Jailbreak

新しい世界の切り取り方

15年目の変化はコラボ。木村カエラ『いちご』の感想

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いちご (初回限定盤)

1.Continue

2.セレンディピティ

3.BREAKER

4.MUSIC ON, WORLD OFF

5.曖昧 me

6.clione

7.ミモザ

8.ストレスポンジー

9.戦闘的ファンタジー

10.ハイドとシーク

11.いちご

オススメ曲→ 1,7,9,10,11

 

木村カエラの『いちご』を聴いたので、その感想。

個人的には、木村カエラは記事を一本書ける程度には好きなアーティストである。

今回はいつもの作曲家(渡邊忍、會田茂一、AxSxE)による作曲+カエラの歌詞以外に、ミュージシャンとしても有名なアーティスト、あいみょんやCharaやAAAMYYYが作曲を担当しているのが、大きな変化。木村カエラ自身が作詞作曲をしたのは、ラストの「いちご」のみ。作詞自体は、2ndアルバム『Circle』から収録曲のほとんどをカエラが手掛けてきている。なので、作詞自体は珍しいことではない。それでも、他のアーティストと交わることで得られた変化があった。

まさに1曲目の「Continue」は15年ミュージシャンを続けてきて、女性としても人間としても成長してきたカエラだからこそ歌に力を与えた曲だ。あいみょんが作詞・作曲をしているのだが、あいみょんが歌わせた”シワ”や”オバサン”や”眉間の川の字”はとても客観的。しかし、メッセージの矛先は”私”であるところが、とても不思議な感じがして、今までなかったカエラの歌の表現となっている。

これと対になっているのが、アルバムラスト11曲目の「いちご」で、この曲はカエラが作詞作曲をしている。今まで選んできた道も選ばずに来た道もよかったことにして、今の自分を肯定する歌詞になっている。この曲は逆にいちごが人生を表していて、その人生を楽しもうというメッセージが込められていると思う。これをストレートに”私”として語ってしまうと内向的すぎる。ここは歌詞の表現として少しぼかすことで、より世界を広げて全体像としてより伝わる表現にしている。

他にもCharaとコラボした「曖昧 me」はちょっとアップテンポで、元気な雰囲気を持ちながら、コーラスによって浮遊感を持った不思議なアレンジになっている。逆に「ミモザ」ではとても美しい愛のバラードに仕上げている。この対比も面白いし、Charaの持つ雰囲気もちょっと反映されたサウンドになっているのが、とても面白い。

 

今回よかった楽曲としては、前述の記事で書いた哀愁感と童謡感が行ったり来たりする「戦闘的ファンタジー」のカエラの歌声は、かなり印象に残っている。楽曲のアレンジ自体が「マスタッシュ」のような勢いがありつつ、哀愁感のあるサビと童謡感のある歌い方をするAメロを行ったり来たりするのだ。こういうメリハリもありだ。

全体として、カエラのロック感はほぼなくなって、深刻に真面目に歌うか、童謡感を出しておちゃらけて歌うスタイルの2パターンがこのアルバムを占めている。 インタビューでも語っているが、カエラ自身がこの15年変化を意識的に続けてきたようだ。

変化し続けて、テーマを変えているので、一番最初のロック感が減ってくるのは当然だと思う。今回の作品は近年のカエラらしい作品になっている。次の新たなステップとしてのミュージシャンとのコラボは成功したように思う。別なアーティストとのコラボによって今後もカエラの世界は広がっていくのだろうか。

 

こちらからは、以上です。

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