Jailbreak

新しい世界の切り取り方

プロに対して楽器の上手・下手を比べて語ることの意味の無さ

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先日、何だかはてブからアクセスが増えたかと思ったら、下記記事のブクマの関連記事に自分の記事が載っていたようだ。

 

上記記事の対象はスピッツだったが、ドラムの崎山のテクニックが凄いとか、 バンド全体が凄いとかそんな話題だった。

いつも思うのは、 音楽のテクニックは、足の速さやものを遠くへ投げられる距離のように、決められたものさしで優劣をつけるためのものでなく、音楽の表現のための手段でしかないということだ。その上で、プロのミュージシャンに対しては一定の敬意を払うべきじゃないか?と思うのです。

 

このブログで「楽器のテクニックだけがアーティストや音楽の価値ではない」という旨の記事を何度か書いている。

初期の記事だと、ローリング・ストーンズを引き合いに出して、テクニックを見せないからと言って一概にミュージシャンとして価値が低いかどうかを考えてみたことがある。

その楽曲に対して、必要なアプローチができていれば、必ずしも過剰なテクニックは必要ないんじゃないかということ。ローリング・ストーンズくらいになってしまうと、演奏が見られるだけでプレミア感があるので、そういうレベルではないのだけれど。

 

楽器のテクニックの無さを語る時、どうもドラムが槍玉に上がることが多い気がする。ヴォーカルやギターよりも分かりにくいし、そもそもそんなに目立つ対象じゃないってことがあるのかもしれないが、理由は不明。ただ、批判されるときはボロクソに言われがち。ドラマーもテクニックが凄い人は世の中にたくさんいるのを知っていると、テクニックを見せないと下に見られて批判されがちなのかもしれない。BUMP OF CHICKENの升について書いたこともあるけれど、これはまさにテクニックを見せないが故の例。

記事でも書いたが、BUMPは幼馴染のバンドなので、どんなにテクニックがあっても、ドラムは升じゃないとBUMPにならないのだ。なので、そもそもBUMPとして成り立たなくなるので、テクニックを批判するのはお門違い。仮にテクニックを批判をしたところで、だから何?BUMPの楽曲の価値が落ちるのかといえば、落ちないはずである。

似たような例で言うと、Mr.ChildrenのJENこと鈴木英哉も似たパターンだ。自分はミスチルが好きで、長年聴いてきているのだが、そもそも楽曲に対するスタンスがテクニックで何とかしてやろう系のアプローチをしないし、ミスチル自体が高度な楽器のテクニックで売っていない。

楽曲に寄り添うドラムは価値がないですか?盛り上げ、鎮め、リズムを支え、楽曲に色を足す。そういうドラムアプローチは単純な手数の多さやメチャクチャなテクニックで表現できるもんじゃない。

音楽のジャンルが変わると、必要なテクニックやサウンドが違う。ドラムの例でいうと、JazzやMetalがテクニック的に上り詰める方向性としてはよくある。どちらも音楽だけど全然違う。

これを見て、どちらを凄いと思うかは好みにもよるところが大きいと思う。Jazzはダブルストロークを綺麗に混ぜて、繊細なドラミング。Metalはシングルストロークを中心としたパワフルで、ダイナミックなドラミング。こんな風にジャンルで狙いが全然違う。土俵が違うので、単純に比較はできないはずだ。

 

自分もテクニックがあるミュージシャンは好きだし、ギリギリを攻めるスリリングな楽器演奏も楽しいと思うので、テクニックがあること自体は大歓迎。

だが、よく考えて欲しいのが、そのミュージシャンがいつも最大限のテクニックを投入しているか?ということだ。特にJ-POPに多い歌モノの後ろでテクニック満載のフレーズをブっこみまくったら、歌の邪魔をして楽曲のバランスを崩してしまう。だからそんなことをしないし、メインとなる歌がない時にちょっと見せるくらいがちょうどいい。

各楽器のソロコーナーなんてのもバンドによってはあったりするが、そのときはここぞとばかりにテクニックを見せるかもしれないけど、テクニックというよりは音選びのセンスを見せたい時もあるかもしれない。

能ある鷹は爪を隠すなんてことわざがあるが、ミュージシャンだって必要に応じて能力を見せていくだけであって、全部を見せているわけじゃなんじゃないか?ということだ。

 

プロのミュージシャンはスタジオやライブで必要なパフォーマンスを発揮しているから、プロでいられる。必要な能力はその現場によって異なり、BUMPの例のようにそのメンバーの中で発揮できる人間性みたいなものも含まれる。なので、プロに対して見えている・知っている・分かっている範囲で上手・下手を語ることにどれだけの価値があるんだろうか。そういう意味で、特に誰が下手だと言う前に一定の敬意を持って、音楽を聴いて欲しいと思うのだ。それでもやっぱり何度聴いても下手だなと思うことだってあるし、そこで批判を始めても遅くはない。その一息おいてからの批判が一定の敬意を払うということにならないだろうか。

 

そんなことよりも楽曲が好き・嫌いとか良い・悪いで語った方が良いんじゃないかと思っている。もちろん、テクニックについてもその楽曲へのアプローチとしてどうか?とかすごいテクニックを何事もなかった顔で演奏する姿が凄いとかは良いと思う。そこで、売れてる・売れてないみたいな話題になってくると市場経済が入ってくるので何も言えなくなるけれど、売れたら全部いい音楽か?というとそうでもないから困ったもんだ。

 

こちらからは以上です。