Jailbreak

新しい世界の切り取り方

Pat Torpeyの小技が効いてて一筋縄ではコピーさせてくれないドラムのイントロ

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Pat Torpeyは自分の大好きなドラマーの一人です。そんなPatが亡くなって2年以上がたつ。そこで、再度Mr.Bigでの楽曲で、実はなかなかのテクニックが紛れ込んでいるイントロが多々あります。そのテクニックに反して、サラっとかましてくる感じを少しでも味わってもらえれば、何よりです。

Shine 『Actual Size』

Richie Kotzenが加入してから2作目のアルバム『Actual Size』のシングル曲。とてもポップでキャッチーなコーラスが印象的な曲です。この曲のイントロですが、クラッシュシンバルを叩いて8ビートが始まるまで、何音入っているでしょうか。6音聴こえていれば、良い方です。実は9音入っています。6ストロークロール+16分音符3つです。

これ自体はよくあるフレーズで、ある意味脱初心者フレーズとも言えるレベル感です。シンプルに聴こえますが、意外と凝ったフレーズの典型です。


Dancin' With My Devils 『Get Over It』

分かりやすくドラムソロから始まる「Dancin' With My Devils」 。これも小技が効いていて、メリハリがあってカッコイイドラムの典型です。

冒頭のスネアですが、スネアの前の部分はバスドラの連打だったりします。スネアのみのフラムのように聴こえますが、これがバスドラなのでスネアがヌケてきます。

リズムを刻み始めても、両手よりも、両足でのバスドラがリズムのアクセントとなっていてシンプルに聴こえない。ちょっと凝ったリズムを使うことで、グルーヴを生み出しているのです。 


Price You Gotta Pay 『Bump Ahead』

 12/8拍子が醸し出す3連系のノリで、マイナーキーのブルース調の雰囲気を感じられる楽曲です。Mr.Bigが目指すブルースの一つの形であったと思います。

この曲のイントロは、通称スケベドンを使ったフレーズになっています。スネア→タム→フロアタム→バスドラの流れでたたくフレーズのことです。ついでに頭にスネアのフラムが入っているので、まさにこんなフレーズです。

スケベドン自体はボンゾなんかも使っているオーソドックスなロックドラムのフレーズです。いずれもシングルストロークで済むので、パワフルで派手なフレーズです。これをイントロに持ってくるセンスは、さすがです。


Temperamental 『Bump Ahead』

 「Temperamental」は『Bump Ahead』の中でも中盤から終盤に向けて、ミドルテンポながら盛り上げていく楽曲です。アルバムの1曲ではあるのですが、ライブでの演奏率も高く、実はテクニカルな楽曲だったりします。

さて、この曲のイントロはフィルインではなく、リズムパターンです。普通の16ビートではなく、両手両足を使って16分音符を刻むリニアなフレーズになっています。詳細はこの動画が分かりやすい。

16ビートを刻もうとすると、右手左手を交互に音を出した方が分かりやすく刻めます。しかし、そうではなく、ある程度バラバラに叩き、フレーズ自体にアクセントをつけることで、グルーヴを出していくことを意図としています。実際、イントロのカウベル(金属音でコンコン鳴っている打楽器)の位置が一定ではないので、ひねくれた感じがうねりを生んでいることが分かります。このうねりと違和感のバランスがインパクトになるのですが、そんなに簡単にこんなフレーズは思いつきません。

 

Out Of The Underground 『Hey Man』 

ブルースに傾倒していった『Hey!Man』で、ちょっとハードロック色が強い曲が、この曲です。12/8拍子のブルース感はありつつ、 重たいリズムがとても心地よい楽曲です。

ド派手イントロの右手→左手→右足の連続。このパターンは非常に分かりやすいんですが、高速で繰り出すことでカッコよさが増します。両手の叩く位置は変えていて、スネアの位置が9連符の1つ目と7つ目にあたっています。これが3連符の1つ目と3つ目に当たるので、ハネながら音符が詰まっている状態となっています。アクセントの移動にもなっているので、ただの連打ではないところがよく考えられたフレーズだと言えます。


Colorado Bulldog 『Bump Ahead』

言わずと知れたハイテンポな代表曲。この曲は特にドラムがというよりは、ギターとベースも含めて3つの楽器が高次元でユニゾンを繰り出す超高難易度なことをやってのけているイントロです。そういう意味では、ドラム以外も含めて、一筋縄ではコピーさせてくれません。

大前提として、たくさんの音符を正確に処理できる能力が高いのは、楽器のテクニックの大事な要素の一つです。もちろん、早く処理できることだけでは音楽的とは言えないのですが、そこを音楽的に聴かせるのがミュージシャンの技量だったりします。

ドラムのフレーズ自体は、両手の3連と両足のバスドラの3連を組み合わせているのですが、この3連というのが一つ厄介です。右→左→右と叩くと、どうしても続いて左を出したくなったりします。これをせずにしっかり3連で止める技術が必要になります。また、Pat自身が教則ビデオでバスドラを右→右→左というダブルのフレーズを披露していたりしますが、これまた難しい。そもそも高速に片足で連打するのはテクニックが必要になるのです。

Take Cover 『Hey Man』 

アルバム『Hey Man』からもシングルカットされたこの曲。落ち着いた少しスローなテンポに、16分音符のフィールで刻むことがうるさくなく良い緊張感をもたらす不思議な楽曲である。歌のバック以外は、ギターやベースが自由に動くことによって、浮遊感をもたらしている。

この曲のイントロのドラムは、全身を使って16分音符を刻むフレーズ。二つ打ちも含むので、ある意味全身パラディドル。 これも普通の16ビートや8ビートの延長線上にはないので、全然別なテクニックが必要となる。

そんな楽曲を、かねあいよよかちゃんが、Billyとコラボしてカヴァーしていたんだから、スゴイ。

こういう特殊なパターンを1曲通して繰り返すというのは、なかなか大変で、別なテクニックが必要だったりします。早くたくさんの音符を処理する能力とは別なテクニックで、よくあるパターンとは別な特殊なパターンを繰り返すのは、そのパターンを体に染みつくまで練習しないといけないので、大変である。

ちなみに、このフレーズはギターのPaul Gilbertが打ち込みで作ってきたものが元ネタであるため、Patもきっとかなり練習をしたんだろうと想像に難くない。

 

最後に

イントロからスゴイことをするのは、印象を与える意味ではとても有効です。そこを難しいことを難しい顔をしてやるのではなく、涼しい顔をして繰り出すからこそプロである凄さが増します。Patはドラムを叩くときは、キツそうな顔というよりは、基本的に笑顔なんですね。こういう余裕があるのは、本当にさすがだなと思うのです。そういう凄さの一旦を感じてもらえれば、何よりです。 

 

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こちらからは、以上です。

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