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【レビュー】SHE'S『プルーストと花束』のシンプルに王道を行くことで示すピアノロック

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プルーストと花束(初回限定盤)

1.Morning Glow
2.海岸の煌めき
3.Stars
4.Say No
5.Tonight
6.グッド・ウェディング
7.パレードが終わる頃
8.Freedom
9.Running Out
10.Ghost
11.プルースト

オススメ曲→1、2、6、8、10

 

2017年1月25日発売SHE'Sのメジャー1stフルアルバム『プルーストと花束』を聴いた。

ギターロックでは出せない爽やかさと、余計な捻りのないストレートな楽曲の良さが突き抜けたアルバムだった。

 

1曲目「Morning Glow」からキラキラ輝いてワクワクさせるオープニングを聴かせてくれる。じっくり始まるイントロにハイテンポなリズムに、切ないストリングス。これはどう考えても名曲の香りがするのだ。そのワクワクを殺さないためにAメロ・Bメロの前半はリズムを16分で刻んでいく。Bメロ後半から大きく刻み始めることでサビへの解放感がMAXになる。疾走感とそのまま飛び出していく解放感がとにかく気持ちいい。

2曲目「海岸の煌めき」もハイテンポながら16ビートを基調に刻み続け、3曲目「Stars」ではピアノのみならずシンセサウンドも混ざりサウンドの幅を広げる。

4曲目「Say No」はミドルテンポで重めにリズムを刻みながら抒情的に、5曲目「Tonight」はもっと落ち着いてウィスパーボイスで語り掛ける。

6曲目「グッド・ウェディング」はリズムがハネていながらピアノのイントロから始まる。リズムのお陰でちょっとウキウキした気持ちとテイストとしてのブラックミュージックが見え隠れする。中間部のコーラスなんかちょっとゴスペル感すら出してくる始末。7曲目「パレードが終わる頃」はシャッフル。ハネたリズムだが、ハネる粒度が違うので、こちらの曲の方がよりふり幅がある。

8曲目「Freedom」はコード進行が多彩で良い。イントロのⅠ→Ⅱm→Ⅲm→Ⅳ/Ⅳmであったり、Aメロのクリシェであったり、サビのⅣから始まる進行、ブリッジのⅥ♭→Ⅶ♭→ⅠとJ-POPのキャッチーなコード進行が満載だ。9曲目「Running Out」は打って変わって始まりから歌とギターとシンセが絡み合う。珍しくキーはマイナーで切なさよりは悲しみを押すが力強い曲。

10曲目「Ghost」は6分近い特大バラード。ピアノロックバンドだからこそ出せる広がりとギターが居ることによるソリッド感の融合が気持ちよく、弱さの中に見える力強さ、大きな音を出すがタッチを残すことがしっかりと出ている。ラスト1分以上のギターソロは必聴。11曲目「プルースト」は「Ghost」のロックに対してとてもポップに仕上がっている。ストリングスが入っているが壮大ではなく、もっと地に足のついた日常の曲に仕上がっている。最後の語りの部分がしっかりと聞き取れるとこのアルバムの意味が分かるだろう。

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アルバム全体を通して感じたのは、ピアノとギターの位置取りの上手さ。前に出るべきところで出て、引くところは最小限に留めるというそれだけなのだけど、ちゃんとお互いが全体のバランスを考えてアレンジがされている。どちらも前へ出てぶつかってしまっていたり、似たような音域で動いてしまうとメロディにとってはとても邪魔になることもある。そうならないためのアレンジは大事だ。

歌声と歌詞のクセの無さが良い。歌声は若干甲高くて決して太い声ではないのだが、それがちょっとへヴィになったサウンドでもヌケてくる。楽器の低音部分と重ならないからこそ、メロディと歌詞が聴こえてくる。そして、聴こえる歌詞は意味を考えなきゃと思うくらい強いメッセージ性はない。もちろん、ちゃんと歌詞を読みこめばそれはそれで良さがあるが、洋楽の様な言葉の気持ちよさがある。これがメロディに歌詞がしっかりとのっているということだろう。

最後はロック然としたギターソロの上手さ。最近聴いてきた日本のバンドはあまりギターソロが好みじゃないものが多かった。イントロや間奏のメロディはチョーキングをせず、ハンマリングとプリングを多用し何ならライトハンドを使ってピロピロ弾いてしまうものが流行っているのは分かるが、どうも気に入らなかった。それがS服部栞汰はロック然としたギターソロを弾くではないか。もちろん、全ての曲でギターソロを挟むようなことはせず、ギターソロが合う曲にしっかりとギターソロを弾ききるのだ。特に10曲目の「Ghost」のラストのギターソロは最高だった。JourneyのNeal Schonがバラードで弾くようなドラマチックでメロディアスで熱いソロ。その意味でも「Ghost」はこのアルバムのハイライト。

 

久々にいいアルバムに出会ったからブログに書いているのだが、鍵盤の入ったロックは楽曲の幅や爽やかな仕上がりから良いものになりやすいんだなと、つくづく思った。J-POPの基本サウンドでありながら、アメリカンハードロックでも使われる王道のサウンドで、暑苦しさやむさ苦しさを制汗剤の様に取り去るピアノの音。オルタナティブにもへヴィにもテクニカルにも走らない、王道のピアノロックがここにあった。

と大絶賛しているが、あくまでこれはファーストアルバム。ファーストアルバムは書けられる時間がかなり多いため、良いアルバムに仕上がる可能性が高い。

大事なのはこれから。2nd、3rdと良い音楽を作り続けていってもらいたいものだ。

 

こちらからは以上です。

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