いきものがかりがデビュー10周年を迎えた。
3人の音楽は馴染みやすいサウンドにポップでキャッチーなメロディが乗り、分かりやすい歌詞が心に届く。
あるインタビューでリーダーの水野が「みんななんだかんだいってJ-POP大好きでしょ?僕はJ-POP大好き」と発言していたが、この辺りがいきものがかりがJ-POPの王道を突き進んでいる理由だろう。
とにかくポップないきものがかりだが、いきものがかりを中心として音楽の幅を広げようと思ったらどんなアーティストを聴くだろうか。
今回はそんなことを考えたので、いきものがかりの魅力を中心におススメアーティストを紹介していく。
いきものがかりの魅力
いきものがかりの魅力は以下4つに集約されるのではないだろうか。
①クセが少ない真っすぐで元気な歌声
②身近で素朴な音楽
③紅一点ヴォーカルのバランス感
④J-POPの王道
いきものがかりを貫いているのは常に分かりやすいポップな音楽がある。
余計な解釈を必要としない分かりやすい歌詞にポップなメロディが乗り、そこに歌の寄り添ったアレンジがある。
歌を中心として常に寄り添う関係で成り立っているのだ。
楽曲の作成の中心はリーダーの水野であり、山下と吉岡も関わり、あくまで原案は自分たちで作り上げるシンガーソングライターの形をとっている。
シングル曲は女性らしい歌詞が多いのだが、案外水野が作っているのだからビックリすることもある。
ただ、そこに吉岡のクセのない歌がいつも音楽の邪魔をせず、快適に聴かせてくれる。
ここからは、各要素から同じ魅力を持った日本の女性ヴォーカル・バンドを紹介する。
①クセが少ない真っすぐで元気な歌声
いきものがかりの音楽はいつもどの世代にも届けやすい形になっている。
その大事な要素として、歌声に変なクセがないのだ。
松田聖子のように「る」が「とぅ」になったり、和田アキ子の様にあいうえおがはひふへほになったりもしない。
枯れているでもなく、鼻にかかるでもなく、パワフルすぎず、細すぎず、太すぎず、それでいて、しっかりと真っすぐに届く歌声。
そんな基準で4組のアーティストを紹介したい。
①-1 ケラケラ
歌声と楽曲の雰囲気を含めてトータルで一番いきものがかりに近いアーティストがケラケラなのは間違いない。
まず何よりヴォーカルMEMEの歌声が吉岡聖恵とソックリ。
MEMEの歌声が楽曲によっては高音域の音の開き方が違うので全然似ていない時もあるのだが、AメロBメロを歌う分には本当によく似ている。
ほとんどの曲をベースのふるっぺが作曲している点であったり、歌詞にドラムの森さんとMEMEも関わることがあり、この辺りもいきものがかりと一致している。
違う点を挙げるとするなら、音楽的にはケラケラの方がちょっとだけバンド感がある。
それはメンバーのふるっぺがベースで、森さんがドラムなのがあるだろう。
いきものがかりはギターが多少変わったことをやっても、ベースとドラムが安定して普通でいてくれる。
あとはMEMEは狸顔で、吉岡はカワウソ顔。顔まで似ていたらそれはもう…
①-2 つじあやの
つじあやの / 風になる 【VIDEO MUSIC AYA~NO 2009】
歌のクセの少なさという意味ではつじあやのも負けていない。
吉岡の歌もそうなのだが、高音域でも苦しそうに歌うことはない。
そのおかげでリラックスして聴くことができる音楽になるのだ。
また、楽曲全体も優しさに包まれており、攻撃性は全く感じられないのも同じだ。
ただ、元気さという点でちょっと弱い。
それはウクレレを弾きながらのせいなのか、そのハワイアンのイメージのせいなのか、日和ってる感が漂っている。
元気というよりも、のほほん。余計な力が入っていないのだが、そもそも力が入っていない。
①-3 川嶋あい(I Wish)
歌が上手いがテクニックに走ることなく、歌を歌うことをちゃんと見つめているところであったり、クセの少なさは川嶋あいも同じだ。
シンガーソングライターとして自ら音楽を作り、発表するところはいきものがかりも同じであり、楽曲に向かうし姿勢は似ているかもしれない。
いきものがかりの吉岡に比べると高音のパワー感が劣るのは否めない。
あとはもう少し売れると同じ土俵に上がれるかもしれない。
はやりアーティストは売れ続けなければいけない。
①-4 柴咲コウ
柴咲コウが女優だけだと思ったら間違いだ。
その歌声は無駄なく無理なくしっかりと歌い上げることができる歌手だ。
ドラマ主題歌になることも多く、タイアップが多いのはいきものがかりと同じなので、耳にしたことが多いかもしれない。
これもカヴァーアルバム「こううたう」をレビューしたのがきっかけなのだけど。
メインが女優ではあるが、29枚のシングル・6枚のオリジナルアルバムを発表している列記としたアーティストである。
ただ、シンガーソングライターではないので、あくまで書いてもらった楽曲を歌うことになってしまう。
外部ライターが書いた音楽がいいのは当たり前で、自分たちで書いた曲を歌うことの難しさを抜きにしていきものがかりと比較はできないだろう。
②身近で素朴な音楽
いきものがかりの音楽の聴きやすさはその素材が身近で素朴なことに因るところが大きい。
シンセを多用せず、基本的には生楽器を中心にサウンドが作り上げられることが多い。
さらにストリートライブで客を集めた経験からなのか、ほぼギターで弾き語りできるような曲になっている。
そういった、小難しいことをせず素材の味をしっかりと伝えようとする音楽は無理なく心に届く。
②-1 奥華子
素朴で分かりやすいポップスとして、奥華子は優秀だ。
歌詞の難しさはないが表現から景色が浮かびやすく、適したシーンの多さも聴きやすさの一つ。
ピアノ弾き語りスタイルのため、あまり凝ったアレンジをしないところも素朴さが出ていて、いきものがかり同様王道のポップスコード進行を多用する点も似ている。
本人の赤い眼鏡のせいもあるかもしれない。
歌声が甘めなので、女の子の歌感が拭えないのが幅広いウケを狙う意味でマイナスになることがあるかもしれない。
いきものがかりと比べるともう少し薄味な印象で、ポップスとしてのキャッチーさは足りないかもしれないが、力んで聴く必要がない音楽であることは確かだ。
②-2 Kiroro
世代を超えて、時代を超えて愛されるポップスはKiroroにも当てはまる。
Kiroroの音楽のやさしさは別記事で詳しく書いている。
身近さ素朴さの代名詞と言っても過言ではないKiroro。
やさしい言葉と分かりやすいメロディ。合唱曲にしてしまえるくらい、ピアノと歌でしっかりとした作りになっている。
いきものがかりと大きな違いを挙げるなら歌詞の青さ。
Kiroroの歌詞は大人な歌詞で、あの「未来へ」を10代が作ったと思えないくらいである。
一方、いきものがかりは30歳を過ぎても未だに青さの残る歌詞だ。
どちらが良い悪いではなく、ただ違うというだけ。
②-3 羊毛とおはな
素朴な音楽で推すなら羊毛とおはなもなかなか良い。
ギターと歌で構成されたスカスカの音なのに、ギターの音のやさしさと歌声の無理のなさが素朴さを醸し出す。
決して力まない、それでも届けたい身近なメッセージは届く。
羊毛とおはなはポップスの中でも、素朴さというよりもかなりオーガニックな雰囲気を持っている。
歌声がウィスパーヴォイスなのと、ギターを中心としたアレンジのせいなのだが、これが羊毛とおはなの魅力なのでそのあたりが合わないと好きになれないかもしれない。
おはなさんが2015年4月に亡くなってしまったことで、新たな作品が望めないのはとても残念である。
②-4 aiko
aiko-『カブトムシ』music video short version
aikoも身近さ・素朴さを持ち合わせている。
aikoの歌詞は日常をベースにしていることが多く、季節感やシーンが浮かぶのはいきものがかりも同じ。
デジタル感の無さやバンド感のあるアレンジと歌声も素直なので聴きやすさという点ではポイントを抑えている。
aiko自身がシンガーソングライターなのもあるが、歌詞がかなり女性目線なのでその辺は致し方ないところ。
女性目線の歌詞もaikoの魅力だから。
③紅一点ヴォーカルのバランス感
同じグループ・ユニット内に男女がいるとそれが絶妙なバランスを生み出すことがある。
その影響が音楽に出て、良い結果を生むことがある。
力強さと繊細さが共存することであったり、しなやかさの中に芯があったり。
いきものがかりもそんなアーティストなのだ。
③-1 Dreams Come True
DREAMS COME TRUE THE BEST!私のドリカム/スペシャルダイジェストムービー
世界に通用する女性ヴォーカルを擁するのはDreams Come Trueだろう。
今でこそ2人で活動しているが、元々は3人だった。
シンガーソングライターとしての面を持ち合わせていて、アレンジもベースの中村が行う。
作詞は吉田が行い、作曲は両方が参加することによるバランス感がドリカムの曲の良さに現れている。
吉田美和の歌の上手さは確かなものなのだけど、いきものがかりは決して歌姫を抱えているわけではない。
曲によっては吉田美和の歌唱力とテクニックがあっての曲だったりするので、ちょっとクドさを感じることがあるかもしれない。
③-2 Every Little Thing
ELTも元々3人のユニットで女性ヴォーカルだ。
2人になり、持田の歌い方が変わってからの方が角が取れていい感じになっている。
元々エレクトリックロック感を前面に出したAvexお得意のサウンドだったが、キーボードの五十嵐が脱退してからはよりポップで生音を生かすアレンジに路線を変えている。
2005年頃に喉の調子が悪くなり、歌い方まで変えた持田。
その結果デビューの頃とは違うELTになってしまったが、それが別の良さになっている。
ELTはギターの伊藤がいる関係もあり、歪んだギターが入ることがよくある。
それがロック色を強めてしまう結果になり、ポップスでもロック寄りに聴こえてしまう。
また、五十嵐がいたころはシンセ色も強いのでいきものがかりのサウンドよりも尖っているのが大きく異なる点。
③-3 The Brilliant Green
the brilliant green - There will be love there -愛のある場所- (live)
これも元3人のバンド、The Brilliant Green。
現在は夫婦になったヴォーカルの川瀬智子とベースの奥田俊作の2人のユニットになっている。
メロディのポップさと小難しいコード進行を使わない。
そして何より、ヴォーカル川瀬智子のフロントマンとしての魅力。
これがブリグリの魅力だ。
サウンドはポップスというよりもロック色が強く、何だか泥臭い雰囲気があるのが解く直であり、違いである。
もっとポップさを求めるなら川瀬智子のソロプロジェクトTommy february6とTommy heavenly6も要チェックだ。
③-4 My Little Lover
マイラバも元々3人組。現在はヴォーカルAkkoのソロプロジェクトとなっている。
1990年代のマイラバは最高でポップな作品を発表し続けていた。
小林武のサウンドプロデュース力だったり、Akkoの女性としての魅力だったりと評価される要素は色々持っていた。
特に1stアルバムの「evergreen」、2ndアルバムの「PRESENTS」は最高のアルバムである。
2002年にギターの藤井謙二が脱退し、2006年に小林武史が脱退して以前ほどのポップさとキャッチーさが無くなってしまったのが残念なところ。
Akkoの不思議な透明感のある歌声は個性的といえば個性的なので、クセがちょっと多めかもしれない。
④J-POPの王道
いきものがかりの音楽はとにかくポップ。
同じようにポップスの王道をいくアーティストを紹介したい。
④-1 ZARD
ZARDはもうスタンダードナンバーになるくらいJ-POPの王道を行くZARD。
楽曲はどうしても90年代のものが中心になってしまうが、当時のCDが売れまくっていた時代で売れていたのは確かで、その楽曲の良さはお墨付き。
ヴォーカル坂井泉水が歌詞にこだわりを持っていて、真摯に歌詞と向き合っていたのは有名な話。
歌はクセが少ないのだけど、サウンドがどうしても80年代後半のハードロックの名残があって、妙にハードなところが気になるかもしれない。
これは当時のビーイングの色なので仕方ないのだが、後半の作品になるとこのロック感も抜けてくるので2000年に入ってからの作品が良いかもしれない。
④-2 miwa
最近だとJ-POPの王道を突き進んでいるのはmiwaじゃないだろうか。
ギターを抱えて歌うシンガーソングライター・女性ヴォーカルの中では頭一つ出ている。
タイアップがつく曲が多く、露出が多いのもいきものがかりと似ている。
ただ、最近のJ-POPは流行りのEDMを取り入れる傾向があって、そういうアレンジがされた曲があるのでその点が大きな違い。
歌声も若干クセがあるのでそのあたりが気にならなければ好きになれるはずだ。
④-3 RAM WIRE
2010年代の女性ヴォーカルがいるユニットでJ-POP王道を突き進んでいるのはRAM WIREじゃないだろうか。
ユーズの伸びやかなヴォーカルとイマドキのJ-POPサウンド。
歌詞も分かりやすいメッセージが込められていて、難しい解釈を必要としない。
その一方でベースにHip-Hopが流れているので、ビートが若干ポップじゃない。それを含めてイマドキなのだけど。
また、男性ヴォーカルのMONCHもいるため、純粋な女性ヴォーカルのユニットではない。
④-4 松任谷由実(荒井由実)
最後は大御所ユーミン。
1970年代から活躍し続けていて、アレンジャーで夫の松任谷正隆とともにJ-POPの礎をきづいている。
今でこそ多用されるようになったメジャー7thや11th13thといったテンションコードを使ったアレンジや展開を始めた人である。
ユーミンはJ-POPスタンダードとなっているのだけど、個性的な歌と大人な歌詞の世界観はいきものがかりの音楽とは一線を画している。
男性ヴォーカルで言うと桑田佳祐もそうなのだが、この人が歌ってこそのこの曲だったりする。
歌詞が大人なのは元々お嬢様育ちのユーミンだからできることだったりするので、他の人が真似ても上手くいかないことが多い。
最後に
ここまで16組のアーティストを紹介してきたが、いかにいきものがかりが普通であることが分かったと思う。
案外、他の女性ヴォーカルを探してみると、あまりにも歌詞がダークサイドに落ちることがあったり、メッセージが強すぎたり、ロック色・R&B色等のあるジャンル色が強かったり、声がしゃがれていたり、くどい歌い方をしているアーティストの多いこと。
それを個性と言えばそれまでなのだが、フックになる時もあるがそのフックが変化球になることもある。
それはいきものがかりがストライクゾーンのど真ん中を的確に狙って投げ込んでいっているということなのかもしれない。
普通であること、誰にでも真似できること。
でも、それを本気でやろうとすると全然できない。
本当のいきものがかりの凄さはそういうところなのだろう。
こちらからは以上です。
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