桜モチーフの歌は希望と切なさが入り混じることが多いんじゃないかなというお話。
特にデータも出てこないし、自分の観測範囲で思ったこと。
昨年、iPodを買い替えて、2万曲くらい持ち歩けるようになり、シャッフルで曲を聴くと、今まであまり聴かなかった良い曲にまた出会うことがある。ある時流れてきたのが、SCANDALの「Departure」だった。
憂いがありながら、確実に一歩ずつ進んでいくようなバランスで、とても良い曲だなと再認識させられた。ちょっと調べてみると、ギターのMAMIが作詞作曲した曲で、アレンジは亀田誠二。コード進行の切なさなんかはアレンジの上手さであり、そもそもメロディや歌詞もいい感じなのも感じられた。
歌詞としては、”さよならじゃないこと”を”たしかめ”ているのだけど、結局別れているような雰囲気を出す歌詞なのだ。
出会いもあれば別れもあるなんて
誰かが決めた季節に
またね と大きく手を振って
さよなら じゃないこと確かめた
言葉にならない気持ちは
この花びらに乗せればいいんだよ
って君が教えてくれたこと
いまなら
ちゃんとわかっているから
SCANDAL「Departure」より引用
きっと、”言葉にならない気持ち”は別れようという意思で、面と向かって言えなかったんだろうなと。”この花びら”は桜の花びらで、桜=別れの象徴なんだろうなと解釈できる。それに、私と君のどちらの別れの意思かと言えば、私の意志だったのかなと。そうなると、これは別れを告げる側の辛さだと。ハッキリさせなくてもよいから、桜の花びらに別れの意味を持たせて、伝えればよいんだと君が教えてくれたと。なんとも間接的で、自分の悲しみがありながら他人を思いやる優しい世界なんだなと思った。
よく考えてみると、春は卒業の季節で、卒業の次には新しいことがやってくるという希望と、今までのことに卒業してしまう切なさの大きく2パターンがあるような気がしてきた。あとは、桜自体に、サクラサク=合格、サクラチル=不合格みたいな昔ながらの電報の文体なんかもあって、桜が咲くと良いイメージ、桜が散ると良くないイメージがある。ちょうど、プラスとマイナスが行き来する微妙な季節が春なのだ。
こういう時に、自分が昔書いた楽曲の持つイメージがプラスかマイナスかを考えながら、自分の気分と合わせて上手いこと気持ちを乗せることなんかを考える。
そういうプラスとマイナスの感情がどれくらい含まれているか、という観点で桜モチーフの曲を聴いてみると、案外マイナスの感情が渦巻いていた。とはいえ、思い切りマイナスってほどマイナスではなくて、最大が-100くらいだったとして、-5とか-10くらいのちょっとマイナス。後ろ髪をひかれながら進むくらいのマイナス。しかも、時間軸でいうと、過去に向いていることの多さ。まさにノスタルジーを桜によって、想起させられているような曲が結構あった。
いきものがかりの「SAKURA」なんかは、そんな雰囲気がある曲。
さくら ひらひら 舞い降りて落ちて
揺れる 想いのたけを 抱きしめた
君と 春に 願いし あの夢は
今も見えているよ さくら舞い散るいきものがかり「SAKURA」より引用
卒業のタイミングで離れ離れになった恋人、何なら元恋人のことを想っている歌。”「本当に好きだったんだ」”と過去形になっていて、桜が昔の恋人と離れた季節を思い出させる切ない曲である。他にもFlowerの「SAKURAリグレット」や、宇多田ヒカルの「SAKURAドロップ」、鶴の「桜」、アンジェラ・アキの「サクラ色」と割とある。これらは、割と学生の頃、10代の頃をイメージできるような卒業の別れの切なさを歌っているように思える。
もう少し、大人になってからだと、Dream Come Trueの「めまい」なんかが描かれている情景がもう少し大人で、色っぽい。こんな情景が割と歌の始まりにつづられる。
降るように突然に
車の上桜が散ってる
エンジンをあなたがかけたら
小さく一緒に震えたDREAMS COME TRUE 「めまい」より引用
車の免許は18歳から取得できるので、もちろん10代の可能性もあり得るのだが、そのあとに”ピンボケのポラロイド”であったり、”どうやって電話番号聞いてきたか からかった”なんかは昭和感のあるキーワードが含まれていたりして、これはちょっと古そうな雰囲気もある。発表が平成の曲なので、もう少し前な雰囲気がして大人な雰囲気なのだ。
探してみると、桜咲くようなプラスのイメージの曲もある。aikoの「桜の時」の桜の使い方は風景の一つであり、変わっていくものの象徴となっている。
春が来るとこの川辺は
桜がめいっぱい咲き乱れるんだ
あなたは言うあたしはうなず
春が終わり夏が訪れ
桜の花びらが朽ち果てても
今日とかわらず あたしを愛してaiko「桜の時」より引用
桜の使い方として、春の風景であったり、散っていくものとして比べて永遠の愛を求めたりという形。全体としては、あまりマイナスの部分が少なくてかなりポジティブな歌である。リズムがシャッフルで、キーがメジャー(長調)なので、ウキウキした気分を表すには最適なアレンジもされている。
桜をモチーフにするとまず、卒業のイメージから別れを想起させるようで、切なさを歌詞にしがちなんじゃないだろうか。しかも、桜の花の命は短いので、変わってしまうもの・終わってしまうものとしての扱いもできる。悪いイメージだけではなく、未来への希望も歌える。こんな色んな扱いができる桜の歌は作りやすいに違いない。
こちらからは以上です。
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