Tポイントカードの更新のハガキが届きまして。
そういえば、最近TSUTAYAに行ってなかったなと。
一時期、大きいテレビを買ったんだしとDVDを週末に見ていたりしていたこともあった。
更新のついでに旧作・準新作DVDが1本借りられるという。
あまりDVDを見ている時間がないので、短編で面白そうなのはなかったかなと、書きためてあるEvernoteを見て、手に取ったのは「秒速5センチメートル」だった。
秒速5センチメートルについて
「秒速5センチメートル」予告編 HD版 (5 Centimeters per Second)
『秒速5センチメートル』(びょうそくごセンチメートル)は、日本の新海誠の監督による2007年のアニメーション映画。配給はコミックス・ウェーブ。『雲のむこう、約束の場所』に続く、新海誠の第3作目の劇場公開作品にあたる。
題意は「桜の花びらが舞い落ちる速度」。新海誠が監督、原作、脚本、絵コンテ、および演出までを手掛けた劇場作品で、惹かれ合っていた男女の時間と距離による変化を「桜花抄」、「コスモナウト」、ならびに「秒速5センチメートル」という短編3話の連作で描く構成。全63分。
新海作品の顕著な魅力とされる「映像美」を踏襲しつつも、前作までの特徴とされたSF要素が消失、あくまで「現実」を舞台としている点から前作までとの異質性が指摘されるに至った作品。アジア太平洋映画賞最優秀アニメーション映画賞やイタリア・フューチャーフィルム映画祭「ランチア・プラチナグランプリ」などの映画賞を受賞した。
キャッチコピーは、どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。
2016年の今から考えると約9年前の映画。
舞台となっているのが1990年代~現在(2007年頃)なので、丁度自分が物心がついて記憶と意識がハッキリしている頃と重なる。
アラサー世代には理解しやすい時代設定になっているかもしれない。
未だにHPがあるのもスゴイ。
ジブリ作品もそうだけど、アニメだから子供向けではないところも。
これは子供が見ても分からないアニメだ。
作品全体の感想
最後まで見終わって、全体を流れているもの悲しさの理由が分からなかった。
雪で描く過去、宇宙で描く未来はズルい描き方だと思った。
過去はどんな状態であれ美化されてしまうから、雪の日であっても綺麗な思い出になってしまう。
未来はまだ分からないことが多い宇宙と重ねてしまうと、宇宙という空間と未来という時間は別なものなのに同じにしては未来が違うものに変質してしまう。
だけれど、大事なことはそんなことではなかった。
新海誠監督のDVDの特典としてのインタビューの中で「速さ・距離・時間を描きたかった」と言っていた。
この言葉のお陰でもの悲しさの理由が分かった。
描いていた未来と違うことに直面して、自分の力ではどうしようもないことがある。
自分の思い通りにならない他人であったり、目の前の人生だったり、仕組み上どうしようもならないこと。
速さも距離も時間も自分ではどうしようもないことなのだ。
だけれど、自分や他人の人生をつかさどっている要素で、何とかしようと思っても何ともならない。
こういうことを知って大人になるのだけど、昔思い知ったどうしようもないことがフラッシュバックしたり、最近直面していなかったどうしようもないことに直面して悲しい気持ちになるのだ。
そういう意味では悲しい作品で、この作品を見て鬱になるなんて言われる理由がここら辺にありそうだった。
だから、気持ちが乱れている時に見ない方がいい作品だった。
それぞれのお話
3つの短編から成っているので、その感想も残していきたい。
ネタバレしまくりなので、注意。
①桜花抄
貴樹と明里が出会って、再会するまでを描いた作品。
名言「ねえ、秒速5センチなんだって。桜の花の落ちるスピード。秒速5センチメートル。」が生まれた。
手紙の速さ、電話の速さ、メールの速さと思い通りにいかない電車のスピード。
予定を立てたにもかかわらず雪のせいで遅れる電車へのいら立ちと、明里に会いたい前のめりな気持ちの描き方がとてもよかった。
よく言う言葉で「距離は離れているけど、心の距離は近い」みたいなことだったり、相手を信じることだったり。
もう、セリフは中学1年生なので、中二病。
貴樹の回想の中での言葉で「この先もずっと一緒だと思っていた」とかは結構グサっとくる。
時代設定や年代的にも携帯電話を持っていないので、電車が遅れていることも相手に伝えるのが難しいあたりも、もどかしいと思いつつ良さだったと思う。
今の時代は簡単に人とつながってしまうのだ。
携帯電話やスマホで連絡をとれ、SNSでは状況が分かる。
それに疲れてしまうことがあるくらいだから、余計にそんなことが無い世界を思い出してしまう。
キスだけで変わる世界。
あ~、そんなこと考えた時期もあったな~と。
②コスモナウト
貴樹が種子島に転校して、花苗と出会い、高校三年生になった夏を描いた作品。
「時速五キロなんだって」がスペースシャトルを運んでいるところに出くわした花苗の名言。
原チャリで高校に通う習慣は自分にはなかったので、そこ辺がイマイチピンとこなかった。
自分はチャリ通だったので。
初っ端の宇宙と星空が見えている映像は本当にきれいで、この夏久々に星空を見に行こうと思っているくらい。
自然がキレイで、花苗のサーフィン姿もいい感じだった。
花苗の片思いの感じは凄く良く理解できた。
加速度的に好きになっていくところであったり、気持ちを言い出せないところで会ったり。
相手も優しいと受け入れてくれるので、それが余計につらいところとかも。
最後の「どうしようもなく好きな気持ちがある」という一言が全てを語ってくれていた。
あとは花苗が貴樹も未来が見えないことを分かって、吹っ切れた後にサーフィンに乗る前に姉に「進路どうするか決めた?」と言われて、「決めてない」と答えてから「ひとつずつできることからやる」というのはとても良い姿勢。
こういう姿勢を忘れたくない。
③秒速5センチメートル
貴樹と明里が再会しそうになるが、すれ違ってしまう。
桜の季節に重なる未来と重ならない未来を描いている。
貴樹が仕事を辞め彼女とも別れどん底状態なのに対し、明里は結婚式の直前。
貴樹の積みあがらない未来と明里の積みあがっていく未来。
中心が貴樹になっているので、悲壮感を感じる方が強かった。
貴樹の彼女、理紗からのメールで「1000回くらいメールをして、心は1センチくらいしか近づけなかった」の破壊力が凄い。
もう、表現の暴力。
ビジネスでは数字で表す方が良いことが多いので推奨されているけど、人間関係を数字にしちゃダメだ~。
この最後の作品は自分が止まってしまっていて、他の人が進んでいるように感じている時に見ると致命傷を負う。
最後は2人の未来は重ならないのだけど、それはそれで良かったと思う。
ハリウッド的どんでん返しとか、一難去ってまた一難クライマックスも飽きたので、サラっと終わってくれてよかった。
バッドエンドに見えがちだけど、貴樹は最後微笑んでいる。
まだ、彼の未来は終わっていないから、このお話は続いていくだけ。
秒速5センチメートルのタイトルの下にサブタイトルが書かれていて「a chain of short stories about their distance」となっていた。
そっか、やっぱり距離は大事だったんだと。
速さ・距離・時間をもう一度意識したいと思った。
音楽について
主題歌が山崎まさよしの「One more time,One more chance」で、監督も曲ありきで書いた経緯を話していた。
丁寧に描かれた「One more time,One more chance」のPVといえばそれまでで、最後の「秒速5センチメートル」でこの曲がかかる時のシンクロ感は半端じゃない。
山崎まさよし / One more time,One more chance
でも、この曲よりも自分の頭に浮かんだのが2曲ほどありまして。
1曲はHoobastankの「The Reason」
「I'm not a perfect person」と始まるこの曲のサビは「I've found a reason for me」と言ってから「And the reason is you」と締めている。
まさに貴樹の気持ちじゃなかろうかと。明里に未来を重ねている姿とピッタリ。
桜花抄の音楽はこっちがいい。
もう一つは槇原敬之の「遠く遠く」
これは「秒速5センチメートル」に合う。
「大事なことは 変わっていくこと 変わらずにいること」というフレーズがハマるんじゃないだろうか。
もちろん、離れ離れの貴樹と明里にもピッタリだし。
DVDのメニューで流れているオリジナルの曲も良かった。
悲しいメロディをピアノのみが奏でているところがまた良い。
オリジナルのサウンドトラック欲しい。
最後に
短編というだけあって、正味63分という短さは忙しい合間でも時間をとりやすい。
3つの話で構成されているが、つながりがあるので一気に見た方が良い。
小説にマンガと「秒速5センチメートル」の楽しみ方は色々あるらしい。
せっかく出会った作品なので、全部読んでからさらに感想を深める作品にしていこうと思う。
こちらからは以上です。
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