J-POPは聴いたことがあるけど洋楽はちゃんと聴いたことがないとか、これから洋楽を聴いてみたいけれどどれから手を付けて良いか分からないという方には、キャッチーでメロウな2000年以降のカントリー・ミュージック(以後、カントリー)をおすすめしたい。
カントリーはアメリカ発祥の音楽ジャンルで、アメリカではかなり一般的で未だに広く聴かれるジャンル。日本で言うと歌謡曲、フランスのシャンソンみたいに割とその国では聴かれるが、それ以外の国ではそうでもないことが多いジャンルでもある。だからと言って悪いわけではなく、ハーモニーの美しさやすぐ口ずさめるキャッチーなメロディとギター、ベース、ドラムを中心としたサウンドはJ-POPにも通じるものがあり、そう違和感なく聴きやすい側面を持つ。
とりあえず聴いてみて良い・悪いを判断しやすい点で、カントリーは良い。何より、2000年以降のカントリーはカントリーではあるが、ロックやフォークやブルースといった他のジャンルの要素も入っているのでよりポップに仕上がっているので聴きやすい。
今回は個人的にオススメできるカントリーアーティストを紹介する。
Carrie Underwood
Carrie Underwoodはアメリカのオーディション番組アメリカン・アイドル出身で、例にももれず1stアルバム『Some Hearts』が大ヒットしてグラミー賞を受賞する。その2007年のグラミー賞では最優秀新人賞、最優秀女性カントリーボーカルパフォーマンス賞 、「Jesus, Take The Wheel」は最優秀カントリー楽曲で受賞している。
アメリカン・アイドル出身者はいわゆる歌姫系の歌い上げる力がある歌手が多い。楽曲のテイストこそフィドルやマンドリンを入れてカントリー色を出すのは常套手段だが、メロディやコード進行はとてもポップ。それが故に歌の上手さが引き立つのだからCarrieはさすが。その後の楽曲も売れ続けているので、その力は本物だ。
こういう歌姫系のアーティストだと、如実に実力が分かっていいんじゃないかと思う。
Dixie Chicks
正確にはDixie Chicksは2000年以降ではなく、1989年からでメジャーデビューは1997年と、活動歴は結構長い。このお姉さんたち、何が凄いってその精神がロックンロールなのだ。一番有名どころでは、当時の大統領ジョージ・ブッシュが同じテキサス出身なのを恥ずかしいと思うという旨の発言をして世間から大バッシングを浴びる。後に謝罪をするのだが、ライブ活動での混乱やアメリカでの音楽の中心であるラジオで締め出されるなんてことが3年近く続いた。その後発表した「Not Ready to Make Nice」がこれまた凄くて、”いい子なんかじゃいられないの そっちが思うようにはいかないわよ”なんて歌っちゃうこの精神、超カッコイイ。
元々いい子キャラで売っていたわけではないし、だからと言って騒動こそ起こしたのだが芯がないわけではないし、表現者として一人の人間として考えたことを歌っている。そういうところがカントリーとかそういうことを超えて凄いアーティスト。
「Not Ready to Make Nice」はとてもいい曲だが、カントリーということを考えると、この「Not Ready to Make Nice」が収録されている『Taking the Long Way』より前の『Home』あたりがブルーグラス感もあって良いかも。もっとカントリーを濃くしたければDella Mae辺りを聴いてみるのをオススメする。
Little Big Town
Little Big Townはアメリカ出身の男女4人混合グループ。この後にもいくつか登場するが、近年売れてくるカントリーアーティストは案外男女混合が多い。Little Big Townは各々がリードをとり、ハーモニーも重ねる。それによる楽曲の美しさがなかなか他のアーティストには出せない魅力だ。
2013年から2016年のグラミー賞のベストカントリーデュオ/グループパフォーマンスにノミネートされ、2回受賞しており、2016年のベストカントリーアルバムも受賞している。近年のカントリーアーティストの中では安定した評価を得ており、定期的にリリースも続いているのも、良い新作が望める意味では魅力だ。
Zac Brown Band
Zac Brown Bandはアメリカ・ジョージア州出身のバンド。今回紹介する中では唯一のバンドスタイル。しかも、大所帯でZac Brownを含む8人のメンバーがいる。楽器が多いからか、伝統的なカントリースタイルをやりやすいのか、いかにもカントリーなアレンジが多い。Zac Brownの節回しもいかにもというのもあるし、ハードロックの様に金切り声を上げることなんてのもなく、安心して聴けるいい曲ばかり。
他のアーティスト同様にグラミー賞にノミネート・受賞している。2012年の『Uncaged 』辺りがその評価が最大だったかもしれないが、個人的には最新作2017年『Welcome Home』がめちゃくちゃ良かったので、オススメ。
この辺の雰囲気だとLove and Theftもオススメなので、合わせて聴いてほしい。
Taylor Swift
グラミー賞の常連で、今や世界の歌姫Taylor Swiftも元々はカントリー歌手。「元々は」ってところがポイントで、3rdアルバムの『Speak Now』くらいまではカントリー感を残していたが、4thアルバム『Red』からかなりポップになり、5thアルバム『1989』では全くカントリー感が無くなってしまった。テレビ番組のテラスハウスに主題歌として有名になった「We Are Never Ever Getting Back Together」は4thアルバムの『Red』収録。カントリーに限ったことではないが、売れ線のポップなラインに主戦場を変えていくアーティストは珍しくない。Lady GagaやKaty Perryがライバルになるような立ち位置だとジャンルなんかにはこだわっていられない。
元々カントリー自体の懐も深いので、ポップな路線はあるしアルバムの中に数曲カントリー感が少ない曲なんてのも存在するのは一般的なことだ。
何より、Taylor Swiftの凄さはシンガーソングライターとして、自分の恋愛体験を曲にしてしまうところである。この辺は別記事にまとめてある。
最近は活動を休止していて、ここ最近は目立った活動がない。活動を再会してどの路線で進んでいくのかは楽しみだ。
カントリーという意味では、3rdアルバムの『Speak Now』が良い。Taylor Swiftが好きなら、是非Natalie Stovall and The DriveやKelsea Ballerini、Danielle Bradbery辺りも要チェック。
The Band Perry
The Band Perryはアメリカ出身の姉弟グループ。その名の通り、Kimberly Perry、Neil Perry、Reid Perryの3人がメンバーである。メインボーカルはお姉さんのKimberlyで、2人の弟はギターとベースを抱えてコーラスをする。お姉ちゃんはそんなでもないが、下の弟2人が結構似ているのが面白い。2010年のセルフタイトルのデビューアルバムが全米で160万枚の大ヒット。スタートダッシュに成功した。
1st、2ndアルバムこそガッツリカントリーだったが、2015年にレーベルを変えてからポップスに転向。メンバー全員が垢抜けるという暴挙(?)に出て、イメージも含めて路線変更している。2017年にニューアルバムがリリース予定なので、ポップスに転向した姿が見られるのは楽しみだ。彼らも1stアルバムの出来が良いので、まずは1stアルバムから入ってみるのが良い。
Hunter Hayes
カントリー界の王子様Hunter Hayes。2013年のグラミー賞では新人賞、ベスト・カントリー・アルバム賞、ベスト・カントリー・ソロ・パフォーマンス賞の3部門にノミネート。Hunter はこの見た目だが、歌だけでなく自分で曲も書くシンガーソングライターだ。歌声は甘すぎず、薄すぎず、程よくプリンス感を醸し出している。
名曲「Wanted」は彼の名前を冠した1stアルバムの大ヒットシングルで、これが前述のグラミー賞にノミネートされた原動力だ。また、同アルバムのオープニング曲「Storm Warning」では全ての楽器を演奏するというマルチプレーヤーぶりを発揮。Taylor Swiftがお気に入りのアーティストだと公言するカントリー界の王子様は要チェック。まずは1stアルバムを聴いてみるのを勧める。
Thompson Square
Thompson Squareは夫婦デュオ。今まで男女混合、姉弟と様々なパターンがあったが、今回は夫婦。元々ソロで活動していただけあって、どちらがヴォーカルをとっても良いという理想的な状態。外部ライターも使いつつ、基本的には自分たちで曲を書く芯がソングライター夫婦。2人の声が重なり合う「Glass」はマジで名曲。
全体的なアレンジとしてちょっとテイストとしてカントリーが入っている位なので、とてもポップで聴きやすい。割と日本人にも分かりやすい愛情の歌であったり、この「Glass」みたいに2人の関係を歌っても分かりやすいので、歌詞もしっかりと読み込んでみても楽しい。2ndアルバムも良いのだが、「Glass」が収録されている1stアルバムがおすすめ。何より、自分が2016年下半期にパワープレイした曲でもあるので、余計に。
Lady Antebellum
最後は男女デュオ。ヴォーカルはHillary ScottとCharles Kelleyで、ギター・ピアノ・コーラスのDave Haywoodという組み合わせ。Antebellumは「アメリカ南北戦争以前」という意味で、語呂が良かったのと目の前にLady(Hillary)がいたからという理由で付けられたちょっと不思議なアーティスト名である。楽曲自体がとても美しく、ノスタルジックな雰囲気を持っているので、J-POPが好きならすぐ馴染めそうな楽曲が多い。その中でも2010年最大のラブソング「Need You Now」は大ヒットしたので、聴いたことがある方もいるんじゃないだろうか。
男女ヴォーカルの絡みといい、1人でいる時に誰かを愛しく思う気持ちを歌った歌詞といい、楽曲の雰囲気といい、名曲としか言えない。あまりカントリーっぽさはなくて、入門編としては最適。
基本的には1曲を通してどちらかだけが歌うということはなくて、Hillary・Charlesが共にリードとハーモニーをとる。最近のアルバムも良いが、「Need You Now」が収録されている2ndアルバム『Need You Now』か、3rdアルバム『Own the Night』を聴いてみるのをおすすめする。『Own the Night』なら、打って変わって悲しい名曲「Just A Kiss」がおすすめ。
最後に
カントリーの大御所を紹介しても良いのだが、名曲が多いが、ちょっとクセが強すぎるのとカントリー色が強すぎてもしかしたら拒絶反応を示しちゃうかなと思ってやめておいた。John Denverの「Country Road」とかKenny Rogers「She Believes In Me」とか往年の名曲はたくさんあるし、カントリーがいいなと思ったらご自身でカントリーを漁ってみるのが良い。好きな音楽のルーツを探るのは音楽を聴くうえでの醍醐味だ。
こういう音楽が気に入ったら、案外ビルボードチャートのHOT COUNTRY SONGSなんかをチェックするのも楽しいかもしれない。
Country Music: Top Country Songs Chart | Billboard
こういうきっかけで何となく英語も読めるようになったりするし、自分の好きな世界が広がっていくから洋楽は止められない。
こちらからは以上です。
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