Jailbreak

新しい世界の切り取り方

いいぞもっとやれ DISH//の4thアルバム『X』

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X (通常盤) (特典なし)

1.ルーザー

2.QQ

3.ニューノーマル

4.猫 〜THE FIRST TAKE ver.〜

5.あたりまえ

6.Seagull

7.rock'n'roller

8.NOT FLUNKY

9.君の家しか知らない街で

10.僕らが強く。

11.未完成なドラマ

12.バースデー

オススメ曲→1,3,4,6,7,8,11

 

DISH//の『X』を聴いたので、レビュー。

正直、「猫」を目当てであり、ついでに全体を聴いてみたのだが、思いの外良かった。

そこには、 外部の様々な音を取り込みながら、まだまだ勢いで押せるパワーを感じた。

有名アーティストの楽曲提供に負けない 

この作品は12曲中、10曲が外部のアーティストや作曲家によるものである。

・「QQ」はNulbarichのJQの作曲・編曲

・「ニューノーマル」は作詞・作曲が緑黄色社会の長屋晴子

・「猫」が作詞・作曲があいみょん」

・「君の家しか知らない街で」は作詞・作曲・編曲がボカロPのくじら

・「僕らが強く。 」は作詞・作曲はマカロニえんぴつのはっとり、編曲にもはっとりが関わっている。

・「未完成なドラマ」は作詞:松尾レミ(GLIM SPANKY)、作曲:GLIM SPANKY
・専業の作詞作曲家として、「Seagull」「NOT FLUNKY」「バースデー」は新井弘毅からの楽曲提供 

これだけ楽曲自体に幅があると、DISH//自体がブレてしまいそうなものだが、完全に杞憂だった。

確かに楽曲の多彩さはあるものも、DISH//のメンバーが昇華していた。

「QQ」のファンキーでブラックミュージックのようなノリ、「ニューノーマル」のシンセを中心としたバンドアレンジ、 「未完成なドラマ」でのギターの泥臭さを出したロックアレンジ、各々が音として別なアプローチをしていて、結果的に粒立ちがよい。

もっと雑然とした印象になってもよさそうなものだが、DISH//のメンバーのものになっている点でまとまったアルバムとして聴きやすいものだった。

各メンバーがディレクションした楽曲があるのも、大きかったかもしれない。 

その時にしか出せない勢い

20代前半のメンバーが作り出す勢いが、印象に残った。

北村のハリのある高音は、サビでしっかり音像のど真ん中を捉えていて、 これぞメインボーカルであった。

ドラムの泉は手数がメチャクチャ多いわけではないが、楽曲にしっかりと合わせたビートとアクセントをつけていた。

もっと言えば、このバンドの勢いを決定づけていたのは、泉の少し突っ込んだドラムだった。

 

勢いを消さないアプローチとして、ギターソロの少なさがある。

必ずしもギターがリードを取る必要がなく、実はサウンドの色を決めるのは橘のシンセやDJである。

イントロでシンセを使用する「ニューノーマル」、 シンセを捨ててDJが入る「rock'n'roller」と分かり易く楽曲の色を変える。

これがギターだけのバンドだと、なかなか難しい。

もちろん、ギターが引っ張る「ルーザー」や「未完成なドラマ」もあるのだが、これが常套手段ではなく、1つの手段になっているのが大きい。 

バンド全員で楽曲に対してアプローチする姿勢が見えていて、各々のエゴがもっと出そうなものだが、上手くバランスが取れていて、ギターロックだけになり切らないことが良さとして現れていた。

 

猫だけじゃなかったんだ

そもそもこのアルバムを聴いた目的を忘れていた。

「猫」はとてもセンチメンタルな曲だ。

歌詞の解釈としては、”僕は君を手放してしまった”を"別れ"と考えると、別れた恋人を想う女々しい歌だし、もう少し深めに”死別した”と考えると、どうしても顔を上に上げられなくて、猫になってでも出てきてくれて、明日への希望を持たせて欲しいと思っている歌のような気もする。

ちょっと前の今日と、現在の今日と明日くらいのとても短い時間軸しかないのだけど、”別れ”の直後は大なり小なりセンチメンタルな気持ちになるよなという表現だと思う。

夢で逢えたらみたいな言い方をされるように、会えない人に夢でもいいから会えたらいいなという気持ちのより具体的な表現として、猫を使っているのは、あいみょんの表現力のたまものである。 

この曲のアレンジとして、THE FIRST TAKEのアコースティックバージョンを収録したのは英断である。

元々のハリのあるバンドサウンドで、静と動を表現するアレンジも、いわゆるロックバラードで良い。

しかし、実はもう少ししっとりとして、そんなにきれいにビートも出ないくらいの軽さがある方が、センチメンタルな感じを上手いこと表現していて、良いと思うのだ。

 

こんな曲があると、他の曲が弱くなってしまいそうだが、全然そんなことはない。

個人的は、「Seagull」のお祭り感がたまらなくよかった。

元々、DISH//はダンスロックバンドで、踊りながら演奏したり、踊りだけも行ったりもするので、ダンスはメインのパフォーマンスの一つだ。

それに対して、「Seagull」は踊ってくれるイメージが鮮明に浮かんだ。

「猫」とは正反対な曲だが、ライブで聴くと絶対踊りだしたくなる。

そんな風にDISH//は「猫」だけじゃないんだと思う楽曲が多くて、とても良いアルバムだった。 

 

こちらからは、以上です。

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