ある朝、iPodをシャッフルで聴いていたところ、ミスチルの曲がかかった。その時、「あれ?ミスチルの楽曲でサックスソロがある楽曲は、いい曲が多いんじゃないか?」と思った。何なら、実は名曲揃いなんじゃないかと思ったわけです。
この説の検証の前提としては、
・Mr.Childrenが発表しているオリジナルアルバム+カップリング集を対象とする(ベスト盤は含まない)
・ギターソロ等と同じように曲の間奏にサックスソロがある曲をピックアップ。サックスの種類は、ソプラノ、アルト、テナー、バリトン等の音域は問わない。しかし、音色からサックスだと判断できるもの。
それでは、Mr.ChildrenのDiscographyのAlbumを元に探してみる。
EVERYTHING
該当なし
Kind of Love
・抱きしめたい:ソプラノサックスのソロ
※BLUEはトランペットソロのため、対象外
Versus
該当なし
Atomic Heart
・Round About~孤独の肖像~:ソプラノサックスのソロ
深海
・ゆりかごのある丘から
BOLERO
・【es】~Theme of es~:ソプラノサックスのソロ
・シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~
・傘の下の君に告ぐ
・Tomorrow never knows(remix)
DISCOVERY
該当なし
Q
該当なし
IT'S A WONDERFUL WORLD
該当なし
シフクノオト
該当なし
I ♥ U
該当なし
HOME
・Another Story
B-SIDE
・フラジャイル
SUPERMARKET FANTASY
該当なし
SENSE
該当なし
[(an imitation) blood orange]
該当なし
REFLECTION
該当なし
※Melody、You make me happyは惜しいが、ホーン隊なので、除外
重力と呼吸
該当なし
集計結果
収録アルバム6枚、全9曲(「抱きしめたい」、「Round About~孤独の肖像~」、「ゆりかごのある丘から」、「【es】~Theme of es~」、「シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~」、「傘の下の君に告ぐ」、「Tomorrow never knows」、「Another Story」、「フラジャイル」)が対象でした。200曲を超えるオリジナル曲がある中で、9曲ということは、1%にも満たない曲が対象となるということです。それもそのはずで、ミスチルのメンバーにサックスを演奏するメンバーはおらず、外部のミュージシャンに演奏してもらうしかないわけです。つまり、そう簡単に使えないアレンジのパターンであることは確かです。何なら、ライブで演奏するとき、サックスがいないこともあるので、キーボードが代わりにソロをとることもしばしば。例えば、2015年の未完のライブ「Tomorrow never knows」で見られます。
では、9曲全てが名曲かどうかと言われると、なかなか怪しいのです。 「Tomorrow never knows」のようなメガヒットソングから、「傘の下の君に告ぐ」のようなアルバムの1曲もありました。ただ、いずれも是非とも聴いてもらいたい曲ではあるのです。「抱きしめたい」、「ゆりかごのある丘から」辺りの冷静と情熱を行ったり来たりするソロ、「シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~」の自由にのびのびしたソロと曲によって、タイプが違うのです。とはいえ、いずれもオススメできる楽曲です。
各曲の聴きどころ
各曲の聴きどころを紹介していきます。ミスチルがミリオンヒットを連発し、イケイケだった時代の楽曲が多いのは、仕方がないことということで。
抱きしめたい
2ndシングルであり、アルバム『Kind Of Love』と同時発売された曲。 初期の代表曲で、やわらかい雰囲気を持ったラブバラード。前の失恋を引きずる”君”を抱きしめて、未来へ向かっていくストーリと、静かなサックスソロからの転調をしたラストのサビの盛り上がりが聴きどころ。
Round About~孤独の肖像~
4thアルバム『Atomic Heart』収録で、アルバムの後半戦、7曲目「ジェラシー」から始まるデジタルでサイケデリックな雰囲気の流れを、イントロのホーン隊が一気に現実世界に戻す。
イントロ~Aメロまでに対して、サビで刻みが倍になるので、サビの高揚感が半端じゃないのと、歌詞は全体的に都市の中の哀愁を歌っているので、その雰囲気と共に高揚感を楽しむのがオススメ。
ゆりかごのある丘から
5thアルバム『深海』収録。アマチュア時代から存在した楽曲だが、リアレンジして発表されている。全体的にスローバラードで、ゆったりと悲しみが包む曲。
アルバムが後半戦に入り、前トラックの「マシンガンをぶっ放せ」の辛口な社会風刺から一気に加速していきそうな流れを、水中に飛び込んだかのようにスローダウンさせて、ぶった切るこの展開は秀逸。楽曲としても、サックスの熱さと歌を含めた他の楽器の静かさの対比が、どうしようもならない世界でもがき苦しむ歌詞の世界観とマッチしているのが、聴きどころ。
【es】~Theme of es~
8thシングルで、発表自体は4thアルバム『Atomic Heart』の頃の楽曲。ドキュメンタリー映画『【es】 Mr.Children in FILM』の主題歌でもある。
イントロこそ、アコースティックギターのストロークから始まるが、バンドサウンドとストリングスのアレンジによって、 壮大に仕上がっている。esとは自我の一種であり、そこを踏まえて生きていく辛さと、それでも明日へ向かっていく心情を歌っているところがポイント。アレンジ的にはゆるやかなサックスソロの後にストリングスの早いパッセージにつながって、ブリッジの展開がアツい。
シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~
9thシングル。 「【es】~Theme of es~」同様、発表自体は4thアルバム『Atomic Heart』の頃の楽曲。ミスチルの中でも有名曲であり、頭打ちのリズムとポップなノリがエルビス・コステロっぽくて楽しい曲だ。
盛り上がりっぱなしのように思えるこの楽曲は、ブリッジでテンポも半分になり、落ち着く。そこから少しずつ盛り上がり、サックスソロへとつながっていく。全体としてノリノリに楽しみつつ、恋の駆け引きを歌った歌詞が聴きどころ。
傘の下の君に告ぐ
6thアルバム『BOLERO』収録。シングル曲多発のアルバムの中でも、埋もれず強めの主張をする楽曲。トラック的には前トラックが「シーソーゲーム」であり、後トラックが割と深刻でどんよりとした「ALIVE」をつなぐ役割を果たしている。 「シーソーゲーム」の勢いのまま、ダークサイドに落ちていくような楽曲。
全体的にアップテンポでノリが良いので、踊ってしまいたくなるが、そこで踊ってしまうと社会風刺の歌詞にグッサリ刺される。この曲もブリッジがあり、一番ダークになるのだが、そこをソプラノサックスのソロが鳥が羽ばたくように助け上げてくれる。ダークな社会風刺と、ノリ、この2点を聴きどころにして聴いてほしい。
Tomorrow never knows
言わずと知れたミスチルの代表曲であり。6thシングル。これについて、そんなに自分が沢山語らたなくても、色々知っている方も多い。ちなみに、『BOLERO』に収録されているリミックスは、ドラムが生ドラムになっている。
この曲のサックスソロは2番のサビとブリッジをつなぐ役割がある。ただ、このソロは転調していて、2番までのCからB♭へとキー自体は下がっているが、とても広がりを感じる演奏と展開を持っていて、また違う雰囲気を持っている。さらにそのあとのブリッジで少し落ち着き、最後のサビで1音上げたDに転調する。こういった一連の流れを感じながらこの楽曲を聴くと、よりこの楽曲を楽しめるだろう。
Another Story
13thアルバム『Home』収録。作風が落ち着いてきており、日常的なことを扱うことをテーマとしたアルバムとなっている。そんなアルバムの中盤に入っていく5曲目に収録されており、「箒星」で未来に対してキラキラして上がったボルテージを、一旦落ち着かせてくれる。
歌詞は割とストーリがしっかりしている。”遠くの街に住む君”に会いに行く時に、今までのことを考えながら、2人の関係が上手くいっていないことに思いをはせている。何なら2人は分かれてしまっていて、”迎えに行く”のかもしれない。そんなことを想いながら、君と一緒にいることを選んでいる風景がある。この非日常と煮え切らない雰囲気が、歌の盛り上がりを思いっきり行わないことでアレンジとして表現されている。リズム的にも割と単調で、サックスソロの後に一旦引き際こそあるが、サビに対して大きく盛り上げない。
盛り上げすぎないアレンジと、歌詞の世界観を是非楽しんでいただきたい。また、この曲は前のアルバム『I ♥ U』収録の「靴ひも」のもう一つのお話(=Another Story) ということ(どちらもバスが出てくる)なので、一緒にチェックするのをオススメする。
フラジャイル
9thシングル「シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜」のカップリング曲。ライブ音源で、生々しい演奏なのが印象的。全体的に、ロック然としていて、歌詞も斜に構えた感じがさらにロック感を増す。そんなにテンポは速くないのだが、ライブでは盛り上がるであろう楽曲。キーはマイナー(短調)なのだが、哀愁や悲しみよりは、厳しい中を進んでいく強さを感じる雰囲気に仕上げている。これがロック然とした雰囲気の元。
最近のミスチルとはまた違った、ロック感と斜に構えた歌詞にニヤニヤしながら聴くのがオススメ。
最後に
ミスチルのサックスソロ自体は、あんまりないことが分かりました。ただ、サックスソロがある曲はいずれもいい曲で、それぞれに聴きどころがあるのが分かったかと思います。
こんな風に楽曲を色んな切り口で楽しんでいただくのは、楽曲の深堀になってよいのではないでしょうか。
こちらからは以上です。
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