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Jailbreak

新しい世界の切り取り方

【レビュー】SCANDAL「YELLOW」・Silent Siren「S」・SHISHAMO「SHISHAMO 3」を比較レビュー

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2016年3月2日は3つのガールズバンドのアルバムリリースが重なった。

SCANDAL「YELLOW」、Silent Siren「S」、SHISHAMO「SHISHAMO 3」の3枚である。

 

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珍しいタイミングなので、各アルバムのレビューとともに比較を行っていく。

結論から言うと、一番良かったアルバムはSilent Siren「S」だった。

 

SCANDAL「YELLOW」

YELLOW(初回生産限定盤)(DVD付)

<収録曲>

1.Room No. 7 ★オススメ曲★2.Stamp!(21stシングル)
3.LOVE ME DO(ブルボン「フェットチーネグミ」タイアップ曲)
4.Morning Sun(映画『猫なんかよんでもこない。』主題歌)
5.Sunday Drive
6.今夜はピザパーティー
7.ヘブンな気分
8.SUKI-SUKI
9.LOVE
10.Sisters(22ndシングル)
11.Happy Birthday
12.ちいさなほのお(映画『SCANDAL “Documentary film「HELLO WORLD」”』主題歌) ★オススメ曲★
13.Your song -English ver.-

 

前作「HELLO WORLD」から1年ぶりとなる7枚目アルバム。

アルバムのボリュームとして13曲 52分4秒は短く感じるかもしれないが、全体にコンパクトに収まった曲が多いということだ。

 

2006年結成、2008年メジャーデビューをしている。活動が10年になる。

昨年はワールドツアーに出てどんな成長を見せてくれたのかが見どころだ。

 

良かった点

 

アルバムとして様々なサウンドの楽曲を提供してくれている。

1曲目の「Room No. 7」からインストで幕開けするあたりは正直驚いた。いつ歌が入るんだろう?と思っていたがリフが2回目に差し掛かるころに「これはインストなのか!?」と思って聴いて初めて腑に落ちる感じがした。

 

EDMの雰囲気を持った3曲目のリードトラックである「LOVE ME DO」や22ndシングルである10曲目の「Sisters」からはロックバンドからさらに幅を広げた音楽への挑戦がうかがえる。

 

そして、もともとダンスビートはやってきたバンドなので、4つ打ちのリズムはお手の物なんだろうと思ってしまう。

 

7曲目の「ヘブンな気分」はオルタナ感たっぷりで最近のSCANDALが見せてくれた音楽とは全然違うが、とても良い面が出ておりバンドの新しいカラーとして今後もこんな曲を作ってほしい。

9曲目の「Love」ではレゲエ調のリズムである。ここまでくるとアレンジの幅広さは目を見張るものがある。

 

もちろん、お得意のストレートなロックは忘れてはおらず、2曲目の「Stamp!」で聴かせるミディアムロックや12曲目の「ちいさなほのう」で見せる王道ロックバラードや、13曲目の「Your song -English ver.-」のハイテンポなロックは今までも見せてくれたSCANDALの姿がそこにあった。

 

全体を通してヴォーカル&ギターのHARUNAの歌声が伸び伸びとしてとてもよい。

今まででは威勢よく歌おうとしたせいなのか、ガナることはないが余計に息を強めに吐くことで勢いを出すことがあった。

しかし、今回は余計な力が抜けて全体にポップな曲も多いため、とてもスッキリしている。

 

 

今まで積み上げてきたロックサウンドの他に、今まであまりやってこなかったサウンドやアプローチをして生み出したアルバムであることが凄く伝わってくる。 

 

悪かった点

 

 

良かった点の裏返しでもあるのだが、新しいことに挑戦したのは良いのだがその新しく始めたことの粗が目立つこと。

 

1曲目の「Room No. 7」はハイテンポなシャッフルだが、ドラムが全然ハネていない。

その原因は3連符の最後の音、つまりシャッフルが成り立つために大事なところを大事にできていない。

5曲目の「Sunday Drive」もバウンスになっており、やはりリズムが跳ねているのだけど、こっちはちょっとリズムが硬すぎる。

 

その粗さも含めてセッション感を出したかったというのは構わないが、日本人が苦手とするシャッフルをプロとして演奏するなら、ちゃんとしたクオリティで出さなければならないじゃないか。

 

9曲目の「Love」ではレゲエ調のリズムも結局手数が出ず、ポップにやりたいはずなのに締まりのない曲になってしまったのは残念。

 

もう一つ、ずっと変わっていないのがMAMIのギターソロパートが全然歌っていないのだ。そのため、ソロが全然カッコよくないし、楽曲から浮いてしまう。

テクニック志向ではないし、しっかりと良い楽曲が書けるにも関わらずギターが歌わないのは本当にもったいない。

 

あと、個人的に「ちいさなほのお」は凄くいい曲だと思ったが、あのベースの音は合わないと思う。

歪ませるのは悪くはないが、せめてAメロ・Bメロはもう少しトレブルを抑えてバキバキ感を抑えて欲しかった。

やってもチャットモンチーの「世界が終わる夜に」くらいまでだ。

 

色々やったのは良かったが、色々やりすぎてパワーがとっ散らかってしまって1曲1曲の色が淡くなって印象が弱まってしまった。

 

総評

 

全体としてアルバム1枚を通して聴いていられるアルバムで、その中で好みの曲を探していくような聴き方が良い。

その好きなタイプの曲が以前の楽曲にはない可能性もあるので、必ずしも過去に遡って聴く必要はないかもしれない。

 

前作の「HELLO WORLD」でもメンバーが中心となってほとんどの曲を書いているので、ソングライティングの力は確実に上がっている。

アルバムタイトルが「YELLOW」だけれどもっとカラフルでポップなアルバムに仕上がっている。 

 

本人たちの楽曲解説のあるので、曲を聴く際の参考にしてみてはいかがだろうか。


SCANDALとニューアルバム「YELLOW」を聴こう 今夜はピザパーティ!(前編)


SCANDALとニューアルバム「YELLOW」を聴こう 今夜はピザパーティ!(後編)

 

エキサイトのインタビューもいい感じ。

SCANDAL 新作『YELLOW』を完成させ、「今、一番バンドを楽しめている」/インタビュー1 - エキサイトミュージック(1/4)

SCANDAL 新作『YELLOW』にはポップでハッピーでファンキーな曲が集まってる/インタビュー2 - エキサイトミュージック(1/3)

 

 

Silent Siren「S」

 

S(初回生産限定盤)(DVD付)

 <収録曲>

1. チェリボム
2. 八月の夜(「バンタンデザイン研究所サマーセミナー」CM ソング)
3. milk boy
4. ハピマリ ★オススメ曲★
5. Love install
6. hikari (『通学シリーズ 通学電車』主題歌)
7. 吉田さん
8. レイラ
9. alarm (日本テレビ深夜連続ドラマ「いつかティファニーで朝食を」Season1 主題歌)
10. nukumor
11. C.A.F.E.
12. スローモーニング (日本テレビ深夜連続ドラマ「いつかティファニーで朝食を」Season2 主題歌)
13. secret base ~君がくれたもの~ (フジテレビ系全国ネット スペシャルドラマ
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』エンディングテーマ)

 

前作3rdアルバム「サイレントサイレン」から1年経たずにリリースした4枚目のアルバム。

カヴァー曲1曲を含む13曲のボリュームでどれだけ彼女たちの色が出ているか見ていきたい。

 

良かった点

 

やっと代表曲と呼べる曲ができた。

4曲目の9thシングル「ハピマリ」は間違いなくSilent Sirenの代表曲だ。


【Silent Siren】「ハピマリ」MUSIC VIDEO full ver.【サイレントサイレン】

 

バンド全体のサウンドはロックに寄りすぎず、キーボードとギターのバランスも良い。

さらに今までも得意としてきた裏打ちダンスビートがサビで炸裂する。

歌詞も結婚をテーマとしており、若い女性にとっては多少なりとも共感を得るものになっているのではないだろうか。

 

その他にテンポの速い曲を演奏してもモタることのない演奏には目を見張るものがあった。

2曲目の「八月の夜」、3曲目「milk boy」、7曲目「吉田さん」と激し目の演奏に対して、ドラムの手数が減ることがなくしっかりと締めるのは流石だ。

 

ミドルテンポも良かった。

6曲目の「hikari」はサビの歌詞は未来を向いていて力強いのだが、それをしっかりとしたビートがその感じをさらに力強く聴かせてくれる。

 

 

最初でも触れたが全体的にアレンジのせいかギターとキーボードのバランスが良い。

Silent Sirenはギターロックをやっている印象はない。

それはキーボードとギターがバランスよくバッキングを担っていて、ゴリゴリバキバキとしたロックギターの音が構成する要素をキーボードがいい具合に中和してくれている。

 

Silent Sirenが代表曲を作り、ガールズポップバンドとしての価値を創造できたアルバムと言っても過言ではない。

 

悪かった点

 

一番残念な点は歌の力不足。

Silent Sirenの弱点はヴォーカルの吉田菫の歌唱力の無さである。

今回のアルバムは特にボーカロイド感が増している。

元々甘くて可愛らしい声がしているのだが、それがここ3枚のアルバムでどんどん作られた抑揚のないペラペラの歌になってしまっている。

まだ、ミニアルバム「サイサイ」の頃の方が歌としての表現があった。 

いっそのことボーカロイドにするか、きゃりーぱみゅぱみゅのような路線で歌った方がまだ良いかもしれない。

 

同じように浮いているのが梅村妃奈子のドラム。

他のメンバーよりも楽器が上手で、ロックが好きなことが伺えるドラミングをしている。

そのおかげで良い点でもあるビートがしっかりしていて、ハイテンポな曲でもブレず突っ込んだ演奏ができている。

しかし、それが逆にドラムだけしっかりしすぎていて、他の楽器とのバランスが悪い。

ドラムだけ細々うるさいことをやっているバンドはカッコ悪い。

また、ポップバンドとしての道が良いと自分は感じているので、あのバスドラを絡ませるロックなフィルインはやらない方がいい。

同様に「八月の夜」、「レイラ」、「スローモーニング」のラストで聴こえるチャイナシンバルで刻むフレーズも完全にロック、もしくはハードロックやメタル寄りのアプローチなので合わない。チャイナシンバルを使うくらいなら、スプラッシュに変更した方がよさそうだ。

フィルインはタムを増やしてメロウなタム回しをしてみてはどうだろうか。もしくは、エレドラで新しい音色にチャレンジしても面白いかもしれない。

 

楽曲が全体的に間延びしているのも気になった。

アレンジ的には1番と2番と変えている曲もあるのだが、どうも同じ調子で続いている印象がぬぐいきれず、「まだ終わらないの?」と思ったことが何度かあった。

それはサビでの盛り上がりに欠けるせいであったり、ヴォーカルの歌い方が変わらないせいであったり、アレンジのせいであったりするので、原因は複合的で複雑である。

 

最後に個人的に「secret base ~君がくれたもの~」のカヴァーは悪くないのだが、いかんせん歌がイマイチなので、どうも良いと思えなかった。

前述のSCANDALのカヴァーの方が良いと思うし、歌唱力だけで言えば、ダイアナ・ガーネットのカヴァーの方が良い。

 

ところどころ大きなマイナスがあるのは仕方ないが、歌もののバンドで歌がイマイチなのはいただけない。

 

総評

 

何といっても代表曲を発表できたことが大きい。

歌唱力に難点はあるが、「ハピマリ」に関してはその歌声がハマっているので問題はない。

バンド全体のサウンドも安定してポップ。

ただロックバンドでゴリゴリの音を求めるでもなく、ポップさ、もしかすると可愛らしさを持ったバンドになっている。

 

何を売りにしていくか、どこを磨いていくかがやっと分かって来たように思える作品だった。

 

SHISHAMO「SHISHAMO 3」

SHISHAMO 3

 <収録曲>

1. ごめんね、恋心★オススメ曲★2. 中庭の少女たち
3. 生きるガール
4. 笑顔のとなり
5. 手のひらの宇宙
6. 推定移動距離
7. 女ごころ
8. 熱帯夜(3rdシングル) ★オススメ曲★
9. 旅がえり
10. 君とゲレンデ(4thシングル)<オススメ曲★11. みんなのうた

 

前作SHISHAMO 2から丁度1年ぶりの3rdアルバム。

シングル2枚を挟んでどのように変化し、成長したかを見ていきたい。

 

良かった点

変わらないSHISHAMOの良さと少し変わったSHISHAMOが垣間見える。

1曲目の「ごめんね、恋心」から早速1発食らう。

歌とギターだけの始まりで、いきなりこう歌いだす。

もう決めた

私、人里を離れて生きていくの

携帯電話もSNSも

もう絶対に見たりしないわ

そこから一気にテンポアップして、歌詞を畳みかける。

こんな具合にいつものSHISHAMOからパワーアップした状態で始まるこのアルバムはいいアルバムになりそうだと思った。

2曲目「中庭の少女たち」、3曲目「生きるガール」まではいつも通りのSHISHAMOが聴ける。他にも今までのSHISHAMOという意味では10曲目4thシングルの「君とゲレンデ」である。


SHISHAMO「君とゲレンデ」

 

こういうスタジオで合わせて、エイ!っと作った感じはとても良い。

ところどころロックの初期衝動を感じられるのも特徴。

音楽に対して・楽器のプレーヤーとして反応してしまう姿が非常に良いのだ。

 

 

新しい面を見せてくれたのは4曲目「笑顔のとなり」と3rdシングルの「熱帯夜」。


SHISHAMO「熱帯夜」

 

今まで見せてこなかったメジャー7thや9th等のテンションコードを使ったシティポップ風の響きの中でのスライドを絡めたギターのカッティング。

これをやるとオシャレに聴こえるのだ。

今までのアルバムも一応、確認したがこれは初挑戦ではないだろうか。

そして、案外ハマっている。

 

11曲目の「みんなのうた」ではホーン(管楽器)が入ったアレンジだ。

あまり主張するホーン隊ではなかったが、普段のスリーピースバンド感を感じさせなくすることができるのがレコーディングマジック。

ライブで再現できなくとも、アルバムの中で価値のある曲はあるのである。

 

歌詞もSHISHAMO節を炸裂させているし、独特の恋愛に対して下から攻勢に出る形勢を描かせたらやはり上手い。

「君とゲレンデ」は今までシングルで描いてきたような世界観で、SHISHAMOが好きならハマる可能性大だ。

ダメな女の子を描かせたら天下一品のヴォーカル&ギターの宮崎朝子がいるのだから間違いない。

 

今まで通りSHISHAMOの良さが見える作品で、今までのアルバムの延長戦にあるサウンドや歌詞となっている。

 

 

悪かった点

 

良い点とも重なるのだが、良くも悪くも今まで通り。そして、過去を超えられていない。 

路線変更をした楽曲で見せた新しい顔はあったが、それもあくまで今までの延長線上にあったもの。

完全に真新しい音はホーンを入れたくらいで、それ以上はなかった。

アルバムなのだから、1曲くらいめちゃくちゃ実験的な楽曲があってもいいころだ。

超えられなかった過去は1stシングル「君と夏フェス」、2ndシングル「量産型彼氏」が入った2ndアルバム「SHISHAMO 2 」である。

2枚のシングルはSHISHAMOの代名詞となっており、今回の3rd4thシングルも良いのだが、それを超える作品にはなっていない。

結局、全体として光る曲はあるが、キラキラと光り輝く曲はなかった。

 

3枚目のアルバムから勢いが落ちたガールズスリーピースバンドがある。 

チャットモンチーである。

「耳鳴り」、「生命力」といい流れできたチャットモンチーが発表した3rdアルバムが「告白」だったのだが、明らかに作品の質が落ちた。

1曲に掛けられる時間が変わったこと、過去のストックがどんとん使えなくなったことが原因の一つであると思う。

この辺は別記事で書いている。

 

dankantakeshi.hatenablog.com

 

チャットモンチーは4thアルバムにはドラムの高橋 久美子が脱退してしまったため、全然別物になってしまった。

そんなバンドを知っているだけに、SHISHAMOはそうなって欲しくないと願うばかりである。

 

 

SHISHAMOのアルバムとしてはSHISHAMO3よりもSHISHAMO2をオススメしたくなる。 

 

 

総評

 

多少の変化はありつつも、今までの延長線上にできたアルバムだった。

今までのSHISHAMOの音楽が好きなら聴いてみた方が良いし、少しではあるが新しい面も見えているので今までのファンは楽しめる。

 

 楽曲のクオリティが落ちてはいないし、キャッチーさもある。

 アルバム全体としても聴き飽きないアルバムに仕上がっている。

 

 

3枚のアルバムを比較して

 

ロックから幅を広げたSCANDAL、ポップに攻めるSilent Siren、ロックの泥臭さと個性のSHISHAMOの三者三様。

 

どのバンドも前作からほぼ1年でのアルバムリリースであり、間にシングルのリリースも行っている。

ライブとリリースとを重ねて同じ程度には活動をしている点は同じである。

その規模はやはりSCANDALが一番大きい。

 

 一人のソングライターに依存しているSHISHAMOに対して、みんなで曲を作るSCANDALも違いがある。

やはり、一人のソングライターでは同じような曲ばかりできてしまう感じは否めない。

 

どのバンドのアルバムも1枚を通して聴けるレベルの楽曲を揃えており、退屈しないのはいい傾向である。

自分もアルバムを全曲聴くときはちゃんと曲順に沿って聴くことにしている。

全体のクオリティが高いのはSCANDALだったが、代表作が入っているSilent Sirenは強い。

個人的にはSCANDALを聴くなら1stアルバムの「BEST★SCANDAL」か6thアルバムの「HELLO WORLD」である。

そして、SHIHAMOを聴くなら2ndアルバム「SHIHAMO2」だ。

そのアーティストの一番おススメできるアルバムという意味で一番良かったアルバムはSilent Siren「S」である。 

 

 

最後に

 

ガールズバンドというだけで、3つのバンドを聴き比べてみたが、キャリアも音楽性も異なるので比較は難しかった。

さらに、各アルバムを聴いていく中でも発見があり、結局過去の作品とも比べることが必要になった。

 

言語化してみて初めて気づくこともあったし、自分が音楽のどこを大事にしているかも意識させられることになる。

それには「良い音楽とは何か?」という問いに対する答えが必要になる。

一つの答えとして、理屈じゃなく「良いものは良い」と言わせる作品はいい作品だということ。

 

またいつかこのバンドのアルバムを比較できることを楽しみにしている。

 

 

こちらからは以上です。

 

 

 

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