今回から、2000年代のロックバンドの名バラードです。
前回まではこんな感じでした。
いよいよハードロックの流行が終焉に向かい、グランジ・オルタナティブの流れが強くなっていきます。
そんな中でも、王道のパワーバラードをやり続けるバンドもいて、2000年代に入ったといっても、昔ながらのロックが絶滅危惧種になったわけではありません。
- Foo Fighters「Next Year」(2000)
- Marvelous 3「Radio Tokyo」(2000)
- Burning Rain「Cherie Don't Break My Heart」(2001)
- Gotthard「Heaven」(2001)
- Aerosmith「Fly Away From Here」(2001)
- SR-71「My World」(2002)
- 3 Doors Down「Here without You」(2002)
- Coldplay「In My Place」(2003)
- Hoobastank「The Reason」(2003)
- Linkin Park「Numb」(2003)
- 最後に
Foo Fighters「Next Year」(2000)
Foo Fightersは元NirvanaのドラマーDave Grohlが、Nirvana解散後にフロントマンとして始めたバンドである。
Nirvanaの影響はあるため、グランジ・オルタナティブの流れがある。
この「Next Year」は『There Is Nothing Left to Lose』に収録されており、アルバムの中でも割とポップな曲調である。
ブリティッシュポップのような、シンプルな歌の構成とコード進行で成り立っている。
さらに、Daveの歌は1曲を通してクリーンヴォイスで、普段のガナるロックスタイルとは一線を画している。
今までのハードロックをベースにしたバラードとは異なるが、オルタナティブロックバンドのブリティッシュポップスタイルによるバラードだと思ってもらうとよいだろう。
Marvelous 3「Radio Tokyo」(2000)
ギターヴォーカルであり、プロデューサーとしても活躍するButch Walker率いるMarvelous 3。
バンドとしては、最後の作品となってしまった『ReadySexGo』に収録されている、「Radio Tokyo」は、ポップなロックのバラードである。
そして、Butch Walkerが奥田民生を好きで、後にPUFFYのプロデュースを行い、PUFFYが「Radio Tokyo」をカヴァーしている。
2000年に入ってくると、メロコアやパンクといった軽いノリとメロディの美しさが特徴的な音楽が流行ってきていた。
90年代の暗い時代を超えて、明るい音楽が出てきた。
Marvelous 3の音楽性的にも、根明っぽさとメロディアスさがあるので、非常に気持ちよく聴けるロックである。
Burning Rain「Cherie Don't Break My Heart」(2001)
2000年を超えたからと言って、時代の流れに乗るバンドばかりではない。
元Lion/Bad Moon RisingのギタリストDoug Aldrichと、ヴォーカルKeith St Johnによって結成されたバンドである。
Doug Aldrichは後にDioやWhite Snakeに加入して、ハードロックの王道を貫いていくギタリスト。
Keith St JohnもハードロックバンドのMontroseの活動で知られている。
Burning Rainはそんな2人が中心となったバンドで、王道のハードロックを貫いている。
「Cherie Don't Break My Heart」は哀愁漂う雰囲気と、別れを感じさせる歌詞がマッチしていて、楽曲のパワーが倍増している。
基本はギター・ベース・ドラムの構成だが、裏で薄くシンセが鳴ることで、ソリッドな楽器のパワフルさとポップさのバランスを取っている。
悲しい時に悲しい雰囲気の歌を歌う。そういうバラードである。
Gotthard「Heaven」(2001)
スイスの国民的ハードロック・バンドGotthard。
初期から王道のハードロック路線を貫いている。
そのGotthardが少しポップな要素が多い5thアルバム『Homerun』で発表した本作。
スイスでは、ナショナルチャートで1位を獲得している。
王道のピアノから始まり、キャッチーなコーラス、やり過ぎないギターソロもあり、まさにパワーバラード。
そこに古さを感じないのは、ピアノやシンセを上手く使いながら、ギター・ベース・ドラムのサウンドを2000年代のものにしているから。
ちなみにこの曲、スイス出身の格闘家アンディ・フグに捧げた曲であると言われている。
元々、ヴォーカルのSteve Leeと親交があり、入場曲の「FIGHT FOR YOUR LIFE」を提供している。
Aerosmith「Fly Away From Here」(2001)
Aerosmithというと、1973年にデビューしてから、長く第一線で活動するアメリカを代表するロックバンドの一つである。
純粋なロックというよりは、その時その時でR&Bやロックンロール、ファンク、ブルースとルーツミュージックの組み合わせる比率を変えながら、音楽性と楽曲の雰囲気を変えながらオリジナリティを出してきた。
そんな中、初の全米シングルチャート1位を獲得したのが、映画アルマゲドンで使用された「I Don't Want to Miss a Thing」。
そして、「I Don't Want to Miss a Thing」が収録されているアルバムが『JUST PUSH PLAY』である。
やはり「I Don't Want to Miss a Thing」はかなり有名だが、今回のルールでいうと「The 40 Greatest Power Ballads Playlistにある曲」に該当するので、対象外とする。
Aerosmithは「Angel」、「Cryin'」、「Fallen Angel」と名バラードが多い。
そこで、敢えて推したいのは、「Fly Away From Here」である。
実は、曲を書いたのはAerosmithのメンバーではなく、Marti Frederiksen、Todd Chapmanという2人のライター。
しかも、シングルとして発表するもTOP100にも入らないという残念な結果であった。
とはいえ、楽曲としては王道のパワーバーラードで、歌っていることも「ここから二人飛び立とう」という前向きなもの。
SR-71「My World」(2002)
SR-71は2000年に「Right Now」がヒット。
一躍スター街道を駆け上がるかと思いきや、2ndアルバム『Tomorrow』で失速。
バンドメンバーが脱退していくという数奇な運命を辿った。
「Right Now」が収録された1stアルバム『Now You See Inside』では爽やかなポップロックを聴かせたのに対して、『Tomorrow』では雰囲気もルードになり、へヴィでパワフルなサウンドに路線変更した。
そのせいか、売り上げ不振を生んだのは確かである。
では、『Tomorrow』が駄作だったかと言えば、そんなことはない。
このアルバムの中でもバラードは存在していて、「My World」はその最たる例である。
サウンドこそヘヴィなロックで、ヴォーカルMitch Allanがガナり気味に歌っているため、エッジが強めに聴こえる。
その中にも美しいメロディがあり、J-POPにも通じるメロディアスなコード進行がある。
歌詞も感傷的で"僕の世界には 君しかいないんだ"なんて言ってしまうくらいに、ストレートに愛を表現している。
『Tomorrow』にはこの曲のアコースティックバージョンが収録されているのだが、そんな音楽の良さが、よりストレートに表現されている。
イケメン風でさわやかなボーイズグループが、次のアルバムになると突然無精ひげを屋加え、ファッションの基本トーンが黒になり、鋲が施された革ジャンを着たのファンが離れるのは分からなくもない。
しかし、Mitch Allanのメロディの良さは時代を超えるには十分である。
3 Doors Down「Here without You」(2002)
3 Doors Downはアメリカのロックバンド。
グランジやポストロックをベースとしながら、ハードロックやサザンロックを取り込んだオルタナティブロックスタイルである。
日本人にも分かりやすいメロディと、抒情的な歌詞が特徴的である。
そんな彼らの代表曲とも言えるパワーバラードが「Here without You」である。
クリーンなギターのアルペジオで始まり、ストリングスで厚みを出していき、バンドが入っていくことでどんどん盛り上がるスタイル。
とはいえ、90年代までパワーバラードとの違いは、ギターソロが無いことである。
この辺りが2000年代に入ってオルタナティヴロックが流行り、”ギターソロカッコ悪い”という風潮を端的に表している。
この曲では、ブリッジ後にストリングスがリードを取ることで、ロックよりもよりポップで聴きやすいものに仕上げている。
この辺りの流行りが反映されているのが、非常に特徴的である。
Coldplay「In My Place」(2003)
イギリス出身のロックバンドColdplay。
2002年にリリースされた2ndアルバム『A Rush of Blood to the Head/静寂の世界』に収録されており、全英シングルチャート2位を獲得している。
ドラムのスローだが重たいビートに、溶けるようなギターのアルペジオが共存したソフトなロックである。
一方、Radioheadの「Creep」ような、あまりきれいではない言葉で綴られた音楽とは異なり、シンプルで語数が少なくので、解釈が必要な歌詞でもある。
オルタナティブロックの側面と、歌詞の抽象性のブリティッシュロックらしさが共存する、不思議な曲。
Hoobastank「The Reason」(2003)
2000年代ラウドロックから1曲。
Hoobastankは2001年にデビューし、「Crawling in the Dark」は全米最高68位とまあまあの成果を出しつつ、レコード会社との契約の関係で背水の陣となってしまった2ndアルバム『The Reason』の2ndシングル「The Reason」が大ヒットした。
Billboard Hot 100で最高2位、Modern Rock Tracksで1位を獲得、第47回グラミー賞Song Of The Year部門にもノミネートされている。
「僕は完璧な人間じゃないんだ」と始まり、自分にとって生きる理由を見つけて、それが君だというメッセージ。
分かりやすいシンプルな歌詞の意思と、ギターのキャッチーなアルペジオの浮遊感、コーラスでのパワフルなサウンド、それを貫くDouglas Robbの歌声。
前に出るには十分なパワーがある楽曲である。
しかも、Douglas曰く、この曲はそれほど時間がかからず書ききったらしい。
これが売れなければ解散という背水の陣で発表した本作が、グラミー賞まで獲得してしまったのだから、夢物語は終わらない。
Linkin Park「Numb」(2003)
アメリカのロックバンドLinkin Park。
1stアルバムからスマッシュヒットを飛ばし、2ndアルバム『Meteora』の中で一番ヒットしたのがこの曲。
アルバム全体が13曲で40分を切るようなコンパクトさでありながら、ラップやヒップホップに、ロック・メタルといったソリッドなサウンドがミックスされたミクスチャーサウンドは、当時の最先端のサウンドだった。
歌詞の内容としては、理想を押し付ける親に対する子供の視点で書かれている。
Numbは痺れる、無感覚といった意味で、親の期待に応えようとして、いい子を演じた結果、疲れ切って無感覚になるということである。
Jay-Zとのコラボ「Numb/Encore」は最高のマッシュアップで、「Numb」にのせてJay-Zの「Encore」をラップしていく。
ベースの「Numb」がカッコいいのはもちろんのこと、もともと打ち込みを使いHip-Hopの土壌を持っているLinkin Parkに、Jay-Zが入って上手くいくのは当然といえば当然。
マッシュアップで2度おいしい「Numb」はそのままでも、素材としても名曲である。
最後に
今回のSpotifyプレイリストはこちら。
いくつかの楽曲が見つからなかったので、悪しからず。
こちらからは、以上です。
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