前回は2016年にパワープレイしたアルバム10枚を紹介した。
今回は2016年上半期にパワープレイした10曲。
アルバムはどうしてもロック色が強い傾向がある。
しかし、1曲1曲となるとどうだろうかと昨年を振り返ったが、やっぱりロック色が強い。
ロックばかり聴いてるわけじゃないよ!と言いたいのだけど、アンテナに引っかかってくるのはロックが多いことはご了承いただきたい。
KNOCK OUT MONKEY「GOAL」ミニアルバム『RAISE A FIST』収録(2016)
何気なくYouTubeを漁っていたら出てきたバンドKNOCK OUT MONKEY。
もっとハードでへヴィな印象があったバンドだったが、このミニアルバムの1曲目を聴いてイメージが変わって。
適度なハードさとポップさのバランスが丁度良いのと、歌詞のプラス思考な感じが朝の通勤時に気持ちをアゲて固めるのにはとても役立った。
KNOCK OUT MONKEY - GOAL (Official Music Video / Short Ver.)
5弦ベースを使ったへヴィな音域と手数の多いドラムにヌケの良いギターが今風だなと思う一方で、ヴォーカルがたまに枯れた声を出すけれど活動休止したROCK'A'TRENCHのヴォーカル山森大輔に似てるなーなんて思って聴いていたら気に入ってしまった。
誰か何かに似ていることはミュージシャンにとってオリジナリティという意味ではマイナスになりがちなのだけど、その元々のミュージシャンが好きな場合はむしろ良い方向にも働くことがあるから二番煎じや三番煎じに全く価値がないとは思っていない。
細かいテクニックを持ってハードなサウンドで手数の多くて良いメロディと当たり障りのない歌詞を歌っているバンドなんてたくさんいる。
それでも、出会って気に入って自分のものにできたらそれはそれで大事な一曲になる。
THE ORAL CIGARETTES「エイミー」アルバム『FIXION』収録(2016)
いわゆるロキノン系に分類されるであろう、THE ORAL CIGARETTES。
自分は毎週日曜の9:30~テレビ東京系で放映されているJAPAN COUNTDOWNを楽しみに見ていて、基本的には日曜日は9:30までに起きる習慣がある。
そんなJAPAN COUNTDOWNのオープニングテーマをTHE ORAL CIGARETTESが務めることがあって、要チェックにしていたバンドだった。
そのバンドが年明け早々にニューアルバムを発売したので、1stアルバムと共に手に入れる運びとなった。
ちょっとだけヴィジュアル系のヴォーカルにあるようなナルシスト系のヴォーカルを効かせつつ、最近のシューゲイザーっぽさや4つ打ちのダンスやオルタナっぽさがあるサウンドとJ-POPとして受けるメロディと、何とも抒情的でエピソードがイメージできる歌詞が心に残った。
この曲の歌詞が恋人と別れた後なんかだと心をえぐりかねないのだけど、別れの一つや二つ想像ができたなら、こういう気持ちになれたことだったり通り過ぎたことを噛みしめることは悪くないはず。
エイミー ここで二人、
肩を寄せ合った日々を思い出すと胸の奥、ぎゅっと。
THE ORAL CIGARETTES「エイミー」より
こんな感情をこんなに爽やかにキャッチーなメロディに乗せていいんだろうか?と思ってしまうのだけど、逆に暗くて重たい雰囲気やメロディならこんな音楽聴けたもんじゃないとも思う。
案外、暗い内容を明るく歌いきるのは悪くない。
ヴォーカルギターの山中拓也自身が大事にしている曲だと知ったのはもっと後の話。
サビのメロディと歌詞がキャッチー過ぎて何度口ずさんだか分からない曲。
OLDCODEX「wire choir」アルバム『A Silent, within The Roar』収録(2012)
前述のTHE ORAL CIGARETTES同様JAPAN COUNTDOWNのオープニングテーマを勤めていたのがきっかけで、ほぼ同じタイミングで聴いていて、正直ポップな方がTHE ORAL CIGARETTESでハードな方がOLDCODEXぐらいにしか思っていない。
誤解を恐れないで言うなら、個人的にはヴォーカルのTa_2が声優だという先入観なく聴いたおかげでとても好きになったが、もしかしたらその情報が先にあったら聴かなかったり好きにならなかった可能性がある。
Ta_2の声はロック然としていてカッコイイガナり方もするので好きだし、サウンドもへヴィなので自分のストライクゾーンを確実にとらえていて、間違いなくオススメできるバンドであるのは確か。
その一方で個人的にどうも声優が歌う音楽が好きじゃないというのもあって、声優さんが歌う雨の主題歌に全く心震えない。
あまり良くないフィルタリングだとは分かっているが、言うほどアニメが好きじゃないのが大きいのと、JAM Projectを聴いて心震えないのがあって、聴かなきゃいけない音楽がいっぱいある中でわざわざ手を広げないことにしている領域にしている。
そんなことを抜きにしてもOLDCODEXはカッコイイ音楽だったのだけど、普段聴きしづらいハードさだったり世界観だったりして、アルバムとして聴くのは辛くて1曲1曲聴くことが多くなり、「wire choir」の再生が一番多かった。
TOKIO「Fragile」(2016)
フジテレビ系水10ドラマ「フラジャイル」主題歌である本作だが、別に自分はそのドラマを好きだったわけでもなく、ただテレビをつけているとCMやら番宣で流れてくるいい曲だなと思っている程度だった。
それでも去年の下半期にパワープレイした曲の中に「TOKYOドライブ」が入っているのもあり、TOKIOにちょっと期待してちゃんと聴いてみたら何ともストレートな歌詞のいい曲じゃないか!と思ったので、よく聴いていた。
fragile/TOKIO (music fair ver.)
始まり方がギターの低めの弦を使ったアルペジオと共に、花びらが散っていく桜のイメージと悲しみとそれを背負って明日を見つめていく姿とかがクリアにイメージできた。
THE ORAL CIGARETTES「エイミー」といい、この「Fragile」といい、どこかで悲しみを体現してくれるけれど、「それでも明日はやってくる」と言って顔を上げてくれる曲っていうのがイチイチ必要になってくる年齢になってきたせいもあるのかもしれない。
ただ生きているだけで悲しみが降り積もるのかもしれない。
そういうえば、そんなことを言っていたアニメがあったっけ。
Charisma.com「サプリミナル・ダイエット」『愛泥C』収録(2016)
Charisma.comがめちゃくちゃ毒舌を吐いた歌詞を歌っていて、面白い人たちだというのは深夜の音楽番組(バズリズムあたりだったはず)で知っていた。
そんなCharisma.comの曲をちゃんと記憶にある中で聴いたのはこの「サプリミナル・ダイエット」だった。
毒舌を吐いている歌詞が気持ちいいのと、これだけダンスサウンドとマシンガンのようなラップが脳天直撃で気持ちいい。
やっぱり始まり方の「ファイブ、シックス、セーブン、エイト!」がもうめちゃくちゃ好きで、この部分だけで心を鷲掴みにされる。
そして、サプリミナル For ダイエットと繰り返すこのリフレインが気持ちいい。
そう、この曲はメチャクチャ気持ちい楽曲なのだ。
あとは深夜番組でこの曲を披露した際、2人が無駄にルームランナーを走りながらパフォーマンスというなんとも奇想天外な姿を見たから余計に印象に残ったのが大きい。
もう、印象に残るために何でもするのはお笑い芸人だけじゃないってことだ。
スピッツ「みなと」(2016)
NTT東日本のCMソングとして初めて耳にしたスピッツの「みなと」。
自分はミスチルが好きだけど、スピッツも同様に好きなのだけど、ミスチルの様に深く味わうよりもスピッツはその曲の雰囲気を楽しむことがスピッツの楽しみ方だと思っている。
「あー、いつものスピッツだなー」と思って、そのいつものスピッツ感がある楽曲に安心をする。
いつものことをいつも通りやる。こういうアーティストも大事だし、好きだから聴き続けたい。
スピッツの歌詞は具体的なシーンを思い浮かべらるのだけど、どうもその中にあまりはっきりとしたストーリーやメッセージは感じない曲が多い。
別にそれは悪いことではないし、抽象度が高いが故にいろんな時に突き刺さる言葉だったりするのがスピッツの歌詞の怖いところ。
そして、サウンドはしっかりとしたリズム隊にコードを弾くギターとキラキラなアルペジオに透明感の塊のような草野マサムネの突き抜けたヴォーカル。もう、これは鉄板サウンドでスピッツはこうでなくっちゃ!という基本的な形。
それを本作でもいつも通り聴けたんだから、ごちそうさまですとしか言いようがない。
似たような曲ばかりだと感じる人もいるかもしれないけど、これぞスピッツというサウンドがずっと続くこと、抽象的だけど解釈をせずにふいに突き刺さる歌詞を透明な声で歌われることが続いていくことのどこが悪いのか。
その答えがずっと出ないから、ずっと聴き続けているだけなのだけど。
竹友あつき「未来ライン」(2014)
自分の音楽の情報源は雑誌やテレビやネットの他にラジオが大きい割合を占めている。
ラジオっていい音楽がいっぱい流れていて、エピソードとともに紹介されたりもするから自分の中に飛び込んできやすい環境だったりする。
そんな想いは別記事にたしなめている。
あれは確かTFM系の「未来の鍵を握る学校 SCHOOL OF LOCK!」を風呂に入りながら流していた時。
番組最後の曲としてかかったのがこの「未来ライン」だった。
正直、竹友あつきなんて全く知らないし、「未来ライン」だって自分の守備範囲外になってしまうくらいほぼ聴かないであろう音楽だった。
知らない音楽も10代に向けたラジオ番組の青さと熱さ、それに加えて「未来ライン」の描く未来の輝きが組み合わされて、まぶしいのなんのって。
竹友あつき - 「未来ライン」(映画『グレート デイズ!―夢に挑んだ父と子―』応援ソング)
年を重ねると、やれ涙だとか努力だとか未来だとか汗だとかそんなこと言ってられなくなって、それですら美しかったあの頃を思い出してしまったりもする。
それは以前似たような感覚を味わったことがあるってだけで、何度も同じことを繰り返すと慣れてきてしまう。その慣れっていうのがとても厄介で、良くも悪くも感動や悲しみの閾値が上がるので自分の中での浮き沈みが減るから振り回されるようなことが少なくなって、より平穏に暮らしていきやすくなる。
だけど、それとともに感動することや悲しむことが少なくなって、記憶に残るような日々が送れなくなってくるから、毎日が時間が過ぎるのが早く感じる。
振り返って残念だなと思いつつ、あの頃は良かったと思うあの頃の感覚に近いキラキラ感を持つ楽曲がこの曲だったりして。
ある程度年を重ねたら、こういうちょっと青臭い曲で若さを取り戻してみるのも悪くない。
Suchmos「Pacific」アルバム『THE BAY』収録(2015)
Suchmosという話題のバンドがあるよ!と知ったのはネットの情報だった。
全然知らないバンドだったので、ちょっと聴いてみたら前評判通りのシャレオツなサウンドのバンドだった。
前回書いたアルバム編でも触れたが、2016年前半はファンキーでソウルフルな音楽を聴きたい欲求が大きくて。
Suchmosが含まれていても良さそうみたいなブクマがこの中に確かあったのだけど、Suchmosは突っ込んだファンクをやらないので、R&B色が強くて自分の好きなバキバキのリズムとかハネ感とは違っていて。
とはいっても、邦楽バンドになかなかこんなシャレオツなR&Bをやって売れてくるバンドも少ないし、いい曲を書いているのは確かだった。
何故アルバムとして紹介をしなかったかというと、こういうジャンルの宿命なのかシャレオツな空間のシャレオツなBGMにしかならなくて、アルバム全体の評価は高いのだけど1曲1曲の粒立ちが良すぎて「アルバムが全体的に良かった」としか言えない。
つまり、「この曲のここが好きで」みたいなフックが自分にとっては少なかった。
だから、アルバムの中で1曲好きな曲を見つけてそれをリピートしても同じだった。
そんなわけで「Pacific」の雰囲気が一番気に入って一番パワープレイしたというわけ。
アルバム全体で聴いても良いけど、本当に心地よいBGMになっちゃう。
Bread「If」アルバム『Manna』収録(1971)
自分は元々ギター小僧でギターが上手いバンドは古いアーティストであってもチェックしている。だから、そこそこ売れていて名前も聴いたことがないバンドっていうのが少ないのだが、Breadは全く知らないバンドだった。
そんな知らないバンドをどうやって知ったかというと、あれは確かアメリカのドラマ「コールドケース 迷宮事件簿」か「ボディ・オブ・プルーフ/死体の証言」あたりでかかっていた曲で、これまたスマホアプリのSoundHoundをすぐ起動して聴き取らせたことで分かった曲。
70年代のフォークっぽさとギターのトレモロがなんともいえないサイケデリック感と浮遊感をくれて、優しい夢の世界へといざなってくれる。
タイトルの通り「if」なので、もし~だったらと想像を巡らせながら誰かのことを想う歌詞なんてのは昔からあったんだと思うけど、ちょっと詩的であり私的だなと。
凄くシンプルな曲なんだが、仕事の帰り道にフル回転していた脳をクールダウンさせて落ち着かせるのに何度も聴いた。
文字通り心落ち着く曲だけど、ちょっともの悲しいのもスパイスとしてとても良い。
The Birthday「さよなら最終兵器」(2012)
最後はThe Birthday「さよなら最終兵器」。
自分はバンドでTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやROSSOをやったことがあり、その関係で2つのバンドは好きなのだけど、どうもThe Birthdayを好きになるきっかけを逃していて。
好きになれる曲がなくて、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの頃の根底に流れていたロックンロールがThe Birthdayにはポップスが流れてるんじゃないかと持ってしまうような曲しか聴いたことがなかったことが原因だったんじゃないかと思っている。
そんな時に10周年記念のベストアルバム『GOLD TRASH』を聴いて、本当に好きになれる曲が1曲もないんだろうかと向き合ってみたのがこの1月のこと。
以前のイメージよりはいい曲が多くて好きになれる曲もあったのだが、その中で唯一「これは名曲だ」と思ったのが「さよなら最終兵器」だった。
なんていうか、好きな曲であるTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「世界の終わり」と似た世界をこの曲の中に見たのだと思う。
でももっと静かに引くところは引いて、サビでドーンと盛り上がってはいてちゃんと音楽的な浮き沈みは感じる。ただ、それ以上にテンポが早いせいなのか、静かに聴かせようとしても抑えきれない熱さみたいなものがドラムとベースから感じ取れて好きなのだ。
あとは「世界の終わり」と同じで曲が長い。
長くても繰り返しが少ないと歌詞の世界観を想像する為の言葉がいっぱい入ってくる。
チバの歌詞は抽象度が高くて解釈が必要だけど、テーマを見つけられるとすんなり入ってきたりもする自分の中では理想的な歌詞で。
そんな歌詞の世界と愁いを帯びたロックサウンドが自分の心を震わせてアクセルを踏んでくれる。
もうちょっとちゃんとThe Birthdayと向き合おうと思いつつ、これ以上の曲に出会えるのだろうか?と思ってしまうくらいの名曲に出会った。
最後に
アルバム編も含めて結構な量の文字を連ねてきたけれど、アルバム・曲とも「どうやって出会って」、「どこに魅力を感じているか」をできるだけ伝えたくてこうなってしまっている。
音楽の出会い方が大事だと再認識させられたのも2016年。
もちろん、ちゃんとエピソードがある。
あとはちゃんとレビューするために聴きこんだアルバムもたくさんあった。
グラミーの予想をしてみるために、ちゃんと楽曲を聴いたし。
話題のゲスの極み乙女の『両成敗』もレビューした。
どんなに時間があったって、ちゃんと音楽と向き合うのがどんどん難しくなってきているので意識的にこういうレビューだったり、まとめは続けていきたいと思っている。
それは自分の音楽との出会い方を知って、「こうやって出会うのか」と思ってやってみたり、「紹介されてたこの曲がいいな」と思って聴き始めてもらえれば幸いだ。
こちらからは以上です。
今週のお題「2016上半期」
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