以前、洋楽について似たようなテーマで記事を書いた。
その邦楽編であり、聴いていて良いなと思える日本のバンドを紹介したい。
できる限りこの2010年代を活動のメインとしてグングン伸びているバンドを選んでみた。
オリジナリティが楽曲のメロディアスさやキャッチーさであったり、 サウンドや歌声ののカッコよさに出ているバンドなので要チェックだ。
BLUE ENCOUNT
2014年にメジャーデビューした熊本出身の4人組ロックバンド。通称ブルエン。
エモーショナルなサウンドと歌詞、そしてライブパフォーマンスが特徴で、4大フェスの一角であるSUMMER SONICには2013年から出演している。
2000年代のエモ・スクリーモのようなハードなサウンドと感情を騒ぎ立てる歌詞で聴くものを揺さぶってくる。
2015年7月発売の1stアルバム「≒(ニアリーイコール)」の出来がかなり良く、それまでの1stシングル「もっと光を」、2ndシングル「DAY×DAY」を軸に今まで通りエモい曲を聴かせてくれる。
いわゆるギターロックなのだが、ヴォーカル・ギターの田邊とギターの江口の絡みは特別なことは行っておらず、田邊が基本のコードを担当し江口がオブリガードを弾くスタイルがほとんどだ。ただ、あまり2人でユニゾンすることはなく、江口のギターは常に遊んでいる。そして、タッピングを多用したバッキングを見せる等エモの根源となるメロコアのスタイルとは異なるアプローチを行っている点は特筆すべきだ。
ベース、ドラムのリズム隊はあまりど派手なことはやらず、テクニックを見せつけるようなスタイルではないので、安心して気持ちよくノせてくれる。
歌詞も前述のとおり熱いエモではあるのだが、昔流行った青春ロックのような青さの要素は少なく、大人でもなく子供でもないだからといってモラトリアム感は少ない不思議な熱を持っている。
[Alexandros]
2001年結成、東京出身の4人組ロックバンド。以前のバンド名は[Champagne]でOasisの「Champagne Supernova」が由来だが、2014年にシャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会日本支局からの要請によりバンド名を現在の[Alexandros]に変更した。
ほとんどすべての曲を作詞・作曲しているヴォーカル&ギターの川上洋平は9歳から14歳までをシリアにいたため英語が堪能であり、その影響もあってか歌詞の日本語と英語が行ったり来たりする。従来のJ-POPにありがちなとってつけたような英語ではなく、しっかりと発音した上で、日本語と英語のつなぎ目をあまり意識せずに聴くことができる。
バンドの特徴としてギター&ヴォーカル・ギター・ベース・ドラムの4ピースバンドながら、必ずしもそのバンドサウンドに限らずシンセを迷うことなく入れてくる。この辺は川上洋平がDJをやっているのもあり、ソリッドなギターロックを狙っているわけではないことが分かる。これは[Champagne]時代から変わらない傾向だ。この傾向が強くなりすぎるとサカナクションのような世界観になってしまうが、まだそこまでは行っていない。
最近はタイアップも増え、CMやドラマ主題歌、映画主題歌と耳にする機会が増えている。
見た目にも特徴があり、バンドメンバーはシックでモード系のファッションをすることが多い。特に川上がLAD MUSICIANやLITHIUM HOMMEといったドメブラを愛用していることからも今時のファッションを取り入れているように見受けられる。雰囲気イケメンの参考にするにはいい素材かもしれない。
また、一番最後に加入したドラムの庄村聡泰は要チェックだ。様々な服装を着こなす上に長髪を三つ編みにしてみたりと目が離せない。また、ドラムセットのクラッシュシンバルの位置が異常に高い。これは見た目が派手だから行っていることなのだが、昔のヴィジュアル系バンドのドラムでもやらないことでかなり珍しい。ドラム的にはリズムが重めで後ろにスネアを引っ張りがちなのも付け加えておく。
SPYAIR
2005年結成、2009年メジャーデビュー、名古屋出身の4人組ロックバンド。2009年から2012年までは5人組だった。
熱い歌詞と勢いのあるへヴィなロックサウンドにヴォーカルIKEのハードな歌声が乗る
SPYAIRが世に広く知られるきっかけとなったのが、2ndシングルの「Last Moment」でテレビ東京系アニメ『BLEACH』第25期エンディング・テーマだったことが大きい。
そして、4thシングル「サムライハート (Some Like It Hot!!)」がテレビ東京系アニメ『銀魂'』第17期エンディングテーマとなり、一気に知名度を上げている。
SPYAIR 『サムライハート(Some Like It Hot!!)』
曲作りはギターのUZがオケも含めてほぼ完成状態の楽曲を用意し、ベースのMOMIKENが歌詞を書くという少し珍しいスタイルをとっている。特にベーシストが歌詞を書くのは珍しいが、とてもよい言葉選びをしており歌詞の熱さがありつつ、しっかりと韻を踏むところは韻を踏んでいるので聴いていても余計なつっかかりがない気持ちの良いものになっている。
また、オケを含めてギタリストが作成するのはかなり有効であり、ギターロックバンドだからこそギターがそのサウンドの中心を担い背負うことは必然で、それを積極的に引き受けているのは非常にバンドサウンドの安定化からも大事なことだ。
SPYAIR 『イマジネーション』 テレビアニメ「ハイキュー!!」OPテーマ
2014年にIKEが突然脱退をtwitterで発表し物議を醸したが、声帯ポリープと急性声帯炎を併発し療養が必要な状態だったことが後に発表され活動休止に。その後脱退は撤回となり、復活をしている。
アニメ主題歌のタイアップがそこそこあるため、アニソンバンドのようなイメージを持たれがちだが、そんなことはなくて熱くてポップで聴きやすいへヴィなサウンドのロックを聴かせてくれる。
04 Limited Sazabys
2008年結成、2010年メジャーデビュー、愛知発の4人組ロックバンド。
メロコアをベースとしたハイテンポで展開の早い美メロにベース&ヴォーカルのGENのハイトーンで独特な声がフォーリミのサウンド。
ギターが2本いることもあり、リードとバッキングを分担しつつユニゾンするところはしっかり合わせるため20年前の超シンプルなメロコアをイメージするとかなりイメージが違うかもしれない。
04 Limited Sazabys『swim』(Official Music Video)
GENの声はハイトーンヴォイスであるのは確かなのだが、それが故に女声や幼声や猫声と言われてあまり男らしいゴリゴリの歌い方をしていないと表現されがち。
こればっかりは好き嫌いなので、歌声が気に入るor気にならないなら問題はない。
また、ベースヴォーカルの宿命としてベースラインがシンプルなルート弾きがほとんどでつまらなく感じるかもしれない。しかし、その分ドラムのKOUHEIは手数が多く突っ込んだノリも得意なため、リズム的に退屈はしない。実はここにフォーリミの秘密があったのだ。
04 Limited Sazabys「Terminal」(Official Music Video)
見た目的にオシャレだと言われるフォーリミだが、前述の[Alexandros]のオシャレとはジャンルが異なる。[Alexandros]がモードでドメブラで固められている一方、フォーリミはサロン系でポップな雰囲気。これも好き嫌いで良し悪しがある。
地元愛知でYON FESを主催し大成功を収めており、2016年9月には2ndアルバムの発表もあるため、今後一層楽しみなバンドだ。
BRADIO
2010年結成、2014年メジャーデビュー、4人組ロックバンド。
BRADIOは造語で「Break the Rule And Do Image On」の短縮形であり、日常的なことを壊して、その日常の世界(Rule)に、素敵な時間や空間のイメージを加え(Do Image On)、良き変化(Break)をという意味。
BRADIOはブラックミュージックに大きく影響を受けており、サウンドはファンキーでヴォーカルはソウルフル。それでいてメロディがポップで親しみやすく、サウンドと相まってオシャレな色恋沙汰の歌詞がキレイに決まる。
BRADIO-FUNKASISTA (OFFICIAL LIVE VIDEO)
ファンク、ソウル、R&Bが源流としてあり、見た目も赤、青、緑、黄のスーツを着ているところもそういった影響をうかがわせるエンターテイメント性がある。
それはライブパフォーマンスも同様で力いっぱい最高のサウンドを聴かせてくれる。
アップテンポの楽曲なんかはとてもノれるし、一緒に踊ってしまいたくなる。
BRADIOがライブを盛り上げるお祭りバンドとしての面がメインだったように思う。その姿を4thシングルで良い方向に裏切ってくれる。ハードに踊り狂う「動」に対して、「静」の姿を見せてくれたのだ。そして、こんなにしっとりとしたBRADIOの魅力はアルバムやミニアルバムで少し聴けるくらいであまり多くはなかったのだ。
なかなかロックに寄りすぎると日本語の歌詞を充てるのが難しいこともあるのだが、ヴォーカルの真行寺の大人で色気のある歌詞は本当にキレイに楽曲を貫く。
世界観のある歌詞だって、はっちゃけた歌詞だってしっかりと紡がれているので、より音楽を深く味わうことができる。
BRADIOの音楽は一言で言うならインディーズ時代のミニアルバムのタイトルの通り「DIAMOND POP」なのだ。
WHITE ASH
2006年結成、2013年メジャーデビュー、4人組オルタナティブロックバンド。
日本にいて音楽を聴いていると、どうしてもJ-POPという枠組みにハマりがちになり、日本独特のポップさみたいなものがチャート上位を占めがち。そんな音楽シーンに殴り込みをかけるかの如く、硬派にロックを貫いているのがWHITE ASHだ。
ポップな音楽はとても聴きやすく、様々な情報が整理されていて受け入れやすくなっているのだが、WHITE ASHのサウンドやアレンジはそんなこと気にしちゃいない。
WHITE ASH / Crowds【Music Video Short Ver】
左利きでギターを抱えるヴォーカルはのび太。ここにきて名前でもロックンロールを表現してくるところに意表をつかれる。しかし、左利きだろうがどんな名前だろうがカッコイイ歌を歌えればそんなの関係ない。
そして、ベースが紅一点の彩。今女性ベーシストは珍しくはなく、スーパーカーの古川美季、Base Ball Bearの関根史織やサカナクションの草刈 愛美、凛として時雨の345と男性多数のバンドの中の女性ベーシストは挙げればきりがない。
WHITE ASH / Blaze 【Music Video】
いつもソリッドなロックばかりかというとそうでもなく、ちょっとダンス寄りにしてみたりという楽曲の幅は持っている。
歌詞は日本語も英語もあり、英語が下手くそという印象はない。むしろ、英語で歌ってくれているお陰であまり歌詞を気にせず楽器隊のカッコよさを楽しむことができるのはかなり大きい。
これから先も楽曲のポピュラリティとオリジナリティの間で悩みそうなバンドであり、オリジナリティが強くなりすぎることだけは注意して欲しいバンドだ。
それに失敗したのが一時期の椎名林檎だから。
THE ORAL CIGARETTES
2010年結成、2014年メジャーデビュー、4人組ロックバンド。
1990年代後半~2000年代のJ-POPをちゃんと聴いてきましたという感じでちょっとハードにJ-POPをやり抜くバンドがTHE ORAL CIGARETTESだ。
どこかヴィジュアル系バンドっぽいテイストを感じながら、最近のJ-Rockっぽさを醸し出すのは本当にスゴイ。
1stシングルの「起死回生STORY」は非常にカッコいい曲だが、タイトルが椎名林檎っぽく日本語+英語感もあり、ONE OK ROCKっぽく中二病感もある。
THE ORAL CIGARETTES「起死回生STORY」MUSIC VIDEO
何を言われようともTHE ORAL CIGARETTESの魅力は楽器の上手さでもなく、歌詞の良さでもなくとにかく美メロを生み出す力があること。 これ以外にないと思う。
美メロは一回聴いただけで口ずさめるほどのキャッチーさを持っていて、音楽の商業的価値を考える時にこれ以外にないほどのパワーがある。
もちろん、それは毎回生まれるわけではないが、しっかりと継続していることに価値がある。
2ndシングルの「エイミー」は本当に名曲でこれぞJ-POPといった内容。自分としても久々にキャッチーな名曲でビックリしたのだが、これが2016年上半期に聴いた曲にもなっている。
どこか90年代のヴィジュアル系っぽいナルシズムが入った山中 拓也の歌い方であったり、ちょっと古臭い90年代っぽい言葉やサウンドは自分の様なアラサー以降の世代にとっては懐かしく、それ以前の世代には新しいものとして映るのかもしれない。
WANIMA
2010年結成、2014年メジャーデビュー、熊本県出身のスリーピースバンド。
メロコアど真ん中を突っ走るバンド。スリーピースであったり、コーラスワークであったり、サウンドであったり。いい曲だと言われる曲はメロコア一直線だが、案外レゲエ要素の入った曲もいい曲だから何も言えなくなる。
往年のメロコアが好きで英歌詞嫌いの人でもWANIMAならイケる。しかもその歌詞が実直で素朴で青さがありつつ、大人になる過程で一度は通るであろうルートを外さない野郎らしい歌詞。言っていることが良くわかる。
よく聴くと楽曲自体は凄くポップでアレンジを変えたらロック感すら出なくなるくらい普通の曲だったりするのはここだけの話。
【8/3発売】WANIMA -ともに Full ver.(OFFICIAL VIDEO)
WANIMAにはポピュラリティがある。だからこそ多くのフェス主催者に声をかけてもらって出演を重ねている。
歌詞の良さだってKENTAの人間性が感じられて、どんなにつらくてもポジティブに語ってくれるこういうバンドが日本に1つぐらいあった方が良いと思わせてくれるのだ。しかもキャッチー。
喜びも憎しみも痛みも悲しみも愛しさも切なさも怒りも悩みも自分の中の天使も悪魔も、全部詰まった歌詞が音の塊に乗せて飛んでくるんだから。
何というか近年稀に見る最高のメロコアバンド。
ROACH
2003年結成、未だインディーズで活動する沖縄出身の4人組ロックバンド。
ハードコアサウンドと沖縄独特のメロディラインが融合するへヴィでどこか懐かしさのあるバンド。ラウドロックのようにダウンチューニングを使いこなし、歌い・叫ぶヴォーカルの姿は2000年以降のエモっぽさも感じられる。
彼らのハードなパフォーマンスを生んだのは沖縄の環境にある。米軍基地でのライブパフォーマンスを行っていたため、普通の音楽・パフォーマンスでは喰いついてくれない。そこから反応の良くなるように独特のライブを行うようになり、そこが魅力になった。
メロディはフックが効いていてとてもメロディアスだが、あまりメロディ酔いしれているとハードコア・ヴォイスのパートでガツンとくる演奏でハっとさせられる。いわゆるロックの静と動ではないソフトさとハードさの融合なのだ。
ラウドロックを推し進めるにはバンドのグルーヴがなければ、ただうるさいだけで低音はハッキリせずぼやけてしまう。そして、どんなにへヴィなサウンドを鳴らしていてもヴォーカルに個性が無く、声が届かなければただのラウドな演奏になってしまう。そんなサウンドのポイントをしっかりとクリアし、音楽的に届きやすい形にしているバンドで、ライブまで最高と来たらこんなバンドから目が離せなくなる。
SiM
2004年結成、2013年メジャーデビュー、神奈川県出身の4人組レゲエパンクバンド。活動期間は長いがメジャーデビューしたのは割と最近。
レゲエパンクというあまり耳にしないジャンルなのだが、何てことはない楽曲の幅としてロックをベースにパンクのテイストが入っていたり、レゲエの要素が入っていたりという多彩な音楽をやっているということ。
ロックとヒップホップの融合は1990年代から行われおり、今でこそ当たり前だがここにきてロックとレゲエの融合、さらにはパンクとレゲエの融合と相成ったわけだ。
実際のところSiMはパンクの勢いと時折現れるレゲエの2・4拍目バスドラ+スカというリズム要素、全体にはへヴィなメタルサウンドとクリーンヴォイスとデスヴォイスパートが絡み合っているのである。
そして、PVの中で見せてくれるような激しいパフォーマンスをライブではさらに激しく行ってくれる。どんなに演奏が上手くたってライブではパフォーマンスがしっかりしている方が見る側としては楽しい。
SiMは踊れて・泣けて・叫べるという3拍子揃った珍しいバンドだ。
どれか一つないし二つ持っているバンドはあるが、三つともそろうことはなかなかない。
緻密なアレンジと様々な音楽性が折り重なり絡み合った独特なサウンドなのにポピュラリティは失わない。SiMの持つバランス感覚は天下一品だ。
最後に
「邦楽は」とか「日本のロックバンドは」という主語で語られるとき、洋楽と比べて良くないという文脈になりがちだが、決してそんなことはないと思うし、楽しみ方のポイントを押さえることでより音楽が良くなる。
また、今回紹介するバンドは旬のバンドである。鮮度が高くとても良い状態のバンドが並んでいる。そして、オリジナリティとポピュラリティのバランスを崩すことなく良い音楽を生み出している。
次点としてはKANA-BOON、coldrain、Crossfaith、KEYTALKとかその辺。いずれのバンドもオリジナリティとポピュラリティのどちらかが弱かったりバランスが悪かったりするので。
2010年代の音楽は今までの音楽をミックスして新しさを出している。メロディや歌詞が良いのは当たり前で、さらに+αが楽曲としてないと聴いてもらえない。
こんな感じの進化を続けて行って、2020年代の音楽はまだ新しさを提供できるんだろうか?と思う一方で、原点回帰する方法もあるためファッション同様に何十年に1回流行りが繰り返されていくのかもしれない。
こちらからは以上です。
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