Jailbreak

新しい世界の切り取り方

音楽界の情熱大陸としてのTHE FIRST TAKE

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THE FIRST TAKEのYouTubeの総再生数が8億回を超えている。

自分が知ったのは、RiSAの「紅蓮華」がTHE FIRST TAKEバージョンとしてYouTubeにアップされたものを聴いたのがきっかけだった。

RiSAの「紅蓮華」は2020年上半期に自分がパワープレイした10曲のうちの1曲である。

THE FIRST TAKEの魅力について、書いてみようと思う。

 

一発撮りが良い

他の動画も見てみたが、THE FIRST TAKEのバージョンはなかなか良い。

THE FIRST TAKEのコンセプトはこのように書かれている。

白いスタジオに置かれた、一本のマイク。
ここでのルールは、ただ一つ。

 

一発撮りのパフォーマンスをすること。
それ以外は、何をしてもいい。

 

一度きりのテイクで、何をみせてくれるだろうか。
一瞬に込められた想いを見逃すな。

https://www.thefirsttake.jp/より引用

大事なキーワードは「一発撮り」である。

近年の音楽の録音では、多くが切り貼りをされている。

つまり、何度か歌って一番良いものを選ぶ、パーツ毎に切り刻んで少しずつ録音していくということよくあるのだ。

もちろん、和田アキ子のように一発撮りで終わらせる歌手もいるが、今の音楽の録音方法の主流だと言っても過言ではない。

 

一発撮りには勢いがある。

一曲を通して歌うので、完璧な切り貼りよりも、粗さが出ることがある。

しかし、その粗さがライブっぽさであり、人間が歌うことの価値であったりする。

そして、当然実力も試される。

1番最初に参加したadieu(上白石萌歌)の緊張感は、実力を試されるからこそ、醸し出されたものだったように思う。

丁寧に、それでいて力まないで歌う。

これはどう考えても、難しいことをやっている。

 

一発撮りには、緊張感が故のドラマがある。

例えば、LiSAが「炎」を歌った際は、歌い終わりに涙する姿が残されている。

さらにアクシデントとしてはKANABOON-谷口鮪が歌詞を間違う様子が残っている。

3:10頃の歌いだしを間違っている。

こういう音や映像が残っているのは、現在では少し珍しい。

今そこで歌った証が残されている。

 

他にも歌う前後の姿や発言もアーティスト毎に違うので、楽しめるポイントとして、チェックしていただきたい。

参加するアーティストがよい 

参加するアーティストが新旧入り乱れていて、非常に面白い。

どうしても、ソニーミュージックが主体のため、ソニー系のアーティストが多いのは仕方ない部分があるが、 それ以外のレーベルからもアーティストが参加している。(その関係もあってか、モニターヘッドホンがSony製のものが使用されている)

2020年に売れまくったRiSAやYOASOBI、DISH//あたりの、現在勢いがあるアーティストから、鈴木雅之、フラワーカンパニーズ、ゴスペラーズといったベテランまで参加している。

こういうセレクトが、テレビ番組の「情熱大陸」のような雰囲気がある。

今勢いがあるアーティストは、勢いがあるだけあって、キラキラした新しさがある。

ベテラン勢にはベテラン勢の良さがある。

鈴木雅之の大人の歌声、フラワーカンパニーズのバタバタな楽器隊から始まる「深夜高速」のラストに向けてまとまっていく感じや、ゴスペラーズの相変わらずの上手さ。

グループ魂のいつも通りの本気のおちゃらけが炸裂するのも、 THE FIRST TAKEらしさだろうか。

 

THE FIRST TAKEの価値

 知らないアーティストに出会う機会として、THE FIRST TAKEには価値がある。

例えば、こんなことを考えてみる。

今まで知っていることは忘れて、全くアーティストの情報を知らなかったとする。

そんな情報としてはまっさらな状態で、THE FIRST TAKEの動画を見聞きする。

この時伝わるのは、その音楽の良さであり、アーティストの魅力である。

もちろん、そのアーティストはある程度のフィルタリングがされていて、実力があることが証明されている。

これは、ある種の評価の安心をベースとして、音楽の質の高さを提供している。

 

それ以外にも、価値はある。

それは、既知のアーティストの楽曲に対して、新しい面を見出せる可能性である。

その楽曲のTHE FIRST TAKEバージョンを見られるわけで、それはライブバージョンともいえるし、アコースティックバージョンだったりと、そのアーティストによって、アプローチが異なる。

例えば、日本的ラウドロックスタイルのRiSAの「紅蓮華」がTHE FIRST TAKEではピアノ一本で歌うスタイルに代えている。

もちろん、原曲のパワフルさはあったうえで、ピアノ1本スタイルが正反対のヌケ感とRiSAの歌の繊細さを表現してくれていて、原曲とは別な表現になっている。

こういう楽曲の新しい面は、ライブや音源等での〇〇バージョンみたいな形でしか聴くことができない。

そういう体験ができるということに価値がある。

 

少し気を付けた方がよい点

諸手を挙げて、 THE FIRST TAKEは良いとは言えない。

特に気を付けたいのが、あくまでTHE FIRST TAKEでの楽曲は、THE FIRST TAKEバージョンであるということである。

つまり、元となった音源と異なることが多い。

アレンジが大きく違って、アコースティックバージョンのようになっていることもあり、楽曲の印象が変わる。

そのため、是非とも原曲を聴いていただきたい。

いきなり特定のバージョンを聴くことによる、良し悪しがあるというだけなので、より好きになることもあるが、あまり好みではなくなることもあるという点が注意ということ。

 

THE FIRST TAKEを音楽のアンテナとして使うのもアリ

先述の通り、参加するアーティストは、なかなかいいところが選ばれている。

ある程度のフィルタリングが行われているので、チェック対象にするのが良い。

昔であれば、オリコンチャートのようなチャートで音楽のトレンドのチェックができたが、今はあまり関係なく、Spotifyのバイラルチャートみたいなところにトレンドがあったりする。

チャートを追うのも良いのだが、そこで別な角度としてTHE FIRST TAKEを使ってみるのは良いと思う。

 

トレンドを追う以外にも、ベテラン勢も参加しているため、知らなかったベテランアーティストに出会うこともできる。

案外トレンドではない、過去に売れたアーティストの音楽を聴こうとすると、過去のチャートを探して聴いたり、まとめやコンピレーションアルバムのように、色々な手段がありすぎる。

そこで、THE FIRST TAKEに出てきたアーティストをとりあえずチェックするというフローに入れてしまうのは、効率的に音楽の情報を収集する方法として、有効だと思う。

 

最後に

音楽と出会う機会、音楽の価値を掘り起こす機会としてのTHE FIRST TAKEはとてもよい。

旬なアーティストから、実力派のアーティストや、ベテランのアーティストまで幅が広い。

そういう幅を持った機会は、情熱大陸とよく似ている。 

 

こちらからは、以上です。

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