Jailbreak

新しい世界の切り取り方

In My Lifeから見る楽曲のアレンジのポイントとやりすぎない美しさをドラマー視点から見てみる

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ある時、たまたまTVを付けたら、映画が流れてきた。軍服を着た女性が軍人に囲まれてThe Beatlesの「In My Life」をカヴァーしていた。これがなんとも良いカヴァーで、こんなに美しい歌だったっけ?と思わせられる凄さがあった。

1991年の「For the Boys」という映画で、歌っているのはBette Midler。この人の歌の凄さはもっと後に「The Rose」で知ることになり、調べていくとあの「In My Life」を歌っている人だと分かった。「The Rose」はよくカヴァーされているけど、この人が主演した同名の映画の主題歌として歌ったのがオリジナル。ま、今回はあまり関係ない。

原曲とカヴァーのアレンジの違い

話を戻して、Bette Midlerの「In My Life」は原曲と比べてとてもシンプルなアレンジになっている。原曲はBeatlesらしく4人がバンドで演奏して、かっちりコーラスまでキメている。カヴァーをしようと思う時、どうしても原曲が基準になる。

元々メロディアスでシンプルな構成ではあるが、今のポップスの元となるアレンジ。Beatlesはそういうアレンジが多すぎて、全てが当然の手法になっているのだが。

それをシンプルにエレピと歌だけにして、Bette Midlerの歌唱力を最大限に生かしたアレンジにしてある。ピアノ弾き語りがあるくらいだし、薄味に仕上げるならとても良いパターン。もちろん、素材の味がしっかり出てしまうので、素材が良くないとこんなことはできない。

じゃあ、何でもかんでもピアノの弾き語りにすれば良いかというと、そういうもんでもない。合わない音楽が少ないのでそれなりに仕上がる可能性は高いが、歌がヘタだと台無しになってしまう。ジャンルもポップスやジャズなんかは良いかもしれないが、ロックやましてやメタル辺りはいい感じに仕上げるのは難しいんじゃないかなと。

何事もやりすぎず・引きすぎずにポイントをおさえる

自分がドラムを叩くとき気を付けていることがあるが、ざっとは別記事にまとめている。

色んなことを考えているのだが、結局音楽としてちゃんと仕上がっていればよくて、そのバランスに一番気を使っている。特に自分のバンドではコピーではなくカヴァーにすることが多く、バランスは気を付ける。所謂わびさびをおさえた演奏にしたいのだ。例えば、楽器がメインのイントロや間奏は大きめにダイナミックに叩くが、歌の後ろでは大人しくしてみたり、サビに向かってどんどん大きくなっていくように演奏するのだ。

これを上手いことやってくれている動画をYoutubeで発見した時には鳥肌が立った。

2:07~「In My Life」を題材としてリンゴ・スターのドラムをコピーして見せる。その後、3:07~良いドラムとされているものを叩く。これを見比べて前者と後者はどちらが良いだろうか?

この人はリンゴ・スターが最高のドラマーだと思っていて、リンゴの最低限だがポイントをおさえたドラムが良いんじゃない?と言っている。後者のドラムはキレッキレで手数多めの最近らしいドラムなのだが、ドラムが一番になってしまっていて、ヴォーカルや他の楽器の邪魔になってしまっている。このBeatlesの原曲アレンジには後者のドラムはやっぱりやりすぎなのだ。もちろん、原曲のイメージ通りにするのが簡単で、そのイメージを壊すのはとても難しいのは確かだ。後者のバージョンもガッツリ歪んだギターとゴリゴリのベースでメタルバージョンとして演奏するなら良いかもしれない。しかし、やりすぎは禁物なのだ。

最後に

別に全て大人しくしろと言っているわけではない。ちゃんとコンセプトがあって、アレンジとして成り立っていれば、楽器が多少うるさくても問題ないことだってある。例えば、名曲をとにかくパンクに仕上げるMe First Gimme GimmesみたいなのはOKだと思っている。

バンドで楽器を担当すると、各楽器に楽器毎の役割がある。特に自分の様なヴォーカルが入っているバンドの場合、音楽の中心はヴォーカルだ。なので、ヴォーカルが気持ちよく歌ってもらえるようにし、ヴォーカルの引き立て役だということを忘れないようにしている。たまにドラマーでもここが分かっていなかったりする人は見かけるし、他の楽器だとさらに多い印象がある。バンドの評価として、一番に「ヴォーカルが良かったね」と言われるのがよくて、「バックはちょっと大人しかったね」くらいでよいとおもっている。たまに楽器が分かっている人から「スゴイ安定感だった」とか「めっちゃいい音鳴ってたよ」なんて言われるとそれはそれで嬉しいのだけど、そればかり目指すのは全体のバランスを崩してしまう。

あくまで、自分の役割に徹することが大事。

こちらからは以上です。

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