Jailbreak

新しい世界の切り取り方

重さと甘さと豊かさと Architectsの『For Those That Wish to Exist』

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For Those That Wish To Exist

1. Do You Dream of Armageddon?

2. Black Lungs

3. Giving Blood

4. Discourse Is Dead

5. Dead Butterflies

6. An Ordinary Extinction

7. Impermanence ft. Winston McCall (Parkway Drive)

8. Flight Without Feathers

9. Little Wonder ft. Mike Kerr (Royal Blood)

10. Animals

11. Libertine

12. Goliath ft. Simon Neil (Biffy Clyro)

13. Demi God

14. Meteor

15. Dying Is Absolutely Safe

オススメ曲→2,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13

 

Architectsの『For Those That Wish to Exist』のレビュー。 

Architectsの作品は今まで聴いたことがなかったが、様々な要素が絡み合っているのに、 絶妙なバランスで組み合わせられた精巧な作品で驚かされた。

タイトルの通り、大きく分けて重さ、甘さ、豊かさの3要素がの使い方が巧い作品であった。

 

重さに関しては、分かりやすいと思う。

オープニングの「Do You Dream of Armageddon?」こそ静かに始まり、ストリングスやホーンを使ってオーケストラくらいの音数の中で、リズムが淡々と進むが、2曲目の「Black Lungs」からヘヴィなギターやベースが鳴り響き、ドラムのバスドラの方が少し多めに音を刻んでスピード感を出している。

基本は2人のギタリストのリフであって、ベース、ドラムのリズム隊である。

そして、いすれも重さの元となっている。 

リフが複雑になるとどうしても重さが抜けてしまうことがあるが、 アルバム全体にテンポが遅い曲が多いのもあり、11曲目の「Libertine」のようにリフを16分音符で刻んでも重さを保っている。

巨大な建造物が動き出す時に発する、重厚でありながら攻撃的な音と、均一なリズム。 

そういう大きなものをこのアルバム全体のサウンドの1つであった。

 

 

次に甘さである。

ここで言う甘さは、メロディアスさである。

どの曲もヴォーカルのメロディがメロディアスさを忘れることはなかった。

この点でいうと、5曲目の「Dead Butterflies」のメロディが特に気に入った。 

曲の歌詞自体は、何かを失っていくことを歌っている。

決して幸せな部分が一つも見えてこないにもかかわらず、とても甘美なメロディなのだ。

歌以外にもメロディアスさは表れている。

14曲目の「Meteor」のイントロのギターリードも同様だ。

この曲がライブで始まったら、一緒に歌わざるを得ないくらいキャッチーなパッセージである。

ヴォーカルのメロディが明確に打ち出され、常に旋律が耳を惹くのだ。

 

 

最後は豊かさである。

サウンドの豊かさ、表現の豊かさ、コラボによる広がりの3つがある。

サウンドの豊かさは、アルバムの冒頭から分かる通り、SEやシンセによるデジタルで細かい音から、オーケストラを想起させるストリングスやホーン隊による幅の広いダイナミックな音、そしてバンドの中核となるギター、ベース、ドラムが絡みあうアレンジによるもの。

Architectsのようなメタルコアバンドであれば、もっとソリッドにバンドサウンドを押し出していてもおかしくないと思う。

それであっても、ソリッドさもそこそに、引くところはしっかり引き、音の隙間を埋めるようにオーケストレーションされていたり、SEで微かに音を鳴らしたり、非常に多彩で退屈しないのである。

そういう意味でも、前に音を押し出すだけではなく、Architectsは引きどころが上手いバンドだと思った。

表現の豊かさは、ヴォーカルSam Carterの声色の変化である。

1曲の中でもささやくようなウィスパーボイスから、エッジボイス、クリーンボイス、テンションをあげてガナってガリガリした歌声、デスボイスに近い歌声とその時に合わせた表現を持っている。

こんな風に様々なパターンで歌えるメタルのヴォーカリストは多くない。

4曲目「Discourse Is Dead」は歌い始めからボルテージが最高潮の状態で、ガナりまくってテンションをあげている。

かと思えば、5曲目「Dead Butterflies」では、ウィスパー気味に始まり、コーラスをクリーンヴォイスで歌いぬけて、2番コーラス前でガナり、コーラスはクリーンに戻ると歌声が行ったり来たりする。

7曲目「Impermanence」ではグロールに近いデスボイスのような表現もある。

ヴォーカルが表現豊かなので、バンドのアレンジもそれに合わせて引くこともでき、思い切りプッシュしてパワフルに音を出しても生きるという最高の状態である。

 

豊かさとして、コラボ曲が3曲入っているのもある。

Architectsだけではない、幅の広がりがあった。

7曲目「Impermanence」はオーストラリアのメタルコアバンドParkway DriveのヴォーカルWinston McCall、9曲目「Little Wonder」はイギリスのロックデュオRoyal Bloodのヴォーカル&ベースのMike Kerr、12曲目「Goliath」はスコットランドのメタルバンドBiffy Clyroのヴォーカル&ギターSimon Neilが参加している。

いずれも、ヴォーカルでの参加のようで、Sam Carter一人の歌声よりも、さらに幅が広がって強力な曲達になっている。

 

このアルバムは聴けば聴くほど、深みを増していて、まだまだ魅力が発見できそうな作品である。

そのため、もっと聴き込んでいきたい作品である。

 

こちらからは、以上です。

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