red Hot Chili PeppersやLimp Bizkit等のアーティストとともに一シーンを築いていて、解散こそしてしまったが伝説のバンドであることは間違いない。分からなければ、総合格闘技PRIDEのテーマ曲を聴いてもらうとピンとくる方も多いかもしれない。

グルーヴィなノリとへヴィなサウンドとともに、キャッチーなリフとハイテンションなラップをのせる独特の音楽性。それこそがRage~の真骨頂だ。

そんなRage~のサウンドとノリにPublic EnemyのMCとDJの2人とCypress HillのMCが組み合わせられているのだから、ちょっと方向性が違うかと思いきや、どう聴いてもRage~なのだ。

Rage~解散後のAudioslaveも良かったが、Prophets Of Rageの方がRage~の頃の音楽性と似ていると思う。 Zack de la Rochaのハイトーン&ハイテンションなラップとは異なる、HIP-HOPの落ち着きつつ太い歌声とそれでいてキレのあるリリックを並べる辺り、Public Enemyの2人のラップの凄さが分かる。

もちろん、アレンジ的にもRage~同様各楽器が上手く絡んでいる。「Hail to the Chief」を聴いてもらえば分かるはずだ。 Brad Wilkが刻む大きいビートに合わせて、Tom Morelloのギター&Tim Commerfordのベースがユニゾンで絡むのが基本。そして、ヴァースでギターが遊びだすが、ベースはあくまでもリフを刻み続ける。そして、コーラス前のキメでユニゾンにもどり、コーラスでユニゾンのリフに戻る。そこに加えてDJ Lordのスクラッチが入り、よりミクスチャー色を強めている。

リフがキャッチーなのは前提として、弦をこすってスクラッチみたいなことをしてみたり、ワーミーペダルを使ってシンセの様な音の跳躍を見せたり、ワウペダルでフィルタリングをしてみたりと、Tom Morelloが好き放題やっても音楽的に安定しているのはTim CommerfordのベースとBrad Wilkのドラムの土台がしっかりしているから。鳴っている音がカッコよければ、HIP-HOPがベースとなっているラッパーが輝かないわけがない。

最近アップされたライブのオープニングがロックファンのツボばかりで、初めてDJの選曲に心打たれたし、そのプレイに恐れ入ったのはまた別の話。しかも、Rage時代の曲もやっていて、これがまたカッコイイし、一緒にジャンプしたくなる。

Rage Against the Machineが好きなら、是非チェックして欲しいし、ロック寄りのHIP-HOPが好きなら余計にチェックして欲しい。

これが自分の言う「信頼と実績」ってやつで、悪く言えばどこかで聴いたことのある音楽なんだが、そもそもその音楽がカッコよければどこかで聴いたことがあろうがなかろうがカッコイイのだ。2010年代の最先端の音楽か?と言えばそうではないと思う。もちろん、 この年代のこのタイミングだからできたコラボなのだけど、過去の栄光がデカいのも確か。

以前自分が書いた大御所の新作に求めるものは何かという話と重なるが、結局イヤホンやスピーカーで聴ける新しい音楽が増えることは嬉しいし、変化していない音楽性の古さも残しつつ、新しいコラボをしている点で程よい変化もあってバランスがいい。真新しい音楽を受け入れるのは大変だが、大好きなものの味変くらいならいい。醤油ラーメンに胡椒を入れたり、味噌ラーメンににんにくを入れる以上に野菜マシマシくらいなんだけど、元々大味だから大丈夫。そう思わざるを得ないくらいProphets Of Rageの鳴らす音は適度なスパイスが効いている。

ちなみに、EP『The Party's Over』もカッコイイのでオススメ。Rage時代の曲もやってるし、入門編としては最適。 

 

こちらからは以上です。

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